メニュー

2023.12.22

糖尿病治療薬メトホルミンが持つ認知症予防効果【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

Adobe Stock

Adobe Stock

糖尿病と認知症には密接な関係があります。糖尿病治療薬を使うことによって、認知機能が回復する可能性もあるのだとか。

今回ご紹介するのは、JAMA Network Open誌に、2023年10月25日付で掲載された、糖尿病治療薬の認知症予防効果についての論文です。(※1)

▼石原先生のブログはこちら

2型糖尿病治療薬で認知症のリスクが低下する?

高齢者の糖尿病は認知症のリスクであることが知られています。

血糖値の上昇やインスリン抵抗性による高インスリン血症は、血管の炎症や動脈硬化の進行を促進する原因となり、脳血管の老化が認知症に繋がることは理に適っています。

メトホルミンは2型糖尿病の治療薬として広く使用されている薬剤で、その使用により合併症の予防効果や、生命予後の改善効果が認められています。

また臨床試験の解析により、メトホルミンの使用によって認知機能が改善し、認知症のリスクが低下したとする報告があります。(※2)

ただ、こうしたデータは、血糖コントロールが認知症予防に繋がったのか、それともメトホルミン自体に認知症予防効果があるのか、という点については明確にすることが出来ません。

メトホルミンの認知症予防効果を検証

そこで今回の研究では、アメリカの大規模な民間医療保険のデータを活用して、腎機能低下以外の何等かの理由で、メトホルミンの使用を中止した患者さん、トータル12220名の臨床データを、メトホルミンの使用を継続している患者さんと比較して、認知症の予防効果を検証しています。

その結果、メトホルミンの中断は、その後の認知症発症リスクを、1.21倍(95%CI:1.12から1.30)有意に増加させていました。

そしてこの認知症リスクの増加は、血糖コントロールの変動とは独立した現象として認められました。

メトホルミン自体に認知症予防効果がありそう

記事画像

つまり間接的なデータではありますが、メトホルミンの使用自体が、認知症の予防に繋がっている可能性を示唆するデータです。

今後もっと厳密な介入試験などによって、メトホルミンの認知症予防効果の実態が、明確になることを期待したいと思います。

記事情報

引用・参考文献

著者/監修医プロフィール

石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。

略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医

発表論文
・Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
・Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
・Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36
© DeSC Healthcare,Inc.

あわせて読みたい