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2023.12.18

早期アルツハイマー病治療薬ガンテネルマブの有効性は?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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アルツハイマー型認知症の新薬が次々と開発されています。それぞれの薬の効果にはどのような差があるのでしょうか。

今回ご紹介するのは、the New England Journal of Medicine誌に、2023年11月16日付で掲載された、早期アルツハイマー病の治療薬の、臨床試験結果をまとめた論文です。(※1)

▼石原先生のブログはこちら

認知症予防効果が確認されたレカネバブとドナネマブ

アルツハイマー型認知症の新薬としては、エーザイとバイオジェン社が開発したレカネマブという新薬が、こうした薬剤として初めてアメリカのFDAで承認され、大きな話題となりました。

その理由は臨床試験において、早期アルツハイマー病の進行予防効果が、一定レベル確認されたからです。(※2)

また、ドナネマブという、脳のアミロイドプラークのみに発現している、不溶性のβアミロイド蛋白に対するIgG抗体の新薬もあり、こちらもレカネマブとはターゲットの蛋白質が若干異なりますが、ほぼ同等の薬で、その臨床試験結果も最近公表され、レカネマブとほぼ同等の認知症進行予防効果が確認されています。(※3)

新薬ガンテネルマブの認知症進行予防効果は?

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今回ご紹介するガンテネルマブは、矢張りβアミロイド蛋白に対するIgG抗体で、凝集した異常蛋白に対して高い結合性を示している点が特徴の、ロシュ社の製品です。

今回の第3相臨床試験は、軽度の認知機能低下を伴う軽度のアルツハイマー型認知症の患者、985名と980名と対象とした、2つの臨床試験結果をまとめて解析していますが、治療開始116週の時点で、PET検査で計測されたアミロイドβの沈着は、投与群で抑制されていたものの、偽薬群との間で認知機能の低下には有意な差はなく、レカネマブやドナネマブで見られた、認知症進行予防効果は確認されませんでした。

有効性と安全性はまだ不確実

その差が何処にあるのかは今後検証が必要ですが、こうした薬剤の効果はまだ不確実な部分が大きく、その有効性と安全性については、慎重に見極める必要がありそうです。

記事情報

引用・参考文献

著者/監修医プロフィール

石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。

略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医

発表論文
・Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
・Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
・Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36
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