2024.01.25
味噌少なめで塩分27%カット!体温まる野菜のうまみたっぷり豚汁【減塩ごはん】
厚生労働省のe-ヘルスネットによると、健康な日本人の成人男女が目標とするべき食塩摂取量は、男性7.5g未満、女性6.5g未満。でも実際の日本人の食塩摂取量の平均値は10.1gで、平均2gを上回っている状況です。さらに2024年度国民健康づくり計画『健康日本21(第3次)』からは、食塩摂取量の目標値を7g未満に定めることが明らかになっています。
塩分を摂りすぎると高血圧のリスクが高まります。日本人の3人に1人は高血圧といわれており、特に注意すべき生活習慣病です。減塩を習慣化することにより生活習慣病予防はもちろん、未来の健康づくりを行うことができるのです。
本連載『減塩ごはん』では、定番レシピを減塩しながら美味しく仕上げるレシピを管理栄養士の磯村優貴恵さんに教えていただきます。
27%減塩!体温まる野菜のうまみたっぷり豚汁
野菜や肉などたくさんの具材が入った豚汁は、身も心もほかほかにしてくれる冬の定番。ただ、味噌には塩分が多く含まれるため、食べ過ぎには注意が必要です。このレシピでは、香りを豊かにすることで満足度を高めながら減塩できる豚汁レシピをご紹介します。
材料(2人分)
豚こま肉 50g
油揚げ 1/2枚
大根 80g
にんじん 50g
ごぼう 1/4本
長ねぎ 1/2本
生姜 1/2片
だし汁(食塩無添加のだしパックを使用) 400mL
日本酒 小さじ1
味噌 大さじ1
醤油 小さじ1/2
ごま油 小さじ2
七味唐辛子 少々
塩分量(1食あたり)
塩分量:1.6g
一般的なレシピの塩分量:2.2g
※このレシピは、一般的なレシピと比較すると、約27%減塩になります。
主な栄養成分(1食あたり)
エネルギー 181kcal
たんぱく質 8.9g
脂質 11.8g
炭水化物 12.3g
糖質 8.6g
作り方
1. 豚肉には日本酒を振ったあと、軽く揉みこんでおく。大根、にんじんは5mmの厚さのいちょう切りにする。長ねぎは1cm幅の小口切りにする。ごぼうは皮を軽くこそげとって5mm幅の小口切りにし、5分ほど水にさらしておく。生姜は千切り、油揚げは1cm幅の短冊切りにする。
2. 鍋にごま油小さじ1と生姜を入れ中火で熱し、生姜の香りが立ったら豚肉を加え、ほぐすようにして混ぜる。豚肉から脂が出てきてほんのり焼き色がついたらいったん取り出す。
3.2の鍋に残りのごま油小さじ1を入れて熱し、大根、にんじん、水分を切ったごぼうを入れ炒め合わせる。
4.全体に油が回ったら長ねぎを加え軽く炒め合わせてから、だし汁と油揚げを加える。沸騰したら弱めの中火にし、蓋をして10分ほど煮る。大根が透き通ってきたらOK。
5. 食材が柔らかく煮えたら2の豚肉と醤油を入れて混ぜ、火を止めて味噌を溶かし入れる。
6. 器に盛り、お好みで七味唐辛子を振って完成。
このレシピのポイント
#1 ごぼうの香りを残すコツはあく抜きをし過ぎない
ごぼうはあく抜きが必要なので、切った後に水にさらします。水の色がなくなるまで何度も水をかえたり、長時間水にさらしたりする方があくが抜けるから良いと思われがちですが、あくが抜けすぎると大切なごぼうの風味も損なわれて味気ない印象になってしまいます。減塩に必要な満足感を追加してくれる香りを逃してはなりません。ごぼうの香りを残すために、あく抜きは5分程度を目安にします。
なお、ごぼうのあく抜きをした時に水が茶色くなるのはクロロゲン酸というポリフェノールの一種が出るため。クロロゲン酸には抗酸化作用があり、体内の活性酸素を抑えてくれます。栄養面を考えても、あく抜きのし過ぎは避けましょう。
#2 豚肉をしっとり仕上げるためにひと手間かける
豚肉を鍋からいったん取り出し、後ほど加えるというひと手間をかけることで、豚肉が長時間の加熱により硬くなったり、パサついたりすることを防げます。
また、豚肉は、生姜や酒と合わせることで臭みが抑えられ、少し焼き色がつくまで炒めることで香ばしく仕上がります。ひと手間をかけることで、より美味しく仕上がりますので、試してみてください。
#3 皮ごと野菜を使うことにはメリットがたくさん
生姜やにんじん、大根は皮ごと食べられる食材なので皮ごと使いましょう。これらの野菜は皮ごと煮込むこともできるので調理の手間を省けるうえ、食品ロスの削減にもつながります。
今回のレシピでは食感を優先して大根は皮をむきましたが、特に気にならないという方には、食物繊維を摂るという観点からも皮ごと食べることはおすすめです。
【減塩豆知識】香りは最高のスパイス!
豚汁には、塩分を多く含む味噌が使われています。ですから、どうしても塩分が多くなってしまいます。今回のレシピでは通常の豚汁では大さじ2杯使うところを半分の1杯に減らしました。しかし、単純に味噌が少なくなってしまうと、味を物足りなく感じてしまいます。そこで、少ない塩味を補うために、香りを最大限活用しました。
“香り”は、減塩しても美味しく仕上げるために重要な要素のひとつです。今回の豚汁では、ごぼうのアクを抜きすぎないようにするほか、香り豊かなごま油を使用したり、香ばしい焼きめがつくまで豚肉を炒めたり、醤油や味噌を調理の仕上げに使うことで香りを最大限に高めました。また、一味唐辛子ではなく、ごま、ゆずの皮、山椒など香り高い食材が多く使われている七味唐辛子を最後に振りかけることでの香りづけも行っています。
このように香りを十分高める調理法で、いつもより少ない味噌でも美味しくなるように工夫しています。
美味しく続ける!減塩ごはんの10箇条
その1. 旨味を活用
昆布、かつお、しいたけ、のりなどの旨味食材を活用することで、少ない塩分でも美味しく食べることができます。
その2.酸味で満足感を
酢、レモン、梅干しなどの酸味は刺激にもなり、料理にメリハリが出て塩分が少なくとも満足感の高い仕上がりになります。
その3.香りを感じられる1品プラス
レモンやすだちなど、香りのよい柑橘系を使用するほか、焼いた時の香ばしさ、温かい湯気とともに広がる香りを意識して調理をすると、満足感が高まります。
その4.スパイスで刺激をプラス
カレー粉、山椒、黒こしょうなど、スパイスを使いましょう。塩分控えめだと、どうしても始めは物足りなく感じてしまう方もいます。そんなときには、スパイスの刺激を上手に活用して、料理の味を引き締めたり、風味を引き立てましょう。
その5.とろみで味をまとめる
料理にとろみを持たせることで、舌の上に乗っている時間が長くなり、味をしっかりと感じることができます。とろみは片栗粉や小麦粉はもちろん、米やじゃが芋などの芋類でもつけることが可能です。
その6.“かける”から“つける”へ
醤油やソースを上からかけるとついかけすぎたり、必要以上に食材に染みたりすることで結果として塩分の摂りすぎに。小皿に少量の醤油(ソース)を出し、それをつけながら食べるという方法で調味料をどのくらい使ったか視覚的にもわかりやすく、塩分の調整に役立ちます。
その7.加工食品は控えめに
ソーセージやベーコンは保存性を高めるためにも、多くの塩分が含まれています。一度にたくさん食べ過ぎないように注意が必要です。
その8.献立にメリハリを
減塩すると最初は味気なく感じてしまうことも。だからこそ、食べるものすべてを減塩すると食の楽しみが半減してしまうかもしれません。まずは、メインは減塩、副菜はいつも通り、など1食の献立の中でもメリハリをつけることで、無理なく減塩を続けることができます。
その9.表示確認を習慣化
梅干し・だしパック・味噌など同じ食材でもメーカーや種類によって塩分濃度は全く異なります。まずは、買い物するとき、商品の裏側にある食品表示を見ることを習慣化しましょう。
その10.減塩商品を活用
最近は様々な商品で、減塩タイプがあります。例えば、醤油、みそ、料理酒、缶詰など。「塩分の計算が難しい」「忙しくて考えていられない!」という方は、いつも手に取っている商品や調味料を減塩タイプに変えることで、手軽に減塩生活を始めることができます。
記事情報
引用・参考文献
著者プロフィール
磯村優貴恵(いそむら・ゆきえ)
管理栄養士・料理家
大学卒業後、大手痩身専門のサロンにて管理栄養士としてお客様の身体をサポート。その際に具体的な料理提案の必要性を感じ、飲食店の厨房にて約3年間の料理修行を行う。その後、特定保健指導を経て独立。現在は、茶道教室にて茶事講座や茶事での茶懐石の献立提案~調理を行うほか、子供から大人まで家族みんながおいしく食べられて健康になれるよう、レシピ・商品開発や執筆、食育講座など幅広く活動中。
制作
文・レシピ・写真:磯村優貴恵