2024.03.14
味噌選びがポイント。生姜の風味が効いて美味しいさばの味噌煮【減塩ごはん】
厚生労働省のe-ヘルスネットによると、健康な日本人の成人男女が目標とするべき食塩摂取量は、男性7.5g未満、女性6.5g未満。でも実際の日本人の食塩摂取量の平均値は10.1gで、平均2gを上回っている状況です。さらに2024年度国民健康づくり計画『健康日本21(第3次)』からは、食塩摂取量の目標値を7g未満に定めることが明らかになっています。
塩分を摂りすぎると高血圧のリスクが高まります。日本人の3人に1人は高血圧といわれており、特に注意すべき生活習慣病です。減塩を習慣化することにより生活習慣病予防はもちろん、未来の健康づくりを行うことができるのです。
本連載『減塩ごはん』では、定番レシピを減塩しながら美味しく仕上げるレシピを管理栄養士の磯村優貴恵さんに教えていただきます。
生姜の風味が効いて美味しいさばの味噌煮
ふっくらしたさばを味噌で煮込んださばの味噌煮は、和食の定番。ふと懐かしくなる一品で、ごはんも進みます。基本の味付けが味噌なので塩分の取りすぎが心配ですが、調味料を工夫すれば、美味しく減塩可能。コツを覚えて定番のさばの味噌煮レシピをアップデートしましょう。
材料(2人分)
さば 2切れ
生姜スライス 4枚
水 200mL
日本酒 大さじ2
砂糖 小さじ1
麦味噌 大さじ1
しょうゆ 小さじ1/2
片栗粉 小さじ1/2
水 小さじ1
塩分量(1食あたり)
塩分量:1.4g
一般的なレシピの塩分量:2.0g
※このレシピは、一般的なレシピと比較すると、約30%減塩になります。
主な栄養成分(1食あたり)
エネルギー 212kcal
たんぱく質 17.6g
脂質 13.9g
炭水化物 6.2g
糖質 5.5g
作り方
1. さばの皮目に2〜3箇所浅く切り込みを入れる。熱湯にくぐらせて冷水にとり、血合いなどがあれば丁寧に取り除く。
2. 鍋に水、日本酒、砂糖と生姜を入れて中火にかけ、沸騰したら1のさばを入れて落し蓋をして5分〜6分加熱する。この時アクが出ていたらとる。
3. 器に麦味噌としょうゆを入れ、2の煮汁を大さじ2杯ほど加えて味噌を溶かし、2に戻し入れ落し蓋をして弱火で5分ほど煮る。
4. 火を止めてさばを取り出す。小さじ1の水で片栗粉を溶かし、残った煮汁に回し入れ全体を混ぜてから、再び火にかけ混ぜながらとろみをつける。
5. 器にさばを乗せ、4をかける。お好みでさっとゆでたほうれん草や小松菜などを添えれば出来上がり。
このレシピのポイント
#1 一手間かけて臭みを取り除く
さばを含む青魚は、鮮度が落ちてくると多少の臭みが出ることがありますが、湯引きをして血合いなどを取り除くことで、美味しく仕上がります。栄養面では優れていますので、面倒でも一手間かけましょう。
なお、一般的に青魚は傷みやすいとされています。鮮度の良いものを選ぶことが大前提です。
#2 スパイシーな生姜で臭み消しと香り付けの一挙両得
減塩料理で役立つのが、香りの面から満足感をプラスしてくれる風味の強い食材です。
今回のレシピでは生姜をたっぷりと使いました。生姜と青魚の組み合わせは、臭み消しに非常に優れています。また、生姜のスパイシーな風味が煮汁に溶けだすのも長所です。生姜の味が食欲をそそり、減塩料理でも美味しく食べられます。
#3 魚を取り出して煮汁にとろみをつけよう
今回のレシピでは、最後にとろみをつけました。とろみをつけるとさばと味噌ダレが絡みやすく、味に一体感が生まれます。
煮汁にとろみをつける際には、いったんさばの身を取り出すのがポイント。この一手間で、片栗粉がダマになりにくく、均一なとろみ付けが可能になります。固めに仕上げたいときは片栗粉の分量を増やしてもOKです。
【減塩豆知識】塩分濃度が異なる味噌を上手に使い分けよう
味噌は和食の中でも定番かつ万能な調味料のひとつです。味噌の原材料は基本的には大豆、米麹(または麦麹)、塩だけ。とてもシンプルです。ただ、このシンプルさゆえに減塩を心がけている方は、味噌の塩分濃度の高さが気になっているかもしれません。
味噌には様々な種類がありますが、塩分濃度で下記の3つに分類できます。
・甘味噌(塩分濃度5~7%)
・甘口味噌(塩分濃度7~11%)
・辛味噌(塩分濃度11~13%)
塩分濃度は、味噌の色が濃い方が高いイメージがあるかもしれませんが、実はそうではなく、熟成期間の違いです。まずは普段ご家庭で使っている味噌の種類や塩分濃度を調べてみてください。普段の塩分量を正確に把握することが、減塩成功への近道になります。今回のレシピでは、塩分濃度が10.4%の甘口味噌を選んでいます。
また、麹の違いもあります。今回は大豆に麦麹と塩を加えて作る麦味噌を使いました。麦味噌は、麹の甘味や麦の香ばしい香りが特徴的。減塩のために単純に味噌の使用量を少なくすると、味噌の風味も減ってしまいます。そこで、使用量はそのままに、風味豊かで塩分控えめな味噌を使うことで、減塩でも美味しく仕上げられました。
さらに手軽に減塩したい場合は、市販の減塩味噌や減塩醤油の使用もおすすめです。調味料を上手に使って、美味しい減塩料理を楽しんでください。
美味しく続ける!減塩ごはんの10箇条
その1. 旨味を活用
昆布、かつお、しいたけ、のりなどの旨味食材を活用することで、少ない塩分でも美味しく食べることができます。
その2.酸味で満足感を
酢、レモン、梅干しなどの酸味は刺激にもなり、料理にメリハリが出て塩分が少なくとも満足感の高い仕上がりになります。
その3.香りを感じられる1品プラス
レモンやすだちなど、香りのよい柑橘系を使用するほか、焼いた時の香ばしさ、温かい湯気とともに広がる香りを意識して調理をすると、満足感が高まります。
その4.スパイスで刺激をプラス
カレー粉、山椒、黒こしょうなど、スパイスを使いましょう。塩分控えめだと、どうしても始めは物足りなく感じてしまう方もいます。そんなときには、スパイスの刺激を上手に活用して、料理の味を引き締めたり、風味を引き立てましょう。
その5.とろみで味をまとめる
料理にとろみを持たせることで、舌の上に乗っている時間が長くなり、味をしっかりと感じることができます。とろみは片栗粉や小麦粉はもちろん、米やじゃが芋などの芋類でもつけることが可能です。
その6.“かける”から“つける”へ
醤油やソースを上からかけるとついかけすぎたり、必要以上に食材に染みたりすることで結果として塩分の摂りすぎに。小皿に少量の醤油(ソース)を出し、それをつけながら食べるという方法で調味料をどのくらい使ったか視覚的にもわかりやすく、塩分の調整に役立ちます。
その7.加工食品は控えめに
ソーセージやベーコンは保存性を高めるためにも、多くの塩分が含まれています。一度にたくさん食べ過ぎないように注意が必要です。
その8.献立にメリハリを
減塩すると最初は味気なく感じてしまうことも。だからこそ、食べるものすべてを減塩すると食の楽しみが半減してしまうかもしれません。まずは、メインは減塩、副菜はいつも通り、など1食の献立の中でもメリハリをつけることで、無理なく減塩を続けることができます。
その9.表示確認を習慣化
梅干し・だしパック・味噌など同じ食材でもメーカーや種類によって塩分濃度は全く異なります。まずは、買い物するとき、商品の裏側にある食品表示を見ることを習慣化しましょう。
その10.減塩商品を活用
最近は様々な商品で、減塩タイプがあります。例えば、醤油、みそ、料理酒、缶詰など。「塩分の計算が難しい」「忙しくて考えていられない!」という方は、いつも手に取っている商品や調味料を減塩タイプに変えることで、手軽に減塩生活を始めることができます。
記事情報
引用・参考文献
『八訂 早わかりインデックス 食材&料理カロリーブック』主婦の友社
著者プロフィール
磯村優貴恵(いそむら・ゆきえ)
管理栄養士・料理家
大学卒業後、大手痩身専門のサロンにて管理栄養士としてお客様の身体をサポート。その際に具体的な料理提案の必要性を感じ、飲食店の厨房にて約3年間の料理修行を行う。その後、特定保健指導を経て独立。現在は、茶道教室にて茶事講座や茶事での茶懐石の献立提案~調理を行うほか、子供から大人まで家族みんながおいしく食べられて健康になれるよう、レシピ・商品開発や執筆、食育講座など幅広く活動中。
制作
文・レシピ・写真:磯村優貴恵