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2022.05.19

健康な生活習慣はいいことずくめ!余命を伸ばし認知症リスクも下げる【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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規則正しい生活と、栄養バランスの取れた食事。それに運動や趣味がある健康的な生活は、寿命が延びるだけではなく、認知症のリスクも下がるのだそう。

今回ご紹介するのは、British Medical Journal誌に、2022年4月13日ウェブ掲載された、健康な生活習慣と認知症との関連についての論文です。

▼石原先生のブログはこちら

寿命が延びると認知症患者は増加する?

バランスの良い食生活や運動習慣、禁煙などの、健康的な生活習慣が、多くの生活習慣病のリスクを減らし、健康寿命を延長させることについては、これまでに多くの疫学データや臨床研究が存在しています。

認知症についても、アルツハイマー型認知症のリスクを、60%低下させるというデータも報告されています。

ただ、ここで1つの疑問があります。認知症は年齢と共に増加します。

健康な生活習慣で寿命が延長しても、認知症のリスクは減少するのでしょうか?寿命が延長することによって、むしろ認知症は増加するという可能性もあるのではないでしょうか?

高齢者の健康習慣と認知症リスクの関連を検証

今回の研究ではアメリカで施行された、高齢者の疫学研究のデータを活用して、この疑問の検証を行っています。

65歳以上の2449名の男女を長期間観察し、健康的な5つの健康習慣と、認知症リスクとの関連を比較検証しています。

この場合の健康的な生活習慣というのは、地中海ダイエットやDASH食に準じた食事、適度な運動習慣、節酒、禁煙、読書、美術鑑賞、ゲームなどの知的活動習慣の5つです。

観察の結果、65歳の女性で4つ以上の健康な生活習慣を維持している人の平均余命は、24.2年(95%CI:22.8から25.5)で、1つ以下の生活習慣しか維持していない場合の平均余命21.1年(95%CI:19.5から22.4)より3.1年長くなっていました。

この平均余命のうち、4つ以上の健康習慣を維持している女性は10.8%に当たる2.6年間アルツハイマー型認知症に罹患すると推定されますが、それが1つ以下の生活習慣しか維持していないと、19.3%に当たる4.1年に延長していました。

65歳の女性が認知症に罹患することなく送れる平均余命は、4つ以上の生活習慣を維持している場合には、21.5年(95%CI:20.0から22.7)ですが、1つ以下の生活習慣しか維持していない場合には、17.0年(95%CI:15.5 から18.3)に減少していました。

健康習慣を維持できると余命が長くなり、認知症リスクも低下

同様に男性においても…65歳の男性で4つ以上の健康な生活習慣を維持している人の平均余命は、23.1年(95%CI:21.4から25.6)で、1つ以下の生活習慣しか維持していない場合の平均余命17.4年(95%CI:15.8から20.1)より5.7年長くなっていました。

この平均余命のうち、4つ以上の健康習慣を維持している男性は、6.1%に当たる1.4年間アルツハイマー型認知症に罹患すると推定されますが、それが1つ以下の生活習慣しか維持していないと、12.0%に当たる2.1年に延長していました。

65歳の男性が認知症に罹患することなく送れる平均余命は、4つ以上の生活習慣を維持している場合には、21.7年(95%CI:19.7から24.9)ですが、1つ以下の生活習慣しか維持していない場合には、15.3年(95%CI:13.4 から19.1)に減少していました。

健康な生活習慣に勝るものはない

このように、健康に良い生活習慣を多く維持していると平均余命が長くなるのみならず、その間に認知症に罹患するリスクを抑制され、結果として認知症なく送れる寿命が延長するということになります。

認知症予防に、こうした生活習慣に勝る方法はなさそうです。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36