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2023.07.15

猫背は健康の大敵!猫背を解消するストレッチ&座り方【簡単!身体メンテ】

kencom公式:理学療法士・石田佑也

筋肉や関節の柔軟性を高めることを目的にした運動をストレッチングといいます。有酸素運動や筋力トレーニングとは違って、生活習慣病やメタボリックシンドロームの予防に効果的かどうかはまだエビデンスが十分ではないですが、習慣的なストレッチやヨガが血圧低下につながったり、柔軟性の高い人は動脈硬化になる確率が低いことがわかっています。またストレッチ以外にも、セルフメンテナンスで身体のコリや疲れを緩和することも重要です。

本連載『簡単!身体メンテ』では、理学療法士の石田佑也さんに体の悩みを解消するセルフメンテナンスの方法を教えてもらいます。

気づいたら、背中が丸くなっていませんか?

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日常動作の9割は、体の前で行う動作なので、どうしても背中が丸く、猫背になりやすいです。でも、その猫背、そのままにしているとちょっと危ないって知っていますか。少しでも猫背が気になるようであれば、早めに対処していくことをおすすめします。

今回は、猫背になったときの影響とそれを抑えるためのストレッチをご紹介していきます。これであなたも猫背で悩んだりつらい肩こりから脱却できるかもしれません。

頭が前に出て猫背になると肩が凝りやすいメカニズム

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デスクワークが多く、スマホをよく見ている人に多い猫背は、頭と肩が前にある状態です。これをフォワードヘッドポスチャーといいます。

頭部はおおよそ5〜6kgありますので、フォワードヘッドポスチャーになると、頭部の後ろにある筋肉(後頭下筋)を収縮させて保つ必要があります。筋肉が常に収縮した状態は、血管を圧迫するため、血流が悪くなり筋肉も硬くなります。これが肩こりの原因の1つです。

頭部が1インチ(約2.54cm)前にいくと、約5kgの負担が背骨にかかります。つまり3インチ(約7.62cm)前にいけば、負担は約15kgにもなり、支えている後頭下筋への負荷は計り知れません。

姿勢が悪いと起こる身体への悪影響

猫背は、姿勢が悪くなり見栄えが悪いだけではなく、実は全身に悪い影響があるのです。

<猫背のデメリット>
・全身の筋肉の出力が低下(力が入りにくくなる)
・肩こりの原因になる
・腰痛の原因になる
・頭痛の原因になる
・太りやすくなる
・O脚になりやすい
・噛み合わせや歯並びが悪くなる
・内臓機能が低下する原因になる
・視力低下の原因になる
・運動のパフォーマンスが低下する

猫背になると、筋肉の出力が低下して、力が入りにくくなるというのは、身体の前面の筋肉が縮こまり、背面の筋肉が引き伸ばされてる状態になります。筋肉は縮まっていても伸びていてもしっかり力は発揮できません。なので猫背になるだけで筋力が落ちてしまう状態になるのです。

身体への悪影響を考えると、猫背は放っておいていいことはありません。そのためには正しい姿勢を意識すること、そしてストレッチを定期的に実施することが大事になのです。

あなたの姿勢は大丈夫?簡単セルフチェック

猫背解消の前に、まずは基本の正しい姿勢をチェックしてみましょう。脚を肩幅に開き、身体を横から写真で撮影します。そして、下記の5ヵ所の位置を確認します。

©️yuya ishida

©️yuya ishida

・耳:耳の穴がある部分
・肩:肩の一番高い部分
・大転子:骨盤の中心部分
・膝:膝の中心
・外くるぶし:外くるぶしより2cm前

この5ヵ所が一直線になっているのが理想の姿勢です。

猫背を改善!自分でできる簡単ストレッチ

猫背にならないためには丸くなりやすい部分のストレッチが非常に重要です。そして伸ばすだけでなく、猫背になりにくくするための刺激も必要です。今回はエクササイズ用の棒を使ってストレッチしていますが、タオルで代用可能です。

この4つのストレッチだけで、肩甲骨から胸部、側腹部と猫背に関わる縮こまりやすい筋肉を全て伸ばすことができます。姿勢はすっと伸び、肩こりも楽になるはずです。

また、ストレッチを繰り返し行うことは、ご自身で筋肉を動かすため、正しい姿勢が身につきやすく、習慣化してしまった悪い姿勢に戻りにくくなります。

#01 肩甲骨を上下に動かす

©️yuya ishida

©️yuya ishida

【やり方】
1.エクササイズ用の棒(もしくはタオル)を持ち、腕を上にあげます。棒を持つ位置は肩幅から10cm外側くらいです。
2.そのまま肩の位置まで棒を垂直に下げます。このとき、肩甲骨の間にシワを寄せるようなイメージで動かしましょう。

1日5セット行いましょう。

猫背解消には、胸の前の縮こまった筋肉を伸ばすだけでなく、肩甲骨を動かすことも重要です。なぜなら、伸びた状態を維持するには、背面の肩甲骨にある筋肉がしっかり機能している必要があるためです。

棒を上から下ろすときに、肩甲骨の間がギュッと動くのを意識しながら行いましょう。

#02 肩甲骨の間を動かす

©️yuya ishida

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【やり方】
1.エクササイズ用の棒(もしくはタオル)を後ろに持ちます。
2.肩甲骨の間にシワを寄せるように意識して、棒を後ろに引きます。頭部が前に倒れないように注意しましょう。

1日5セット行いましょう。

この動きは、普段動かすことのない後方への動きですので、動かしにくい方も多いと思います。肩甲骨まわりの筋肉を使い、大胸筋のストレッチを行います。さらに、肩甲骨の間や下の筋肉に刺激が入るので、猫背になりにくくなります。

#03 身体の横のラインを伸ばす

©️yuya ishida

©️yuya ishida

【やり方】
1.椅子に座り、エクササイズ用の棒(もしくはタオル)を持ち、腕を上にあげます。棒を持つ位置は肩幅から10cm外側くらいです。その状態のまま、右横に倒れます。横腹をしっかりと曲げるように意識しましょう。
2.同じく左横に倒れて、左右に伸びます。お尻が座面から浮かないように注意しましょう。

左右1セットとして、1日5セット行いましょう。

猫背になると背中だけでなく、横腹も伸びにくくなります。この動作では、伸びにくくなった横腹を動かすことで、猫背の解消をしていきます。

#04 身体の横のラインと背中を伸ばす

©️yuya ishida

©️yuya ishida

【やり方】
1.エクササイズ用の棒(もしくはタオル)を持ち、腕を上にあげます。棒を持つ位置は肩幅から10cm外側くらいです。腰から上を右側に45度回します。
2.そのまま横に倒れます。横腹をしっかりと曲げるように意識しましょう。
3.左側も同様に横腹を伸ばします。お尻が座面から浮かないように注意しましょう。

左右1セットとして、1日5セット行いましょう。

横腹だけでなく、背中側の筋肉も気持ちよく伸び、猫背解消にぴったりな動きです。

明日からできる!猫背になりにくい座り方

体が凝り固まる前にできる予防法もあります。それは、正しい座り方をすること。正しい姿勢を意識するだけでは良い姿勢は維持できませんので、できるだけ意識しなくても丸くなりにくい座り方を身に付けましょう。

猫背予防になる座り方

©️yuya ishida

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【やり方】
椅子の座面半分だけに腰掛け、背筋を伸ばします。

「背もたれにしっかりかかったほうが姿勢がきれいになるのではないか?」と思われるかも知れませんが、実はこの姿勢は、骨盤は後ろに傾き、背部は全体的に丸くなってしまいます。丸くなると、腰椎や背中から腰の筋肉がずっと曲がって伸ばされているので、常に負荷がかかる事になります。

姿勢は、長時間コントロールできません。ですから、できるだけ丸くなりにくい環境にしてあげることが大事です。

正しい姿勢のために必要なのは、座面の半分だけ座ること。これだけで、常に意識していなくても自然と骨盤がまっすぐに立ち、身体が伸びやすくなります。さらに肩や腰に負担がかかりにくいので、猫背だけでなく腰痛の症状改善にも有効なのです。簡単なので、ぜひ試してみてください。

丸まった背中を真っ直ぐに

現代のライフスタイルには、スマートフォンやパソコンが欠かせない存在です。腕を前に出して作業する時間が増えるので、多くの人が猫背姿勢になります。

ライフスタイルを変えることは簡単ではありませんが、身体の不調が出る前に、意識して背中を真っ直ぐに保ったり、肩甲骨の筋肉を使ったり、前面の筋肉を伸ばす機会を作ることが重要です。常に張っている背中に、今回ご紹介したストレッチを加えるだけで、猫背姿勢の改善だけでなく、肩こりがかなり楽になります。

記事情報

引用・参考文献

著者プロフィール

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石田佑也(いしだ・ゆうや)
理学療法士・ランニングシューズマイスター・医療美容系ビデオグラファー
「1分1秒ベストなコンディション」をテーマに東京・神奈川を中心にアスリートからビジネスパーソン、キッズまで1万人以上のコンディショニングを行う。東京オリンピックメディカルトレーナーに選出され、世界のトップアスリートのコンディショニングにも携わる。ウェブメディアで理学療法士×シューフィッター×陸上競技選手の3つの視点からランニングシューズについての記事執筆、ウェブメディアの運営も行う。2021年から医療・美容系ビデオグラファーとしての活動も開始。健康経営のためのピラティス動画などの制作も行う。

制作

文・写真:石田佑也

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