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2024.04.08

カルシウムとビタミンDのサプリメントが与える健康への影響は?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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手軽に栄養を摂れるサプリメントは常用すると健康維持に役立つのでしょうか。

今回ご紹介するのは、Annals of Internal Medicine誌に、2024年3月12日付で掲載された、カルシウムとビタミンDのサプリメントの、閉経後女性への長期の健康影響を解析した論文です。

▼石原先生のブログはこちら

カルシウムとビタミンDのサプリは健康維持に役立つか?

カルシウムとビタミンDは、いずれも骨の健康のためには不可欠の成分で、そのため健康な骨を維持するためには、この2つの栄養素を不足なく摂ることが、必要と考えられています。

ただ、実際に骨折のリスクの高い閉経後の女性に、サプリメントとしてカルシウムとビタミンDを投与しても、その骨折予防としての有効性は、多くの臨床研究が施行されたものの、あまり明確な有効性は確認されていません。

ただ、ビタミンDには骨に対する作用以外にも、免疫調整作用や抗炎症作用など、多くの健康効果を持つことが報告されていて、トータルにはそのサプリメントの使用が、健康の維持に有効な可能性は否定されていません。

カルシウムとビタミンDサプリの健康影響を調査

今回の研究はアメリカにおいて、36282名の閉経女性を対象とし、くじ引きで2つの群に分けると、一方は1日1000mgの炭酸カルシウムと、400IUのビタミンD3をサプリメントとして使用し、もう一方は偽薬を使用して、7年間の使用を継続し、その後も含めて中間値で22.3年の健康観察を行って、トータルな予後を比較検証しているものです。

その結果、カルシウムとビタミンD使用群では、未使用群と比較して、癌による死亡のリスクが7%(95%CI:0.87から0.99)、有意に低下していた一方で、心血管疾患による死亡のリスクは6%(95%CI:1.01から1.12)、こちらは有意に増加していました。

総死亡のリスクについては、両群で有意な差はなく、大腿骨頸部骨折のリスクについても、明確な差は認められませんでした。

サプリ使用には一定のリスクがありそう

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このように今回の大規模かつ長期の臨床研究において、閉経後の女性にカルシウムとビタミンDのサプリメントを使用しても、骨折リスクの低下には繋がらず、一部の癌のリスクが低下する可能性がある一方で、心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患のリスクについては、やや増加する可能性が示唆されました。

カルシウムとビタミンDをサプリメントとして使用することの、トータルな健康影響については、まだ明確な結論が得られておらず、その使用には一定のリスクがある可能性もあると、現状はそう考えておいた方が良さそうです。

記事情報

引用・参考文献

著者/監修医プロフィール

石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。

略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医

発表論文
・Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
・Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
・Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36
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