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2020.03.21

新型コロナウイルス、2つの型にはどんな差がある?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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新型コロナウイルスには2つの型があるのだそう。
インフルエンザにはA型とB型のように明確な型の差がありますが、新型コロナウイルスの型にもそれぞれ特徴があるのでしょうか。

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにkencom監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、kencom読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、National Science Review誌に2020年3月3日ウェブ掲載された、新型コロナウイルスの2つのタイプについての論文です。
北京大学などの研究者によるもので、一般にも報道されるなどして話題になりました。
ただ、この区分けが臨床的に意味のあるものかどうか、と言う点については、どちらかと言うと否定的な意見が現時点では多いようです。

▼石原先生のブログはこちら

新型コロナウイルスには2つの型がある

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この論文においては、103名の新型コロナウイルス感染症の患者さん由来の、ウイルス遺伝子を解析し、その遺伝子配列の微妙な差異について検証しています。

その結果、ウイルス自体はほぼ同一であったものの、特徴的な2つのSNPs(一塩基多型)が認められ、それにより28144という部位でアミノ酸がロイシンになるものをL型、セリンになるものをS型と上記論文の著者らは命名しています。

そして、この変異により新型コロナウイルスを2つに分けると、L型が70%を占め、S型が30%を占めることが確認されました。遺伝子の系統的な解析から、S型がより古く、途中でL型が生まれた可能性が示唆されました。

ここまでは一応事実と言って良いものです。

S型とL型、それぞれに特徴はあるのか

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ただ、新聞記事などでは、S型はより重症化し易く致死率が高く、そのため流行は拡大しにくく、その一方でL型は重症化はより少ないものの、感染はより広がりやすいと説明されていますが、そうした推測はあまり論文上では重視されていませんし、何より症例の詳細がそれほど明確に分かっているものではないので、そこまでのことが言えるデータではありません。
S型の方が毒性が強いという性質が、別に証明されている訳ではないからです。

また、そもそも2つのSNPsでウイルスを分類することが、妥当であるかどうかははなはだ疑問で、単純にウイルス遺伝子の変異の解析から、1つのパターンとして仮定されているだけです。

今後はS型に的を絞った対策が必要ではないか、というところまで突っ込んだ解説もありましたが、もうそこまで行くと、砂上の楼閣のようなあやふやな議論に過ぎません。

現時点では2つの型に明確な差はないと考えられる

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個人的な意見としては、そこまで明確な差異が、この2つのタイプにあるとは考えにくく、マイナーな変異を針小棒大に表現しているだけのように、現時点では思われます。
シンプルに考えれば2つの一塩基多型が見つかる程度で、今回の新型コロナウイルスの遺伝子は、現時点ではほぼオリジナルのままに維持されながら、世界中に感染を広げているという想定の方が、より確からしい見解であるように思います。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36