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2023.08.05

その腰痛、脚の柔軟性が原因かも?腰痛改善のための脚ストレッチ【簡単!身体メンテ】

kencom公式:理学療法士・石田佑也

筋肉や関節の柔軟性を高めることを目的にした運動をストレッチングといいます。有酸素運動や筋力トレーニングとは違って、生活習慣病やメタボリックシンドロームの予防に効果的かどうかはまだエビデンスが十分ではないですが、習慣的なストレッチ(ヨガ)が血圧低下につながったり、柔軟性の高い人は動脈硬化になる確率が低いことがわかっています。またストレッチ以外にも、セルフメンテナンスで身体のコリや疲れを緩和することも重要です。

本連載『簡単!身体メンテ』では、理学療法士の石田佑也さんに体の悩みを解消するセルフメンテナンスの方法を教えてもらいます。

慢性的な腰痛、意外な原因は…

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長時間のデスクワークでの腰痛。腰をマッサージしてもまた痛くなる。その腰痛、実は脚の柔軟性が原因かも知れません。

身体の不調で肩こりに並び非常に多いのが腰痛です。腰痛が原因で仕事がなかなかスムーズに進まない、現場から一時的に離脱せざるを得ないということも。

でも、腰痛というのは、日々の積み重ね。ぎっくり腰のような突発的な事態を除いて、いきなり症状がでてくるわけではありません。何かしら毎日の姿勢や動きや身体の状態から徐々に負担がかかって、最終的に組織に病的な変化が起きて痛みが出ているのです。

多くの人は腰のマッサージをしてもらえば一時的には落ち着きます。でもまたすぐに症状が戻ってきてしまいます。なぜならそれは、根本の原因は腰ではないからです。

根本的な原因のひとつに“脚の柔軟性”があります。

脚の柔軟性が低下すると、なぜ腰痛になるのか?

まずは、多くの方に腰痛が起こってしまう流れを把握しておきましょう。

骨盤が後傾して腰椎も曲がることで、関節は曲がる負荷がかかり腰椎周囲についている筋肉は伸ばされます。一瞬だけなら大したことはありませんが、これがずっと続いていると、筋肉は伸ばされ続けて負荷がかかり、血流循環も悪くなります。結果として、継続的な負荷と血流循環不良から組織の病的な変化が起き、腰痛の症状が現れます。

根本原因である、骨盤が後傾してしまうのは、腿裏の筋肉であるハムストリングスと、臀部の大殿筋の柔軟性の低下です。

ハムストリングスは骨盤から腿裏にある大きな筋肉のひとつです。この筋肉の柔軟性が低下することで骨盤を常に後傾する方向に引っ張り続けます。大殿筋も骨盤の後ろについており、腰から背中にかけての筋肉にも繋がっている筋肉です。この大殿筋も硬くなることで股関節の動きが制限され、腰部に負担がかかりやすくなります。

つまり、腰痛マッサージを受けても、ハムストリングスや大殿筋の柔軟性が硬いままだったら、またすぐ腰に負担をかけてしまうため、腰痛を引き起こしてしまうのです。

腰痛で腰のマッサージを受けることは、一時的に痛みを取り除くことはできますが、根本的に腰痛を解消することは難しいのです。ですから、腰痛改善のためは足を柔軟に保つ必要があるのです。

脚の柔軟性が落ちる理由

なぜハムストリングスや大殿筋の柔軟性が低下するのでしょうか?

例えば、デスクワークで座っているとき、臀部と腿裏は基本的に椅子に当たっている状態です。そこに自分の上半身の体重がのっているので、潰されているような状態になっています。体重がのっている部分は、血流循環が悪くなり、硬くなりやすくなります。

また、座っている姿勢も、骨盤が倒れるような曲がった座り方であれば、腰に負担をかける姿勢の状態で筋肉が硬くなるので、そこから戻りにくくなってしまいます。

もちろん年齢や運動習慣なども関係していますが、デスクワークをしている時間が長いと、どうしても大殿筋やハムストリングスは硬くなりやすくなりますので、放っておけば腰痛になりやすいという仕組みです。

長時間のデスクワークの継続

柔軟性が低下する

腰痛リスクが上がる

つまり上記の負の連鎖を断ち切り、腰痛を予防するためには、脚の柔軟性を十分に保つことが重要なのです。

腰痛予防のために、1時間に1回は立つ習慣を

脚の柔軟性を改善させるためのストレッチの前に、デスクワークの方には必ずやってほしいことがあります。

それは、1時間に1回は立つことです。

©️yuya ishida

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先ほど説明した通り、ハムストリングスや大殿筋の柔軟性が低下するのは、長時間座っていての圧が大きな原因です。これは1時間に1回は立つだけで、リセットできます。座面の圧から筋肉を開放し、曲げられた関節や筋肉を伸ばしましょう。

最近ではスマートウォッチなどのデバイスで、1時間毎にスタンドするような通知がくるようなものもあります。ツールを上手に利用して、定期的に立つ時間を作ってみましょう。

また、環境が許すのであれば、スタンディングデスクや昇降デスクで立った状態で仕事をするのも効果的です。いかにハムストリングスや大殿筋への圧をかけないかが大事なのです。

脚の柔軟性を高めて、腰痛改善ストレッチ

腰痛に対して直接アプローチするストレッチではないですが、脚のストレッチで腰痛が改善するケースは非常に多く存在します。少しでも腰に違和感がある人はぜひ試してみてください。

#01 ハムストリングスストレッチ(座り)

©️yuya ishida

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【やり方】
1. 座った状態で右脚を伸ばします。足首は90度に曲げましょう。
2. 左手でつま先をタッチします。勢いをつけて伸ばそうとしないように注意してください。手が届かなくてもOK!この時、背中を丸めずに股関節の付け根から身体を倒します。反対側も同様に伸ばしましょう。

左右5回ずつ行いましょう。
身体を丸めるのではなく、股関節の付け根をしっかり曲げることが大事です。ハムストリングスが伸びているのを感じてください。

#02 ハムストリングスストレッチ(立ち)

©️yuya ishida

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【やり方】
1. 立った状態で右脚を伸ばします。足首は90度に曲げましょう。
2. 左手でつま先をタッチします。勢いをつけて伸ばそうとしないように注意してください。手が届かなくてもOK!この時、背中を丸めずに股関節の付け根から身体を倒します。反対側も同様に伸ばしましょう。

左右5回ずつ行いましょう。
座った状態と同じように、片方の脚を伸ばした状態で、股関節の付け根から身体を倒してつま先タッチ。座ったままでも立った姿勢でも、どちらの体勢でも同じ効果があります。あなたの生活で取り入れやすい方法を選んでください。

#03 大殿筋ストレッチ(椅子)

©️yuya ishida

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【やり方】
1. 右脚を曲げ、左脚の上にのせます。この時、右脚の足首が左脚の膝上あたりにくるようにして、できるだけ右脚は外に開くようにしましょう。
2. 左手をまっすぐ伸ばして、右脚のつま先をタッチします。勢いをつけて伸ばそうとしないように注意してください。。手が届かなくてもOK!この時、背中を丸めずに股関節の付け根から身体を倒します。反対側も同様に伸ばしましょう。

左右5回ずつ行いましょう。

#04 大殿筋ストレッチ(床)

©️yuya ishida

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【やり方】
1. 床に座った状態で、右脚を後ろに、左脚は曲げて前に広げます。
2. 両手を正面について、身体を正面・右・左に倒します。反対側も同様に伸ばしましょう。

左右5回ずつ行いましょう。
右、左、真ん中と色んな方向に身体を倒すことで、大きな大殿筋をしっかり伸ばすことができます。

これらのストレッチを行うことで、骨盤の後傾が改善することが期待でき、腰痛が軽減するケースもありますので、ぜひ試してみてください。

脚の柔軟性を高めて腰痛知らずの身体へ

現代のライフスタイルやワークスタイルでは、どうしても長時間の座り姿勢が多く、柔軟性の低下から腰痛になる人が非常に増えています。

・長時間の座り姿勢で脚の柔軟性は低下する。
・ストレッチと定期的なスタンディングで腰痛リスクは減らせる。

脚の柔軟性が保てていれば、姿勢も丸くなりにくく、腰への負担も少ないため、体のコンディションが良い状態で仕事に取り組むことができるでしょう。ストレッチなどをしていないと間違いなく硬くなりますので、腰痛を起こす前に脚のストレッチは定期的に行うことが重要なのです。

腰痛の原因は様々で、なかには重大な病気が潜んでいる場合もあります。腰痛が長引くときには、早めに医療機関を受診しましょう。

記事情報

引用・参考文献

著者プロフィール

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石田佑也(いしだ・ゆうや)
理学療法士・ランニングシューズマイスター・医療美容系ビデオグラファー
「1分1秒ベストなコンディション」をテーマに東京・神奈川を中心にアスリートからビジネスパーソン、キッズまで1万人以上のコンディショニングを行う。東京オリンピックメディカルトレーナーに選出され、世界のトップアスリートのコンディショニングにも携わる。ウェブメディアで理学療法士×シューフィッター×陸上競技選手の3つの視点からランニングシューズについての記事執筆、ウェブメディアの運営も行う。2021年から医療・美容系ビデオグラファーとしての活動も開始。健康経営のためのピラティス動画などの制作も行う。

制作

文・写真:石田佑也

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