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2022.01.21

認知症対策にも!シニア世代こそ「料理」を楽しむべき理由と、現役世代ができること

kencom公式:管理栄養士・前田 量子

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人生100年時代の到来といわれるように、日本は世界でもトップクラスの長寿国です。
長寿は人類にとって長年の夢でしたので喜ばしい半面、残念ながら寿命=健康で過ごせる期間ではありません。介護を必要としない「健康寿命」をいかに保つかが社会課題となっています。

日本は世界でも有数の高齢者社会

皆さんもご存知の通り、日本は高齢者人口の割合が世界で最も高く、世界でも有数の高齢者社会です。

総務省統計局によると、総人口に占める高齢者人口の割合の推移は、1950年(4.9%)以降一貫して上昇が続いており、1985年に10%、2005年に20%を超え、2020年は28.7%となっています。
この割合は今後も上昇を続け、第2次ベビーブーム期(1971年~1974年)に生まれた世代が65歳以上となる2040年には、35.3%になると見込まれています。

高齢化に伴う医療や介護の負担増加を考えると、シニア世代が元気に過ごすことは社会全体で見ても大切だと分かります。

出典:総務省統計局ホームページ (https://www.stat.go.jp/data/topics/topi1261.html)

出典:総務省統計局ホームページ (https://www.stat.go.jp/data/topics/topi1261.html)

要介護となる原因第一位は認知症

健康寿命とは、「他人の手を借りずに自立した生活が送れる期間」を言います。

では、介護(他人の手)が必要になる主な原因は何でしょうか。内閣府の発表では、「認知症」が18.7%で最も多いとされています。できる限り認知症の発症を遅らせることは、長生きと共に人類の願いと言っても過言ではないでしょう。

認知症予防に有効なこと

認知症は脳の病気や障害など様々な原因により、認知機能が低下し、日常生活全般に支障が出てくる状態をいいます。認知症にはいくつかの種類がありますが、最も多いアルツハイマー型認知症は、脳の一部が萎縮していく過程でおきる認知症です。
これらの認知症の予防策(発症を遅らせる、進行を緩やかにする)として、食習慣や運動習慣、また文章を読んだりチェスやトランプなどゲームをしたりといった知的行動習慣が挙げられています。加えて、他人と交流することも予防になると言われています。

毎日行う家事も、身体を動かしたり頭を働かせることにつながるため、認知症予防につながる可能性があると言えます。たとえば、「料理」もそのひとつ。

料理には、

1.メニューを考えて買い物リストを作る
2.食材のことや調理法を考える
3.段取りを考え効率よく調理を進める
4.味を整える

というように、一連の流れを通して頭を働かせるポイントがたくさんあります。

また、買い物に行く、包丁を使って食材を切る、手や指先を使って包むこねる、盛り付けるといった身体と手先を使う繊細な作業も、脳の認知機能に多くの刺激を与えているといえるでしょう。

シニア世代こそ、料理を楽しく作ろう

料理をすることは、頭や手を動かし、よりよい食生活を意識するきっかけになります。健康寿命を伸ばすためにも、シニア世代こそどんどん挑戦したほうが良いと思います。

しかし、シニア世代になると料理が億劫になってしまうことも。そこでシニア世代に「料理を楽しく作ってもらう」ために、現役世代が手伝えることをご紹介します。

重たいものの購入を手伝う

まずハードルのひとつが買い物です。

食材は重たいものが多いためそこで億劫になってしまうことがあります。かといって買い物は身体を動かす大切な機会なので、全てなくすのはおすすめしません。手伝うなら、特に重い調味料や日持ちのするじゃがいもなどの根菜を休日に買って置いてあげるのが良いと思います。住まいが遠い場合はネットスーパーの利用も良いでしょう。

その時気を付けてあげて欲しいのが、本人が普段使用している調味料を選ぶこと。使い慣れていないものだと違和感を覚え、作りたくなくなる場合がありますので好みを聞いてあげてください。

軽い調理器具にする

次のハードルが調理器具が重いことです。

これから料理をはじめるならば、気合が入ってしまい良いものを…と高価なものを買ってしまうことがよくありますが、「重たくて料理が嫌になってしまった」ということになりかねません。
また若い頃に料理が好きだった人は重たい鍋や洗うのに手間がかかるものを使っていた傾向が強く、歳を重ねてからそれが億劫になってしまったという話もよく聞きます。

テフロン加工の小さい鍋や軽いフラインパンに変えるだけでもハードルはグッと下がるものです。そうすると作りすぎや油を沢山使うことも防げて一石二鳥です。
もしも昔から料理をしている人が、「洗い物が雑になったな」「いつも作りすぎて冷蔵庫があまりもので一杯だな」という兆候を感じたら調理器具を変えるタイミング。是非台所を見てあげてください。

洗い物を手伝ってあげる

シニア世代になると「洗い物が雑になる」というのはよく起こることです。

目が悪くなって汚れが見えなくなったり、手先の感覚も劣ってくるので汚れに気が付かなかったり、腰をかがめる姿勢がシニア世代には負担が大きかったりします。洗い物はシニア世代には負担になることが多く、決して不衛生にしたいというわけではないのです。

それが気になってしまう現役世代もいらっしゃると思いますが、ここで注意をしてしまうと委縮して意欲がそがれることも。「作ってくれたから洗い物は手伝うね」と声がけして手伝ってあげればお互いに気持よく過ごせます。

楽しい食卓を囲む

もし一緒に食べる機会があれば感謝の気持ちを伝えてください。

自分の作った料理を、「食べてくれ、喜んでくれる人がいる」ことは作る意欲につながりますし、「美味しい!」と言ってもらえると誰もが嬉しいものですよね。
また喜んでもらいたい!と次回へのモチベーションにもなりますし、情緒の安定にもつながります。

食事は健康の要

シニア世代が作ることを前提にお話しましたが、楽しい食卓を囲むことは作る作らないに限らずとても大切です。社会的・精神的な孤立はフレイルにつながっていくからです。

シニア世代になると生活において食の占める割合は増えるもの。その役割の重要性を今一度考えながら、ずっと元気でいてもらうためにも「料理」をお試しください。

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前田 量子(まえだ・りょうこ)

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管理栄養士 野菜ソムリエ ロジカル調理研究家。
著書『ロジカル調理』『ロジカル和食』『考えないお弁当』をはじめ、最新著書『おうちで一流レストランの味になるロジカル洋食』(全て主婦の友社)が好評発売中。調理科学で普段のもやもや悩みをすっきり解決 。スーパーの食材で本当に美味しく&家族が楽しみにしてくれる定番家庭料理を作れるようになる料理教室主宰。

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