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2024.04.26

ツライ鼻水や鼻詰まり……アレルギー性鼻炎と慢性副鼻腔炎を鑑別するには?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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鼻水や鼻づまりに悩まされる病気のひとつとして、アレルギー性鼻炎や慢性副鼻腔炎があります。似たような症状の病気ですが見分ける方法はあるのでしょうか?

今回ご紹介するのは、Otolaryngology Head & Neck Surgery誌に、2024年1月31日付で掲載された、アレルギー性鼻炎と慢性腹腔炎の鑑別についての論文です。

▼石原先生のブログはこちら

アレルギー性鼻炎と慢性副鼻腔炎の違いは?

アレルギー性鼻炎は花粉症のように、特定の抗原タンパク質に反応して、鼻の粘膜がアレルギー性の炎症を起こし、鼻水や鼻閉などの症状が持続する病気です。鼻水や鼻詰まりが同じように生じる病気として、慢性副鼻腔炎(いわゆる蓄膿)があり、こちらは鼻の奥に繋がっている、副鼻腔という空洞に、持続的な細菌などの炎症が起こる病気です。

アレルギー性鼻炎と慢性副鼻腔炎は、症状のみから鑑別することは難しい側面があり、通常耳鼻科で経鼻内視鏡検査で確認したり、レントゲンやCT、MRIなどの検査で、副鼻腔への膿汁の貯留を、検出することで診断されます。

この2つの病気には、抗アレルギー剤やステロイド剤の点鼻薬など、共通する治療薬もありますが、アレルギー性鼻炎は専ら抗ヒスタミン剤で、鼻水を止めて様子を見ることが多く、慢性副鼻腔炎は少量の抗菌剤を継続したり、膿汁の排泄を促す薬を使用したり、重症の事例では手術療法も検討される、という違いがあります。実際に単なるアレルギー性鼻炎との判断で、市販の抗ヒスタミン剤を長期間服用していて良くならず、病状の悪化した慢性副鼻腔炎の合併例が、少なからずあることが報告されています。

慢性副鼻腔炎とアレルギー性鼻炎の頻度を検証

今回の研究では、自覚的に鼻のアレルギーの症状のある219名の一般住民を対象として、経鼻内視鏡などの精査を行ってその診断を確定し、慢性副鼻腔炎とアレルギー性鼻炎の頻度を検証すると共に、通常慢性副鼻腔炎の症状確認に施行されている、22項目の質問からなるSNOT-22という自覚症状調査票の項目と、その診断への有用性を確認しています。

その結果、鼻アレルギー症状を申告した219名のうち、91.3%に当たる200名はアレルギー性鼻炎と診断されましたが、45.2%に当たる99名は慢性副鼻腔炎とも診断されました。つまり、アレルギー性鼻炎と診断される患者さんの約半数は、慢性副鼻腔炎を併発している可能性がある、という結果です。

ここで症状質問票との対比で検討すると、鼻をかむ回数が多い、粘着な鼻水が出る、鼻が詰まる、という症状が比較的重く、軽度の味覚嗅覚障害を伴うような場合に、慢性副鼻腔炎併発のリスクが高いという結果が得られました。

アレルギー性鼻炎患者の半数が慢性副鼻腔炎も併発

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このように慢性のアレルギー性鼻炎と、自己判断している患者さんのうち、半数近くは慢性副鼻腔炎を併発している可能性があり、特にその症状から疑われる場合や、抗ヒスタミン剤の使用により改善が見られない場合には、その可能性を積極的に疑って、診断を受ける必要がありそうです。

記事情報

引用・参考文献

著者/監修医プロフィール

石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。

略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医

発表論文
・Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
・Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
・Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36
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