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2024.03.07

栄養士が一押し!カルシウムと鉄が豊富な小松菜を徹底分析【旬野菜図鑑】

kencom公式:管理栄養士・前田量子

©️yumi koizumi

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野菜を多く食べる人は脳卒中や心臓病、ある種のがんにかかる確率が低いという結果が多くの研究から導き出されています。しかし、日本人の野菜類平均摂取量は、目標の350gに届かず「健康にいいことはわかっているが、十分な量の野菜を摂取できていない」のが現状です。

本連載『旬野菜図鑑』では毎月旬の野菜をピックアップ。栄養や選び方を、管理栄養士の前田量子さんに教えていただきます。

3月の旬野菜は“小松菜”です。関連記事では、小松菜を美味しくいただくレシピもご紹介しておりますので、併せてご覧ください。

寒い時期に旬を迎える小松菜は甘くて肉厚

Adobe Stock

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葉物の緑黄色野菜として知られる小松菜は、アブラナ科の葉野菜。1年を通して出回っていますが、旬を迎えるのは、11月から3月の寒い時期です。霜の下で育った小松菜は肉厚で甘味があります。

小松菜は江戸時代に小松川という地域の周辺で栽培され、8代将軍・徳川吉宗が名付けたと言われています。現在も関東近郊で多く栽培されており、日本人にとって身近な野菜のひとつです。

【栄養】栄養の宝庫!管理栄養士もよく使う小松菜の魅力

小松菜はとても栄養価が高い優秀な野菜。アクが少なく、下茹でなしの調理が可能で、とても効率よく栄養を摂ることができるため、管理栄養士の筆者(前田量子)自身も重宝してよくレシピに取り入れている緑黄色野菜です。

カルシウム

カルシウムは体内に最も多く存在するミネラルで、体重の1〜2%を占めています。このうち99%は、骨や歯などの硬い組織に存在しています。残り1%のカルシウムは、血液や筋肉、細胞に存在し、細胞の情報伝達、筋肉の収縮、神経の働きをサポートするなど大切な役割を担っています。

カルシウムは日本人に不足しがちな栄養素。体内への吸収率があまりよくない栄養素であることに加え、日本の伝統的な食事にはカルシウムを多く含む乳製品を使ったメニューが少ないことも不足の要因です。

出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂)illustration:Adobe Stock

出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂)illustration:Adobe Stock

小松菜には100gあたり170mgのカルシウムが含まれています。カルシウムが多い食品の代表格である牛乳が100gあたり110mgですから、およそ1.5倍!実は小松菜のカルシウム含有量のほうが多いのです。

1日のカルシウム摂取の推奨量は、成人男性が700〜800mg、成人女性が600〜650mgですから、小松菜100gだけでなんと約25%をカバーできるほど優秀。

カルシウムはシュウ酸と結合すると吸収されにくくなるため、一緒に食べないほうがよいとされています。ところが、小松菜にはシュウ酸があまり含まれていません。これも小松菜の注目すべき点です。

カリウム

カリウムは体液の浸透圧を調整したり、神経や筋肉の情報伝達にも関係している重要なミネラルです。特筆すべきはナトリウムの排出を促す作用。日本人のカリウム摂取量は不足傾向にあります。積極的に摂ってほしい栄養素ですが、腎臓機能に障害がある方は注意が必要です。健康な人の場合、摂取量を増やすことによって血圧低下、脳卒中予防につながることが様々な実験や疫学調査によりわかってきています。

カリウムの1日の摂取の目安量は18歳以上の成人男性で2,500mg、成人女性で2,000mg、目標量は18歳以上の成人男性で3,000mg以上、成人女性で2,600mg以上です。小松菜にはカリウムが100gあたり500mg含まれており、100gの小松菜を摂るだけで1日の目安量のうち15〜20%を摂取できます。

カリウムは水溶性のため、茹でる工程で流れてしまいますが、あくが少なく下茹でせずに使えるため損失することなくカリウムが摂れるのもよいところです。

鉄は赤血球の中に含まれるヘモグロビンや各種酵素の構成成分で、酸素の運搬に大切なミネラルです。身体の成長、細胞機能、筋肉代謝、一部のホルモン合成などにも必要です。1日の摂取推奨量は成人男性で7.5mg。女性の場合は、月経のない18〜64歳で6.5mg、月経のある18〜49歳で10.5mg、月経のある50〜64歳で11.0mgとなっています。

日本人の鉄摂取量は不足気味。不足すると鉄欠乏性貧血をおこすことがあり、倦怠感、息切れ、集中力低下、食欲不振などの原因にもなります。特に妊娠している方、経血量が多い女性などは鉄が不足する傾向にあり、男性よりも女性の方が摂取推奨量が多く設定されている、めずらしいミネラルです。

小松菜には100gあたり2.8mgの鉄が含まれており、鉄分が多く含まれてるイメージが強いほうれん草の、実に1.4倍。

また、鉄もカルシウムと同様にシュウ酸と結合すると吸収されにくくなるため、シュウ酸が多いものと一緒に食べないほうがよいとされていますが、小松菜にはあまり含まれないため、鉄の吸収が妨げられないのも長所です。

βカロテン

βカロテンは小腸壁でビタミンAに変わる、前駆体(ぜんくたい)と呼ばれる物質です。抗酸化力を持ち、有害な活性酸素を消去するため、老化やガンの抑制効果が期待できます。

βカロテンをもとに身体の中で変換されるビタミンAは、皮膚や喉、鼻、肺、消化菅などの粘膜を正常に保つ働きをします。そのため、感染症予防や免疫力の向上に役立っています。不足すると感染症にかかりやすくなったり、夜間など暗いところで目が見えづらくなる夜盲症になりやすくなったりすることが知られています。

小松菜には、βカロテンが100gあたり3100μg(マイクログラム)含まれています。これをビタミンAに換算するとそれぞれ100gあたり260μgです。ビタミンAの1日の摂取推奨量は成人男性で900μg、成人女性で700μgですから、100g摂れば推奨量の約30%を摂ることができます。

βカロテンは脂溶性で水に溶けない性質で、摂りすぎると体内で蓄積して過剰症を起こしてしまうため、耐容上限量が設定されている栄養素です。しかし、βカロテンから作られるビタミンAに関しては、過剰症は起こらないとされていますので安心して摂取してください。

ビタミンC

ビタミンCはアスコルビン酸ともいわれ、コラーゲンの生成に必須の栄養素です。また、メラニン色素の生成の抑制、強い抗酸化作用を持ちます。風邪予防の免疫力アップにも効果が期待できる栄養素です。

多くの哺乳動物は体内でビタミンCを合成できますが、人は合成することができないため、食事から摂る必要があります。ビタミンCが不足すると、肌荒れ、血管がもろくなる、顔色が悪くなる、鉄分の吸収が悪くなり貧血になりやすくなる等が挙げられます。

小松菜100gには、ビタミンCが39mg含まれます。小松菜は食べやすい野菜ですから、1日に必要なビタミンCの量100mgにも大きく貢献してくれます。

【選び方】旬の野菜はみずみずしく色鮮やか

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【美味しい小松菜の特徴】
・みずみずしく葉がピンとしている
・葉の緑色が濃く鮮やか
・葉そのものが肉厚で張っている

葉物野菜はなんといっても鮮度が重要!特に旬を迎えたものは共通して色が濃く、葉が肉厚になっています。葉の先や切り口が乾いたものは収穫から時間が経ってしまっているので、みずみずしさもチェックしてください。

【保存法】長期保存するなら、そのまま冷凍しよう

冷蔵保存する

野菜は生育状態に近い形で保存すると、鮮度を保ちやすいとされていますので、小松菜を冷蔵庫に入れるときは畑で育っていたときと同じように立てて保存します。

冷蔵の場合は、以下の手順で保存作業をしましょう。

1. 汚れがひどい場合、ついている泥などを落としてきれいにする。
2. 水気をしっかり切り、ペーパータオルや新聞紙で包む。
3. 袋に入れ、野菜室で立てて保存する。

ペーパータオルで全体を包むのがベストですが、効果的に包みたい場合は、小松菜の下部だけを包んで保湿してもOKです。葉物野菜は乾燥に弱いものですが、濡れっぱなしも危険なので程よい具合に保ちましょう。

上手にできればピンとした状態で1週間ほど保存可能です。ただし、ビタミンCは壊れやすい栄養素。早めに食べきるように心がけてください。

カットして冷凍保存する

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炒めもの、煮びたし、味噌汁など、さまざまな料理に使える小松菜。3〜4cmの長さに切って冷凍保存しておくと、使い勝手が抜群です。根元を落として泥をよく洗い流したあと、カットして水気を切ってから保存袋に入れて冷凍します。

そのまま冷凍保存する

冷凍保存するときに小分けするのが面倒だと感じる方が多いようなので、そのまま冷凍して使い勝手を検証してみることに。

軽く洗って水気を軽く切ってから保存袋に入れて冷凍しました。

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結論からいえば、冷凍までの下処理がほぼないのでとても楽で、使い勝手も抜群でした。冷凍のままでもサクサク切れるため、葉の部分を使いたいときは、そのまま葉の部分だけをカットして炒め物や汁物などに使うことができます。

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また、根元のところまで使いたいときは根元に流水を当てて洗い流すか、根元を切り落としてから根と根の間に入ってしまっている泥を洗い流して、使いたい長さに切って使うことが可能。

ただし、小松菜は意外と長いので
・大きな保存袋が必要
・冷凍庫で場所をとる
この2点はデメリットです。冷凍庫のスペースに余裕がある方は試してみてください。

下茹でして冷凍保存する

記事画像

場所をとらない冷蔵保存の方法が、下茹でしてかさを減らしてから冷凍することです。

下茹でしたものを3〜4cmの長さに切り、70gくらいの使いやすい量に小分けして冷凍してみました。

その結果、感じたメリットは2つです。
・場所をとらない
・生のままよりも若干苦みが和らぐ

デメリットは
・固まりで冷凍されるので好きな分量だけ使うことができない
・解凍に時間がかかる
・下茹ですることでカリウムやビタミンCの損失があるため栄養価が下がってしまう

栄養を重視するなら、あまりおすすめの方法とはいえません。

【豆知識】小松菜の冷凍保存の正解は、茎の部分を切り離す

小松菜は、葉と茎で食感が違い、葉の部分は汁物や炒め物ですぐに使い切れる一方で、茎の部分が余ってしまうこともあります。すぐに使わない茎の部分は冷凍しておき、使いたい時に使う分だけ解凍すると使い勝手がよいのでおすすめです。茎の部分は、細かく小口切りにしてチャーハンにしたり、ちりめんじゃこと炒めて佃煮のように、餃子の具のかさましに使えます。

しかし、便利でも美味しくなければ続かないもの。そこで、そのまま冷凍したものと下茹でして冷凍したものを同様に自然解凍して食べ比べてみました。

左:生のまま冷凍したもの、右:下茹でしたもの

左:生のまま冷凍したもの、右:下茹でしたもの

生のまま冷凍
・漬物のような食感
・独特の辛味あり

下茹でして冷凍
・少し柔らかい食感(冷凍しないで調理するのに近い)
・甘みあり

それぞれ違いはあるものの「こちらのほうが絶対美味しい!」という違いは感じられませんでした。
ただし生のまま冷凍保存したほうが、栄養を損なわないため、管理栄養士の観点ではおすすめの方法です。

旬野菜を食卓に取り入れて、美味しく健康的な生活を

多くの研究で、野菜を多く食べる人は脳卒中や心臓病、ある種のがんにかかる確率が低いという結果が出ています。『健康日本21(第二次)』によると、生活習慣病などを予防するための目標値のひとつに

野菜類を1日350g以上食べること

が掲げられています。毎日の食卓に、旬の野菜を取り入れて、美味しく健康な食生活を送りましょう。

記事情報

引用・参考文献

著者プロフィール

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前田 量子(まえだ・りょうこ)
管理栄養士 野菜ソムリエ ロジカル調理研究家。
著書『ロジカル調理』『ロジカル和食』『考えないお弁当』をはじめ、電子レンジの加熱時間や法則を書いた『ロジカル電子レンジ調理』が2022年2月に発売。調理科学で普段のもやもや悩みをすっきり解決 。スーパーの食材で本当に美味しく&家族が楽しみにしてくれる定番家庭料理を作れるようになる料理教室主宰。

制作

文・レシピ:前田量子
イラスト:小泉由美

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