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2023.09.16

あれ、なんだか首が短くなった?今増えているワイヤーシステムの破綻を知ろう【簡単!身体メンテ】

kencom公式:理学療法士・石田佑也

筋肉や関節の柔軟性を高めることを目的にした運動をストレッチングといいます。有酸素運動や筋力トレーニングとは違って、生活習慣病やメタボリックシンドロームの予防に効果的かどうかはまだエビデンスが十分ではないですが、習慣的なストレッチやヨガが血圧低下につながったり、柔軟性の高い人は動脈硬化になる確率が低いことがわかっています。またストレッチ以外にも、セルフメンテナンスで身体のコリや疲れを緩和することも重要です。

本連載『簡単!身体メンテ』では、理学療法士の石田佑也さんに体の悩みを解消するセルフメンテナンスの方法を教えてもらいます。

最近、首が短くなってない?

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あなたは「以前より首が短くなった…?」なんて思ったことはないですか。実はそれ、勘違いではないかもしれません。「肩や首がこる、首が短く見える」という方は、ワイヤーシステムと呼ばれる首を支える機構が弱くなっている可能性があるのです。

頭部や首を支える筋肉は
肩甲骨(けんこうこつ)
肋骨(ろっこつ)
胸骨(きょうこつ)
鎖骨(さこつ)
頚椎(けいつい)
胸椎(きょうつい)
という多くの骨を土台として、頭部や首にかけて付着しています。

それぞれがテントのワイヤーのように、ピンっと張っていることで、頭部は正しい位置を保つことができます。

頭部には、体重の約10-15%が真下に落ちる力として負荷がかかっています。頚部の筋肉がバランスよく抵抗して、頭部を支えており、これをワイヤーシステムと呼びます。

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日常生活でデスクワークが多かったり、不良姿勢が続いてしまうと、バランスよく抵抗していた筋肉にも偏りが出てしまいます。特にPC作業によって頭部が前方位になることは最近増えているケースです。

頭部が前に出ると、首の前方の筋肉は緩んでしまうので、力が発揮できていない状態で、首の後方にある筋肉だけが重力に対して拮抗し続けます。この状態が続くと、頭頸部の後ろ側にある筋肉はいつもよりも過剰に働き続けてしまい、循環不良が起こり肩こりなどに繋がります。

特にもっとも頭部を釣る上で重要な筋肉である後頭下筋に、強く負担がかかります。後頭下筋の硬さは眼球運動にも影響を与え目の疲れにも影響します。

ワイヤーシステムが破綻すると首が短くなる理由

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慢性的な頚部痛の人は、頭部を支えようと頑張っているため胸鎖乳突筋、斜角筋、僧帽筋上部線維という筋肉の緊張状態が強くなります。これらの筋肉は表層にあるため、筋腹が厚くなり、相対的に首は短くなってしまいます。

また、筋肉の緊張が継続すると、血管が圧迫されて血流循環が悪くなり、むくみにも繋がります。このむくみが首の厚さにも影響して首が短く見える原因になります。

姿勢を改善して頭の位置を正常に戻そう

姿勢改善のために大事なのは、頑張りすぎている筋肉を抑制し、サボっている筋肉へ刺激を入れることです。

後頚部の筋肉は頭部にかかる真下へ落下する力を抑えるために負荷がかかっています。その負荷をまずは首の前側の筋肉でも支えられるようにしていくことが大切です。

【頭の位置を正常に戻すために必要なこと】
①頚椎、胸椎の可動性を上げる動き
②首の前側の筋肉への刺激
③肩甲骨を下制する動き
④前胸部を抑制する動き

この4点です。ただし、姿勢を変えようとしても基本的にはすぐに変えることは難しいでしょう。
すでにワイヤーシステムが破綻している場合、正常に機能するための筋力が備わっていないため、正しい姿勢を維持することができないのです。ワイヤーシステムがしっかり機能できるフィジカルの環境を作ってあげるためにエクササイズをしましょう。

頭の位置を正常に戻すエクササイズ

#01 筋肉の動きを促通する

このエクササイズでは、先ほど紹介した【頭の位置を正常に戻すために必要なこと】
のうち

①頚椎、胸椎の可動性を上げる動き
②首の前側の筋肉への刺激

この2点にアプローチします。筋肉の動きを促通させるエクササイズです。

©️yuya ishida

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【やり方】
1. うつ伏せになります。
2. 両手で地面を押しながら胸を床から離す。背中を反って上がろうとするのではなく、地面を押しながら離すというイメージで行います。顎は上がりやすいので常に顎は引くように心がけて。

1セット10回行いましょう。

伸ばしている間の持続時間は必要ありません。臀部や腰に力が入っているように感じたら正しく行えていない状態です。勢いをつけるのではなく、ゆっくりと動かし、臀部、腰には力が入っていないことを確認しながら行いましょう。

#02 過剰な筋肉を抑制する

このエクササイズでは、先ほど紹介した【頭の位置を正常に戻すために必要なこと】
のうち

③肩甲骨を下制する動き
④前胸部を抑制する動き

この2点にアプローチします。過剰な筋肉を抑制するエクササイズです。

©️yuya ishida

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【やり方】
1. 膝を曲げた状態で床に座り、手を体の後ろにつきます。この時に手の指を体側に向けましょう。
2. 両手で床を押しながら上半身を持ち上げます。
3. かかとで床を押しながら、上半身が床と平行になる姿勢になります。

1セット5〜10回行います。

上がりやすい肩甲骨を下げて、胸筋群を抑制し、股関節伸展筋の活性を行います。腰椎が強く反っていないか、首が前に出過ぎていないかに注意しましょう。

首が短くなったと感じたら要注意

2つのエクササイズを組み合わせることで、サボっている筋肉や関節に刺激を入れて、頑張りすぎている筋肉の抑制を促すことができます。

続けていくうちに、過剰に働いている筋肉の張りや筋腹の厚みを抑えることができ、血流循環も改善するため、首の長さが変わってくるでしょう。身体を正しい位置に戻して、負担を少なくするために、首を支える筋肉のバランスを整え、ワイヤーシステムの破綻を改善させましょう。

記事情報

引用・参考文献

著者プロフィール

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石田佑也(いしだ・ゆうや)
理学療法士・ランニングシューズマイスター・医療美容系ビデオグラファー
「1分1秒ベストなコンディション」をテーマに東京・神奈川を中心にアスリートからビジネスパーソン、キッズまで1万人以上のコンディショニングを行う。東京オリンピックメディカルトレーナーに選出され、世界のトップアスリートのコンディショニングにも携わる。ウェブメディアで理学療法士×シューフィッター×陸上競技選手の3つの視点からランニングシューズについての記事執筆、ウェブメディアの運営も行う。2021年から医療・美容系ビデオグラファーとしての活動も開始。健康経営のためのピラティス動画などの制作も行う。

制作

文・写真:石田佑也

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