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2022.08.12

サプリメントを“適切に”取り入れるための3つの注意点

kencom公式:管理栄養士・前田 量子

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前編を読んで、サプリメントがあまりよくないような印象を持ってしまった方もいらっしゃるかもしれませんが、サプリメントを否定しているわけではありません。
その人の年齢や妊娠出産等のライフステージによって、特定の栄養素が必要になる時もあるでしょう。

サプリメントを使用する上での注意点を知ったうえで、必要な量を補う役割で取り入れるのは良いと思います。
これからご紹介する注意点を参考にし、また医師や薬剤師のアドバイスをもとに上手に活用してください。

サプリメントを飲む前に。覚えておいて欲しい注意点

1.アレルギーに注意する

薬の場合は医師や薬剤師がアレルギーの問診をし、体質に合った薬を処方します。体質に合わない場合は、似たような効果の他の薬に変更してもらうこともあるでしょう。
しかし健康食品は基本的に自己判断で購入するものです。アレルギー反応が出るかどうかも含め自分で判断しなくてはいけません。

パッケージに「天然由来」とあると、なんとなく安心して購入してしまうことがあると思います。
しかし天然由来成分を原料とする製品でも、アレルギーの原因となることもあります。実際被害報告が多数あります。
イメージだけで決めつけず、アレルギーのことも考慮しましょう。

2.「薬ではない」ことを認識する

サプリメントは薬のような形をしていますし、健康効果を連想することも多いため医薬品のように感じる方もいらっしゃいます。
しかし、薬とは全く別のものです。

健康食品を薬と同じように使用していると、病気が治るのが遅くなったり、症状が悪化したりするといった報告もあります。

また、普段から薬を飲んでいる方は特に注意が必要です。
薬にサプリメントをプラスするとより早く健康効果が得られるのでは、と思うこともあるかもしれません。しかし成分によっては薬の効果を阻害したり、副作用が強まることもあります。
普段から薬を飲んでいる方は基本的にサプリメントは控えた方が良いでしょう。

使用したいときは、かかりつけ医や薬剤師に相談しましょう。

3.摂取量を守る

サプリメントは薬ではないから、いくら摂っても大丈夫!栄養素は身体に良いものだから摂るだけ効果が高いに違いない!と考えることもあるかもしれません。
しかしいくら食品に分類されているといっても、過剰摂取すれば身体に害を及ぼすこともあります。

日本人の食事摂取基準では、健康被害に合わないよう摂りすぎ注意な栄養素に関して「耐容上限量」を設けています。

出典:栄養成分の取扱いについて(安全性の観点)(消費者庁)(https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/other/pdf/kinousei_kentoukai_160426_0002.pdf)

出典:栄養成分の取扱いについて(安全性の観点)(消費者庁)(https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/other/pdf/kinousei_kentoukai_160426_0002.pdf)

いくつか例を挙げてみましょう。
※以下で紹介する内容は米国の医療制度に準じて記載されているため、日本に当てはまらない内容が含まれている場合があります。

ビタミンE

抗酸化作用があり、若返りのビタミンとも言われることがあるビタミンEは、過剰摂取すると出血性脳卒中の発症率が高くなるという報告が最近出されています。

ビタミンA

健康的なイメージの高い野菜などに含まれているビタミンAについても、喫煙者の場合は過剰に摂取すると肺がんの発症率が高くなるとも言われています。また頭痛、皮膚の落屑、脱毛、筋肉痛の発症が報告されています。

妊婦の場合は、ビタミンAの過剰摂取による胎児奇形の報告があります。
過剰になるケースとして、サプリメントとレバーの過剰摂取が指摘されています。毎日レバーを摂取する人は稀と思われるため、やはりサプリメントからの摂取に気を付ける必要があります。
ただし野菜に含まれるビタミンAは吸収が穏やかなため、野菜からの過剰摂取は考慮しなくて良いとされています。

カルシウム

丈夫な骨や歯に欠かせないカルシウムはいくらとっても摂りすぎることはないイメージがあります。
しかしこれも過剰摂取すると、高カルシウム血症、高カルシウム尿症、軟組織の石灰化、泌尿器系結石、前立腺がん、鉄や亜鉛の吸収障害、便秘などが報告されています。

普段の食生活において、耐用上限量をオーバーするほど過剰になる場合はまずありません。
しかし錠剤・カプセル状の健康食品を使用する場合には、たくさん摂ってしまう感覚が薄れ、手軽に摂取できてしまうため注意が必要とされています。

なんとなくたくさん摂取したほうがよさそうと、意味もなく長期に過剰摂取を続けると、かえって健康を損なう原因にもなりうるのです。

通常の食品から摂取していた栄養素をサプリメントで大量に摂取することのメリットやデメリットは、現時点では明確に分かっていません。
そして今現在は耐用上限量が設けられておらず、良い評価をされている栄養素でも、将来、過剰摂取による健康被害がおこらないとも限りません。あくまでも摂取量を守ることが大切です。

バランスの良い食事を心がける

本当に健康に良い食事とは何か。栄養学会では常にテーマとしてたくさんの研究がされてきました。

大規模調査を行った結果、結局は「バランスの良い食事が健康に一番有効である」とされています。
そんなことは当たり前で非科学的じゃないか、と思われるかもしれませんが、バランスの良い食事というものは、たくさんの医学的な研究をベースにされた知識の集結でもあります。

バランスの良い食事とは、ある特定成分だけを効率的に大量に摂取することではありません。
身体を作るタンパク質、エネルギー源となる炭水化物や脂質、栄養素の代謝の働きを助けてくれるビタミンやミネラルをバランスよく摂ることです。

「色々な種類の食品をまんべんなく食べましょう」とよく言われていますね。
もっと効率の良い方法はないのかと栄養価計算をしながら考えることがありますが、管理栄養士として従事していると、やはりここに行きつきます。
昔からの知恵は理にかなっていることが多いのです。

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前田 量子(まえだ・りょうこ)

管理栄養士 野菜ソムリエ ロジカル調理研究家。
著書『ロジカル調理』『ロジカル和食』『考えないお弁当』をはじめ、電子レンジの加熱時間や法則を書いた『ロジカル電子レンジ調理』が2022年2月に発売。調理科学で普段のもやもや悩みをすっきり解決 。スーパーの食材で本当に美味しく&家族が楽しみにしてくれる定番家庭料理を作れるようになる料理教室主宰。

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