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2023.09.02

浅い呼吸は要注意!肋骨のポジションが崩れると、腰痛の原因に?【簡単!身体メンテ】

kencom公式:理学療法士・石田佑也

筋肉や関節の柔軟性を高めることを目的にした運動をストレッチングといいます。有酸素運動や筋力トレーニングとは違って、生活習慣病やメタボリックシンドロームの予防に効果的かどうかはまだエビデンスが十分ではないですが、習慣的なストレッチ(ヨガ)が血圧低下につながったり、柔軟性の高い人は動脈硬化になる確率が低いことがわかっています。またストレッチ以外にも、セルフメンテナンスで身体のコリや疲れを緩和することも重要です。

本連載『簡単!身体メンテ』では、理学療法士の石田佑也さんに体の悩みを解消するセルフメンテナンスの方法を教えてもらいます。

リブフレアって知ってる?

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・反り腰
・腰痛
・腹筋が弱い
・くびれができない

このような悩みがある人は、リブフレアの可能性があります。

リブフレアとは、下の肋骨が左右に広がっている状態のこと。深い呼吸をするのに重要な横隔膜が広がったまま固まってしまい可動域が狭くなってしまいます。

横隔膜が正常に機能しないことで、呼吸をする際に頸部の筋など他の部位で補完することになり、頸部や肩甲骨周囲の筋に負担がかかり肩こりや頸部痛などを引き起こす…という悪循環。また、横隔膜の機能低下によって、呼吸も浅くなってしまい全身に影響を与えます。

リブフレアが起こってしまうのはなぜ?

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リブフレアはなぜ起きてしまうのでしょうか。ライフスタイルからくる不良姿勢が原因の場合が多くみられます。代表的な3つの要素をご紹介します。

過度なストレスによる交感神経優位

ストレスによって吸気過多になると、吸気によって肋骨は広がるので、緊張度の高い人は腹式呼吸ができず肋骨が広がりやすいです。特に仕事中は緊張度が高まるシーンも多いので注意が必要です。

脊柱起立筋、広背筋の過剰な活動

肋骨を後ろから覆うようについている広背筋が、緊張して縮こまると肋骨を後ろから引っ張るような力が加わるために、肋骨が開きやすくなります。広背筋は背中の筋肉で、デスクワークなどの姿勢で緊張状態になりやすいです。

背骨の関節が硬い

そもそも背骨がまっすぐの状態のとき、肋骨は通常のポジションです。背骨が丸くなっていると肋骨は閉じ、逆に背骨が反っていると肋骨は開きます。

背骨の一部である腰椎が硬くなると、背中を丸くすることができず、結果的に肋骨が閉じにくい状態が続いてしまいます。

リブフレアというのは、不良姿勢などのライフスタイルの癖から起こりやすいものであり、若い人にも起こってしまうため非常に厄介です。リブフレアは、コルセットなどで一時的に矯正することはできても、生活改善をしなければすぐに元に戻ってしまいます。根本的な改善のためには、運動やストレッチで正しい姿勢と筋肉を手に入れる必要があります。

リブフレアと体の悩みの関係

リブフレア✖️腰痛

リブフレアによる不良姿勢の負のスパイラルに陥ると腰痛を引き起こす可能性があります。

リブフレアになっている時点で、身体の前側だけが開いていて、筋肉もアンバランスな状態になっています。前面が拡張している状態なので、腹筋が引き伸ばされていて、うまく機能ができなくなります。そして、その状態が続けば腹筋は弱くなっていきます。

腹筋は身体を支えるために大事な筋肉ですので、うまく機能ができなくなると、後面の腰を中心にしか支えられなくなり、結果として、腰に負担がかかり、腰痛に繋がってしまうというワケです。

リブフレア✖️くびれ

運動をしてるけれど、なぜか下っ腹だけは変化がなかったり、くびれがなかなかできないなんてことありませんか。それにはリブフレアが関わっている可能性があります。

リブフレアの状態では、腰部を中心に脊柱の描くラインが直線的となるため、腰背部を均一に丸くすることができません。その状態だと、どんなに腹筋を頑張っても、下腹部には効かないのです。お腹周りをすっきりさせるには、まずリブフレアの状態を正常に戻す必要があります。

重要なのは横隔膜

例えば、反り腰を改善させるためには、腰以外で身体を支える必要があります。それが横隔膜を含めた腹筋群ですね。しかし、腹筋群がしっかり機能して身体を支えるには、腹腔内圧が高い必要があります。呼吸する時に横隔膜が上から下に降りていき、腹腔内圧を上げることで腹筋群が正しく働くのです。これがリブフレアの状態だと、横隔膜の動きが悪くなり、腹腔内圧が上がらなくなります。そのため腹筋群が上手く機能しないのです。

また、横隔膜が上手く機能しないと「肋骨開いてるなぁ」「反り腰きついなぁ」と感じたなら、早めに対処しましょう!自覚がない方も、この後の章で簡単なセルフ、腹式呼吸ができず、肩を上げるような努力性呼吸が優位になり、肩こりや緊張性頭痛にも繋がります。現代社会ではストレスによる努力性呼吸も無意識に増えているので、反り腰になると余計悪化してしまう可能性があるので注意が必要です。

横隔膜を動かしやすくして、そして腹式呼吸ができて腹腔内圧を上げることで、反り腰を抑えましょう。

もしかしてリブフレア?肋骨のポジションを簡単チェック

まずは、ご自身でみぞおちの下の肋骨に触れてみてください。お腹に手を当て、上にスライドしていくと、一番下の肋骨にぶつかるはずです。その左右の肋骨の角度を肋骨下角というのですが、基本的にここが90度に開いているのが理想です。

次にチェックしてもらいたいのが、肋骨の下の突起部分と、骨盤の左右の突起部分(上前腸骨棘)を結んだ線。立位なら壁と平行であること、臥位なら床と平行であることが正しい肋骨のポジションです。

©️yuya ishida

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反り腰の人の多くは、肋骨下角が90度よりも広がっていたり、左右の肋骨の位置が骨盤の上前腸骨棘と同じ高さになかったり、肋骨と骨盤を結んだ線が斜めになっていることがあります。

2つのチェックで、自分がリブフレアになっていないか確認してみましょう。もし「リブフレアかも?」と思ったら、これからご紹介するエクササイズで肋骨の位置を正常に戻していきましょう。

リブフレアを改善する2つのエクササイズ

リブフレア改善のために、やるべきことは

・肋骨の可動性の改善
・過剰な緊張の抑制
・腰椎を意図的に屈曲させる

この3つです。今回紹介する2つのエクササイズは必ずセットで行いましょう。肋骨の柔軟性を確保してしっかり呼吸しやすくしてから、横隔膜トレーニングをやることが大切です。

#01 広背筋ストレッチ

©️yuya ishida

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【やり方】
1. 四つん這いの状態になります。
2. 片手を伸ばし、手のひらを上にして、反対の手の前におきます。
3. お尻を後ろに引いて、5秒キープ。脇の下から脇腹にかけて伸びている感覚があればOK。

左右5回ずつ行いましょう。

肋骨についている広背筋をストレッチすることで、肋骨を動きやすくし、呼吸においてお腹を膨らみやすくします。

#02 横隔膜トレーニング

©️yuya ishida

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【やり方】
1. 四つん這いの状態から、肘を床につけます。
2. 体を大きく丸めます。
3. 丸くなった状態を維持して、鼻で深呼吸を繰り返します。腰が反ったり、肩が上がらないように注意。

深呼吸を10回を1セットとして行いましょう。

鼻呼吸をしっかり行うことで腹筋の収縮もしっかり感じることができます。この状態での呼吸をすることで、横隔膜をしっかり機能させるトレーニングです。呼吸時のお腹も膨らみ、腹腔内圧向上と腹筋群への刺激ができます。

肋骨のポジションを整えよう

リブフレアはストレッチとトレーニングをすれば整いやすいものですが、多くの人はこれに気づかず腹筋運動だけを頑張ってしまいます。それでは反り腰も良くならないし、なかなかくびれもできないのです。その原因がリブフレアかもしれません。

もし、姿勢が気になる、反り腰が気になるという方は、肋骨のポジション(リブフレア)チェック、そしてこのエクササイズを実際にやってみてください。

記事情報

引用・参考文献

著者プロフィール

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石田佑也(いしだ・ゆうや)
理学療法士・ランニングシューズマイスター・医療美容系ビデオグラファー
「1分1秒ベストなコンディション」をテーマに東京・神奈川を中心にアスリートからビジネスパーソン、キッズまで1万人以上のコンディショニングを行う。東京オリンピックメディカルトレーナーに選出され、世界のトップアスリートのコンディショニングにも携わる。ウェブメディアで理学療法士×シューフィッター×陸上競技選手の3つの視点からランニングシューズについての記事執筆、ウェブメディアの運営も行う。2021年から医療・美容系ビデオグラファーとしての活動も開始。健康経営のためのピラティス動画などの制作も行う。

制作

文・写真:石田佑也

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