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2021.11.11

一生美味しくごはんを食べるために。今から始めるオーラルフレイル予防

kencom公式:管理栄養士・前田 量子

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歳を重ねていけばいくほど、食事に対する楽しみの比重が増してくると言われています。

誰もが望む「いつまでも長く元気に暮らしたい」という願いを実現する上で、「食事を美味しく食べられる」というのは、長い人生のQOL(クオリティーオブライフ:生活の質)をあげるのに欠かせない要素です。

オーラルフレイルに注目

そこで最近注目が集まっているのが「オーラルフレイル」対策です。

「オーラル」は口腔のこと。「フレイル」は健康と要介護の中間のことを言い、早めに衰えを発見し、適切な対応を行うことにより改善できる状態を指します。

すなわち「口の衰えを早期に発見し、介護が必要な状態になるのを防ぐ」ということが、オーラルフレイル対策です。今回は食事の面からのオーラルフレイル対策をご紹介します。

些細な衰えを見逃さないで。オーラルフレイルの症状

まずオーラルフレイルとはどんな症状があるのでしょうか。
まずは滑舌が悪くなる、固いものが噛みにくくなる、食べこぼしたりむせたりすることが増えるなど、高齢になるとよく見られる現象です。

一見なんでもないように感じられる些細な口の機能の衰えですが、噛む力が弱くなると食べる食品を選ぶようになります。特に、肉などのかたいタンパク質や野菜を避ける傾向になりがちで、シニア世代に多く見られる低栄養を引き起こす原因に。

些細な症状が引き金になって身体の衰えにつながっていくのです。オーラルフレイルチェック表で簡単に診断してみてはいかがでしょうか。

もし当てはまっていたとしても、フレイルはまだまだ引き返せる段階ですから思い当たる人は気を付けると良いでしょう。

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普段の食事でオーラルフレイル予防

それでは普段の食事に簡単に取り入れられるオーラルフレイルの予防法をご紹介します。
オーラルフレイルは口腔の筋肉と唾液腺の低下が主な要因になっています。ですので、これら2つを刺激するようなものを取り入れればよく、“よく噛む”ということで刺激を促せます。
さっそく、日ごろからすぐに取り入れやすい食材や調理方法をご紹介します。

調理法に限らず、咀嚼力を鍛えてくれるものを取り入れる

食材例:きのこ類 れんこん ごぼう 切り干し大根 たけのこ等

炒めたり煮たり、加熱してもそこまで柔らかくならない野菜です。食物繊維が豊富で便秘予防にも効果的です。例えばつるつると食べてしまうやきそばに、ごぼうのささがきや切り干し大根を加えたり、噛む回数が少なくなりがちなカレーにれんこんやきのこを加えるといった工夫をすると、自然と噛む回数が増え咀嚼力がついていきます。

生食が可能で、咀嚼力を鍛えてくれるものを取り入れる

加熱で柔らかくなっていく野菜は、生で塩もみして歯ごたえを残した調理法がおすすめ。

大根は同じ千切りでも味噌汁だと噛む回数は少ないですが、塩もみして漬物やマヨネーズなどであえて大根サラダにすれば咀嚼回数は数倍になります。
加熱しない調理法ならビタミンCの残存量も増えるため、肌の代謝や免疫力向上にもつながります。

大きさを工夫する

同じ食材でも、大きさで工夫することができます。

例えばお肉なら、ひき肉よりもある程度の大きさが残っているお肉を。
スープはポタージュよりもミネストローネのような賽の目切りの方が良いでしょう。ポトフやクリームシチューのように、大きな野菜がゴロゴロ入った料理なら尚良し。といったように、調理法や大きさを工夫すれば咀嚼回数・力は数倍になります。

まずは1品から取り入れる

ただし、あまりに咀嚼を意識しすぎてどんどんかたいものを、大きなものを…となっていくのも考えもの。全ての料理に咀嚼力を鍛えるものを入れてしまうと、疲れて食が細くなってしまうなど逆効果になることもあります。

フレイルに気づいたらまずは一品、それも少しずつ取り入れるのをお勧めします。例えば朝食やおやつにヨーグルトを食べるなら、りんごを混ぜてみる、といった工夫からはじめてもいいでしょう。

摂りたい栄養は、食べやすいままでも

オーラルフレイル対策では咀嚼力に気を付けたいものですが、フレイル全体の課題は低栄養です。上記のようにまずは一品から、できれば嗜好品だと良いのではないでしょうか。

フレイルに陥ると特にタンパク質が不足しがちと言われていますので、タンパク質は食べやすい形にしたほうが良いでしょう。上記でお肉はある程度大きさのあるものをとお伝えしましたが、それも難しいようでしたら無理することはありません。肉団子やお豆腐を活用してください。

タンパク質をしっかりとって他の料理で咀嚼力を強化していけば、自然とまた食べられるようになっていきます。フレイルは長い時間をかけてゆっくりと進行して起こるものです。回復もすぐにできるものではありませんから、気長に続けていきましょう。

噛む回数を意識したり、会話を楽しむのも効果的

食材・調理法で意識するのと同様に、噛む回数自体を意識するのも有効です。

今現在、ひと口何回噛んでいますか?数えてみたら10回以内だった、という方は意外と多いものです。ひと口食べたらできれば30回、少なくとも20回は噛んでみる。といった目標をたてるのも良いでしょう。

会話を楽しみながらゆっくり食べる、というのも自然と口の周りの筋肉が動き有効と言われています。また、「パ」「タ」「カ」「ラ」という発音は口腔筋肉を鍛えるといわれています。気づいたら声に出してみるのも効果的です。

噛んで食べれば、もっと美味しくずっと楽しく

オーラルフレイル予防の体操は色々出ていますので、是非行ってみてください。今回は食事面でオーラルフレイル対策をご紹介しましたが、食事以外でもできることは沢山あります。より長くごはんを美味しく楽しむために、まずは身近にできることから取り組んでみてください。

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前田 量子(まえだ・りょうこ)

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管理栄養士 野菜ソムリエ ロジカル調理研究家。
著書『ロジカル調理』『ロジカル和食』『考えないお弁当』をはじめ、最新著書『おうちで一流レストランの味になるロジカル洋食』(全て主婦の友社)が好評発売中。調理科学で普段のもやもや悩みをすっきり解決 。スーパーの食材で本当に美味しく&家族が楽しみにしてくれる定番家庭料理を作れるようになる料理教室主宰。

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