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2024.05.06

有酸素運動・筋トレ・ストレッチ。3種類の運動の健康効果比較してみたら…【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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運動は大きく分けて、有酸素運動・筋トレ・ストレッチングの3種類がありますが、その中でも一番健康効果が高いのはどの運動なのでしょうか。

今回ご紹介するのは、BMC public health誌に、2023年6月14日付で掲載された、3種類の運動毎の生命予後への効果を比較した論文です。

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有酸素運動・筋トレ・ストレッチングの違い

運動には大きく分けて、有酸素運動と筋力トレーニング(無酸素運動)、そしてストレッチの3種類があると言われています。

ジョギングなどをある程度の時間継続的に行うと、身体は酸素を使って脂肪を燃焼させてエネルギーにします。これが有酸素運動です。一方で筋肉に強い負荷を掛けて緊張させる、所謂「筋トレ」を行うと、身体は筋肉に蓄えられた糖質を無酸素的に利用してエネルギー源にします。これが無酸素運動です。ストレッチングはエネルギーの消費よりも、筋肉の曲げ伸ばしを行うことで、身体の柔軟性を保つ目的で行われる運動で、他の運動の前後に行うことが一般的です。

運動は健康に良いと言われていて、それは科学的にも実証されている事実ですが、その場合の運動というのは、主に脂肪を燃焼させる有酸素運動のことで、場合により、有酸素運動に筋トレを組み合わせた運動プログラムのことです。ただ、近年筋トレの単独の健康効果についても、研究が進められています。一方であまり触れられることがないのが、ストレッチングの健康効果です。

ストレッチングの健康効果とは?

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今回の研究は韓国において、大規模な健康調査のデータを活用することで、この3種類の運動の生命予後に与える影響を比較検証しているものです。その結果、ストレッチングを全くしない場合と比較して、週に5日以上行っていると、総死亡のリスクは20%(95%CI:0.70から0.92)、心血管疾患による死亡のリスクは25%(95%CI:0.70から0.95)、それぞれ有意に低下していました。

週に50エクササイズ(メッツ・時)の有酸素運動を行うと、全く行わない場合と比較して、総死亡のリスクが18%(95%CI:0.70から0.95)、心血管疾患による死亡のリスクが45%(95%CI:0.37から0.80)、こちらもそれぞれ有意に低下していました。筋力トレーニングのみを週に5日以上行っていると、全く行わない場合と比較して、総死亡のリスクは17%(95%CI:0.68から1.02)、低下する傾向は示したものの有意ではなく、心血管疾患による死亡のリスクの低下は、認められませんでした。

3種類の運動を組み合わせるのが最もよさそう

このように、生命予後に関してみると、運動の効果は有酸素運動が最も優れていて、意外にもそれに次いで死亡のリスクを低下させていたのは、筋トレではなくストレッチングでした。

ただ、勿論筋トレには筋トレの良さがあることも、他の多くの臨床データで示されていて、3種類の運動を適時組み合わせて行うことが、現時点では最も賢い運動療法であると、そう言って大きな間違いはないようです。

記事情報

引用・参考文献

著者/監修医プロフィール

石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。

略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医

発表論文
・Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
・Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
・Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36
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