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2024.02.17

腰痛が治らないのは反り腰だからかも?原因と対策をマスターせよ【簡単!身体メンテ】

kencom公式:理学療法士・石田佑也

筋肉や関節の柔軟性を高めることを目的にした運動をストレッチングといいます。有酸素運動や筋力トレーニングとは違って、生活習慣病やメタボリックシンドロームの予防に効果的かどうかはまだエビデンスが十分ではないですが、習慣的なストレッチやヨガが血圧低下につながったり、柔軟性の高い人は動脈硬化になる確率が低いことがわかっています。またストレッチ以外にも、セルフメンテナンスで身体のコリや疲れを緩和することも重要です。

本連載『簡単!身体メンテ』では、理学療法士の石田佑也さんに体の悩みを解消するセルフメンテナンスの方法を教えてもらいます。

あなたの腰痛の原因、反り腰かも?

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腰痛は、腰そのものに原因がある場合だけでなく、生活習慣やストレスなど様々な要因をはらんでいます。その原因のひとつに、反り腰があります。

反り腰は、特に女性に多く、腰痛だけでなく、自律神経の乱れや肩こりなどにも影響を与えると言われています。

反り腰とは?

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反り腰は、骨盤が前傾している状態のこと。骨盤が前傾すると、腰(腰椎)の反りが強くなります。

もともと人間の背骨は基本的にS字に弯曲していますが、反り腰はさらに強く腰が反っている状態で、その姿勢が続くと、腰椎周辺の筋肉も常に縮こまり、血流の低下、筋肉そのものが潰れるような圧迫負荷がかかり続けます。つまり、反り腰の状態というのは常に腰周辺の関節や筋肉に負荷をかけてしまう改善すべき姿勢なのです。

反り腰の原因は大きく2つある

反り腰の原因は複数ありますが、今回は多くの人に当てはまる2つの要素についてご説明します。

原因1:ハムストリングスの筋力低下

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ハムストリングスは、骨盤の後ろ側から膝裏の方にある、太ももの裏側の筋肉です。基本的には膝を曲げるために機能する筋肉ではありますが、骨盤を後ろに倒す機能もあります。

しかし、デスクワークが多いと、ハムストリングスが長時間圧を受け続けてしまい、血流が低下。柔軟性が低下してしまうのです。筋肉は柔軟性が低下すると、筋力も低下しますので、骨盤を後傾させるという力を発揮できなくなります。

ハムストリングスの力が弱まると、骨盤を前傾させる筋肉のほうが強く働き、骨盤が前傾しやすくなってしまいます。先述した通り、反り腰は“骨盤が前傾した状態”ですので、ハムストリングスのパワー低下によって、反り腰の姿勢になりやすくなってしまうというわけです。

原因2:脊柱のコントロールの低下

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脊柱(せきちゅう)は頚椎(けいつい)、胸椎(きょうつい)、腰椎(ようつい)、仙椎(せんこつ)に分かれており、それぞれ関節を持っています。胸椎は12個の椎骨、腰椎は5個の椎骨があり、それぞれ関節があるため動かすことができます。

パソコン作業やスマホ操作の継続で、猫背になりやすい人というのは、胸椎が常に屈曲状態にあり、伸ばしにくくなっています。胸椎が縮こまった状態で背筋を伸ばす時、胸椎の代わりに腰椎を伸ばすことで身体を伸ばそうとします。

この動きを続けると、腰椎が伸びる動きに慣れてしまい、背骨ひとつひとつについている固有受容器という動きのセンサーがうまく働かず、腰椎を屈曲させるコントロールができなくなってしまいます。その結果、常に腰椎を不自然に動かし、腰に負担をかけてしまうのです。

胸椎に柔軟性を取り戻すためのストレッチは、下記の記事でもご紹介しておりますのでぜひ参考にしてみてください。

あなたは反り腰?簡単セルフチェック

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【やり方】
1. 床に仰向けで寝る。
2. 床と腰の隙間に、手を入れる。

手のひら1枚分の隙間があれば、正しい姿勢です。それ以上の隙間がある場合は、反り腰の可能性があります。

改善のためには、反り腰にならないように意識して正しい姿勢をキープすることが重要ですが、姿勢や歩行というのは意識的には長時間コントロールすることが難しいものです。

だからこそ、エクササイズを通して運動学習をして、身体を正しいポジションに誘導する必要があります。

反り腰改善エクササイズ

反り腰を改善するために
・腰椎のコントロールの低下
・ハムストリングスの筋力低下
以上の改善が重要です。

#01 ハムストリングスのエクササイズ

©️yuya ishida

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【やり方】
1. 仰向けで床に寝転がり、両膝を立てて、両手はまっすぐに天井に伸ばします。
2. 股関節と膝関節が90度くらいになるところまで両足を持ち上げます。
3. 右足を下ろして、足裏を床につけ、また持ち上げます。
4. 左足を下ろして、足裏を床につけ、また持ち上げます。3と4を各10回ずつ繰り返します。
3、4を各10回行いましょう。

足を持ち上げる前に、腰椎を地面に押し付けるようにして、お腹を凹ませておきましょう。そうすることで足を持ち上げたときに腰椎が伸びるのを防げます。

このエクササイズは、腰を反らさずに足を動かす練習です。腰椎が伸びないようにコントロールしながら足を動かすことが重要。反り腰の人は、油断をするとすぐ腰が浮いてしまうので、必ず地面につけながら行いましょう。

#02 腰椎をコントロールするストレッチ

©️yuya ishida

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【やり方】
1. 仰向けで寝転がり、膝を立て、手は体側におきます。
2. お尻の下側からゆっくりと床から離して、臀部を持ち上げていきます。お尻の下からゆっくり臀部を持ち上げます。お尻、骨盤、腰椎と、徐々に床から浮かします。
3. 腰まで浮かせたら、次は腰→骨盤→臀部の順番におろします。

1セット10回行いましょう。

一気に上げようとすると、腰椎が伸びてしまい、意図した動きができません。この運動は、ゆっくり自分で動きをコントロールしながら行うのがコツです。

この動きは、自然とハムストリングスと腹部に力が入り、ハムストリングスのトレーニングにもなります。

正しい姿勢をキープできる筋肉を手に入れよう

姿勢は日々の積み重ね。できてしまったクセを矯正するのは大変ですが、正しい筋肉を育てれば、少しずつ正しい姿勢を取ることができるようになります。

ハムストリングスの筋力低下と背骨のコントロールの低下は座り姿勢が多い人にとって非常に起こりやすい問題です。腰が強く反ってしまう力に負けないように、コントロールできる力を身につけておきましょう。

記事情報

引用・参考文献

著者プロフィール

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石田佑也(いしだ・ゆうや)
理学療法士・ランニングシューズマイスター・医療美容系ビデオグラファー
「1分1秒ベストなコンディション」をテーマに東京・神奈川を中心にアスリートからビジネスパーソン、キッズまで1万人以上のコンディショニングを行う。東京オリンピックメディカルトレーナーに選出され、世界のトップアスリートのコンディショニングにも携わる。ウェブメディアで理学療法士×シューフィッター×陸上競技選手の3つの視点からランニングシューズについての記事執筆、ウェブメディアの運営も行う。2021年から医療・美容系ビデオグラファーとしての活動も開始。健康経営のためのピラティス動画などの制作も行う。

制作

文・写真:石田佑也

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