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2022.12.19

若いうちから知っておくべき、認知症の治療と予防法【病のトリセツ#11】

kencom編集部

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今後も増え続けることが想定される「認知症」。2025年には65歳以上の患者数が約700万人、高齢者の約5人に1人が認知症になると予測されています。発症すると長い間付き合わなくてはいけず、家族にも負担がかかる病気というイメージがあるのではないでしょうか。

そもそも認知症とはどのような病気なのか、症状や治療などの認知症のトピックをまとめました。また予防法には、働き盛り中年期の過ごし方を含め、日々の生活習慣が重要です。自分にはまだ関係がないと思わず、この機会に認知症について理解を深めましょう。

認知症とは?

実は、認知症は病気の名前ではありません。
「後天的原因により、脳の細胞が損傷を受けたり、働きが悪くなったりすることで認知機能が低下していき、日常生活・社会生活に影響が出た状態」のことを認知症と言います。

認知症には主に4種類のタイプがあります。

認知症の種類

①アルツハイマー型認知症(アルツハイマー病)

認知症患者の半分ほどがアルツハイマー病といわれるほど、発症確率が高いタイプ。症状は物忘れからはじまり、進行すると、怒りっぽくなる、何事に対してもやる気がなくなるなどの症状が現れます。

これは海馬が侵されることで記憶力の低下が起こり、進行すると感情を司る前頭葉が侵されるためです。男性より女性の発症率が高いことも特徴の1つです。

②脳血管性認知症

次いで多いのが、脳血管性認知症です。脳梗塞やくも膜下出血などにより、脳の血流が阻害され、脳の一部が壊死することで発症します。ゆっくり進行することもあれば、症状が急激に進む場合もあります。

③レビー小体型認知症

発症初期から、実際には見えないものが見える幻視の症状が現れます。また、手足の震えや小刻み歩行、体のバランスが取れずに転倒しやすくなるなどの症状(パーキンソン症状)が出ることも特徴です。

④前頭側頭型認知症

発症初期の段階で、性格・行動面の変化が目立ち、スムーズに言葉が出てこない、言い間違いが多いという症状が現れます。

物忘れだけじゃない認知症の症状

参照元:https://kencom.jp/articles/76205

参照元:https://kencom.jp/articles/76205

認知症=物忘れのイメージがありますが、様々な症状があり大きく2つに分類されます。

中核症状は、「さっきのことが思い出せない」などの記憶障害や失語、対象を正しく認識できなくなる失認、理解力や判断力の低下などを指します。

周辺症状は、妄想や、幻覚、幻視、暴言などで、介護する家族などを困らせることが多い症状です。BPSD(行動・心理症状)と表現されることもあります。この場合、原因を考えて環境を整えることで症状が抑えられることもあります。

認知症は、病院で行う問診やその他の検査によって診断されます。少しでも異変を感じたら、早めに病院で受診し、早期発見につなげましょう。

▼認知症の種類・症状・検査方法を詳しく知りたい方はこちら!

認知症の治療法

残念ながら認知症を根治させる妙薬はないため、症状の進行をいかにゆるやかにするか、という観点で薬物治療と環境調整の2軸で治療を行います。

薬物治療

薬物治療では、症状の進行を遅らせることを目的とし、アリセプトやレミニールなど主に4種類の薬が用いられえます。また人によってばらつきがありますが、脳を活性化し意欲ややる気を回復させる効果も。ただし、薬では記憶力などの低下した認知機能を回復させることはできません。

その他、幻覚を抑える薬や睡眠導入剤など、その時の症状にあった薬が処方されます。

環境調整

周囲の対応の仕方で、精神症状や異常行動が改善することがあります。認知症患者の言動を頭から否定しない、ゆっくり丁寧に対応する、環境の変化が少ないように工夫するなど、家族の対応を調整してみましょう。

また、人との交流を断たないことも大切。一人暮らしの方には、電話をかける、他人とコミュニケーションをとりながら行うゲームや運動が有効です。パソコンを使うのもおすすめ。

ただし、家族などサポートする側も頑張りすぎは禁物。適度にリフレッシュする時間をとるようにしてください。

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基本の予防法

①バランス良い食事を心がけよう

バランスの良い食生活のためには、昔からよく知られている「まごわやさしい」を意識してみましょう。「まごわやさしい」は、豆・ごま(ナッツ類)・わかめ(海藻類)・野菜・魚・しいたけ(きのこ類)・いも(芋類)の7種類の食材です。たんぱく質・ビタミン・ミネラル・食物繊維などをバランスよく摂ることができます。

しかし忙しい毎日の中で、バランスのよい食事を摂るのはなかなか難しいもの。その場合は、サラダにナッツやツナをトッピングする、肉おかずが続いたら、ランチで魚定食を選んでみるなど工夫してみてください。

②定期的な運動習慣を身につけよう

運動は、脳の働きに直接良い影響があるだけでなく、認知症のリスクを高める生活習慣病の改善にもつながります。有酸素運動、筋肉トレーニング、バランス運動を組み合わせるのが、認知機能アップに効果的です。

③脳を休める

認知症予防には休息も非常に重要で、理想的な睡眠時間は、7時間と言われています。まとまった睡眠時間が確保できない場合は、日中に15分〜20分程度の短い昼寝を取ることも効果的だと言われています。

④難聴を放置しない

難聴の人は、ない人に比べて認知症発症のリスクが2倍近く高いことがわかっています。また、難聴になると、話がスムーズにいかなくなるため、人との交流が減りがちになってしまうことも問題です。耳が遠くなったと感じたら、治療は早めに取り組みましょう。

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ほか研究からわかってきた認知症対策

料理は最高の認知症対策!?

料理をすることは、段取りを考えながら手を動かすため、認知症対策にぴったり。よりよい食生活を意識するきっかけにもなります。買い物など負荷の高い作業は、現役世代がサポートできる仕組みがあるといいですね。

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歯を大切に

歯周病などで歯を失った方は要注意。60歳以上で残っている歯が9本以下だと、健康な歯の人に比べて認知症の発症リスクが2倍以上になるという研究があります。失った歯は補綴すれば大丈夫。健康な歯を維持して認知症を防ぎましょう。

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飲酒は控えめに

アルコール摂取量が多い人ほど、アルツハイマー型認知症の所見として見られる海馬の萎縮が著しくなることがわかっています。
実際に認知症の発症リスクが、アルコールの摂取量で高まるかどうかは確認されていませんが、一部のがんや認知機能低下に関わりがあると考えられているので、飲酒は控えめに。

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高血圧をコントロール

降圧治療を行って高血圧をコントロールすると、一定レベルの範囲で認知症の発症を予防できるという研究があります。特に軽度認知障害以前の状態でのコントロールが有効なのだそう。

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実は中年期の過ごし方がカギ!

認知症は、病気が発症した直前の身体の状態よりも、10~20年前の状態の方が病気との関連が大きいと報告されています。
つまり、中年期にメタボ肥満・高血糖・高血圧などの動脈硬化のリスクが高い方ほど、その20年後にアルツハイマー型認知症になるリスクが高まる可能性が。まだ40代、50代だから関係ないと思っている皆さん、今のうちから生活習慣改善しておくことが重要です。

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認知症の疑いを感じたら悩まず相談を

自分自身や家族など、認知症の疑いを感じたら、ひとりで悩まず相談を。かかりつけの医師をはじめ、電話相談できる窓口に問い合わせてみましょう。

無理せず、認知症と付き合っていく

認知症を発症すると、本人の辛さもさることながら、サポートする家族も大変です。若いうちから生活習慣を整えて、認知症の発症を予防していきたいですね。

認知症を根治させることは出来ませんが、うまく付き合えば進行を緩やかにさせることは可能です。もし発症したら早めに専門医に相談し、負担を軽減する方法を模索していきましょう。

本記事は過去のkencom記事をもとに再編成したものです

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引用・参考文献

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文:kencom編集部

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