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2024.04.25

脂質異常症と診断されたら…食事で気を付けるべき9つのこと

kencom公式:管理栄養士・磯村優貴恵

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健康診断でチェックが付くと気になる項目のひとつが脂質。2019年に政府が行なった『国民健康・栄養調査』によると、脂質異常症が疑われる状態の人の割合は、23.9%。成人のおおよそ4人に1人が脂質異常症予備軍であることがわかっており、多くの人が頭を悩ませている健康問題といえます。

しかし脂質といっても、いくつかの数値があります。まずはご自身の健康診断の結果をみて、どの数値が高いのか、低いのかを確認してみましょう。そして、2〜3年前と比較しながら、どのように推移しているのか確認して、今後の対策を立てましょう。

特定保健指導の経験もある管理栄養理士の磯村優貴恵さんに、脂質異常症の原因と予防法を教えてもらいます。

脂質異常症の原因と対策は?

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ひとくくりに、脂質異常症といっても、いくつかの原因がありますが、改善のためには、生活習慣や食生活の改善がとても重要です。また、脂質の検査項目の中で、どの数値が高いか、低いかによって原因が少しずつ異なります。あなたの検査結果を見ながら、自分の健康状態と行動を照らし合わせ、この記事を読んでみてください。

LDLコレステロールが高い場合

・飽和脂肪酸を含む食品の摂りすぎ(脂身の多い肉、アイスクリームや生クリームなどの乳製品など)
・コレステロールを多く含む食品の摂りすぎ(魚卵、鶏卵、レバーなど)
・エネルギー過多の食事(脂っこい食事や甘いものの食べ過ぎなど)

おやつやジュースなどを毎日食べたり、外食などで脂っこい食事が多い人は要注意。おやつの回数や量を減らしたり、ジュースや砂糖入りの飲み物を控えるなど、習慣を変える必要があります。

中性脂肪(TG)が高い場合

・エネルギー過多の食事(脂っこい食事や甘いものの食べ過ぎなど)
・お酒の飲みすぎ
・運動不足

暴飲暴食、お付き合いで外食が多い方などは今一度食生活を振り返ってみましょう。また運動習慣がない方は、少しでも歩いたり、座りっぱなしにならない工夫をしましょう。

HDLコレステロールが低い場合

・運動不足
・肥満
・喫煙

運動習慣がない方は、最寄駅から1駅だけ歩く、会社ではエレベーターではなく階段を使うなど、身体を動かすマイルールを作りましょう。同時にLDLコレステロールや中性脂肪の値にも注意をしましょう。

遺伝的要素による場合

また、脂質異常症の原因として、家族性高コレステロール血症という遺伝的要因による場合もあります。家族、親戚に脂質異常症の方が複数いる場合は遺伝的要因も考えられますので、早めに病院で検査をすることをおすすめします。

そのほかにも糖尿病の方や薬を服用している方も医師と相談の上、食事や生活習慣を整えていきましょう。

もっと知りたい!コレステロールと飽和脂肪酸のこと

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脂質異常症対策の食事では、コレステロールを多く含む食品を控えるとともに、飽和脂肪酸を多く含む食品にも注意が必要です。

食品別に見る、コレステロールと飽和脂肪酸

参考:日本食品標準成分表2020年版(八訂) 作図:kencom編集

参考:日本食品標準成分表2020年版(八訂) 作図:kencom編集

コレステロールを多く含む食品は上記の表のとおりです。比較しやすいように、100g前後になるようにしています。
例えば肉類を見ると、部位によってコレステロールの量はあまり変わらないのに対して、飽和脂肪酸の量は大きく変わってきます。逆に魚卵は、飽和脂肪酸は少なくてもコレステロールを多く含むものが多くあります。

中には粉チーズのように少量しか料理に使用しないものもありますので、その食品を排除するという考え方ではなく、普段の食事で、食べすぎているものがあれば、少し控えたり、別の食材に置き換えたりすることで、食生活の改善ができるでしょう。

コレステロールと飽和脂肪酸の摂取上限の目安

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コレステロールの多くは体内で合成されるため、食事から取り入れるコレステロールは、体内で合成されるコレステロールの3分の1から7分の1程度といわれています。

食事からのコレステロールの量が多くなったり少なくなったりすることで、肝臓でのコレステロールの合成量にも変化が見られますが、食べたものがそのまま血液中の総コレステロール値に反映されるわけではありません。なぜなら、コレステロールは体内でも合成されるからです。そのため、目標量を設定することは難しいとされていますが、脂質異常症及び循環器疾患予防の観点から過剰摂取とならないことが大切です。また『日本人の食品摂取基準(2020年版)』では、脂質異常症の重症化予防の目的から、200mg/日未満に留めることが望ましいとされていますのでひとつの目安になります。

飽和脂肪酸は、高LDLコレステロール血症の主な危険因子のひとつであり、循環器疾患(冠動脈疾患を含む)の危険因子でもあることや生活習慣病の発症予防の観点から3歳以上で目標値(上限値)のみ設定されています。その数値は18歳以上の男女ともにエネルギーの7%以下です。(例:1日に2000kcalを摂取する人であれば、飽和脂肪酸は140kcal・約15.6g以下)

生活改善!チェックリスト

生活習慣とは、私たちが日常で繰り返している行動です。毎日繰り返していることなので、何をどれくらい行っているのか、自分ではなかなか気が付きにくいものです。また、自分にとっては“普通”のことなので、生活習慣を改善する必要があるとわかっていても、何を変えたらいいのか分からず、途方に暮れてしまう方も多いのです。

ここでは、特定保健指導の経験もある管理栄養理士の磯村優貴恵さんに、脂質異常症の方が陥りやすい生活習慣をチェックリスト形式で教えていただきました。

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AからDが多い方は、まずは食生活を改善しましょう。Eにチェックがある方は、生活のリズムや運動習慣などを身につけると良いでしょう。Fにチェックがある方は、生活習慣の改善は、医師と相談の上で改善方法を見つけていきましょう。

このチェックリストはあくまでも目安ですが、ひとつでも当てはまったら「改善できることがある!」とポジティブにとらえて、取り組んでみてください。

脂質異常症の予防、改善のために。食事で気を付けるべき9つのこと

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ここからは、予防・改善のために食事で気をつけるべきことをご紹介します。脂質異常症の方はもちろん、まだ脂質異常症ではなくても、年々数値が上昇(HDLコレステロールの場合は下降)している場合は、要注意。今から食事改善を行って、正常値をキープしましょう。

1. 動物性脂肪(飽和脂肪酸)の摂りすぎに注意

肉は脂が多いために意識される方も多いのですが、実は乳製品にも多くの脂肪が含まれています。例えば、バター、生クリーム、牛乳、ヨーグルト、アイスクリーム、乳製品をたっぷり使ったお菓子など。

でもこれらの食品を必要以上に避ける必要はありません。牛乳やヨーグルトは低脂肪や無脂肪のものもありますし、最近は豆乳をはじめとしてアーモンドミルクやオーツミルクなどの植物性のミルクも選べるようになりました。肉であれば全体の量を減らしたり、脂身の少ない部位を選ぶことで摂りすぎを避けられます。

このようにちょっとした食材選びのコツを知っているだけでも飽和脂肪酸の量を減らすことができます。

2. コレステロールの多い食品の食べ過ぎに注意

レバーやモツなどの臓物系、魚卵、鶏卵などはコレステロールを多く含む食品です。たらこ(明太子)やいくらといった魚卵は食塩が多く添加されているものも多いため、食べ過ぎると塩分過多にもつながります。

3. 野菜は色の濃い緑黄色野菜をプラスして抗酸化力をアップ!

抗酸化作用を持つビタミンといえばビタミンCやE。そして特に意識して摂り入れたいのが同じく抗酸化作用を持つβカロテンを多く含む緑黄色野菜(ブロッコリー、にんじん、かぼちゃ、ほうれん草、小松菜など)です。

カット野菜は便利ですが、作る過程で洗浄されてビタミンCなどの水に溶け出やすい栄養素が流れてしまっていたり、淡色野菜にはβカロテンが少なかったりという背景もあり、できるだけ新鮮なものを自分でカットして、緑黄色野菜も意識して摂り入れることをおすすめします。

色味が綺麗な食材を取り入れることは食卓も華やかになり、気分も明るくなり、気持ちよく食事ができるというメリットも。最近は冷凍野菜も充実しているため、生鮮食品の扱いが苦手という場合は冷凍のブロッコリーやほうれん草、ミックスベジタブルなどを活用することから始めてみてはいかがでしょうか。

4. 植物性たんぱく質も上手に取り入れる

“たんぱく質=肉や卵”のイメージが先行しがちですが、これらはコレステロール値も高めです。だからといって肉や卵を食べる量を減らすと「たんぱく質が取れなくなってしまう」「食べてもボリュームがなくて物足りない…」と思われる方も多いと思います。

しかし、植物性たんぱく質の代表ともいえる大豆は畑の肉とも呼ばれるほどたんぱく質が多く含まれる食材です。もちろんコレステロールはゼロ!最近では大豆を加工し、肉のような食感を楽しめる「大豆ミート」もスーパーで手軽に求められるようになりました。

また、豆腐、納豆、厚揚げは大豆製品として認知度が高いですが、蒸し大豆、枝豆、高野豆腐や大豆もやしなども料理に使いやすくおすすめしたい食材です。

5. 噛み応えのある食材選びや切り方で早食い予防

よく噛んで食べることは満腹中枢を刺激し、食べ過ぎを予防するという観点からも大切なポイントです。血糖値が高めの方やついつい食べ過ぎてしまう方は、早食いの傾向がないか振り返ってみましょう。

また、噛むことで唾液もしっかりと出てきます。唾液にはアミラーゼというでんぷんの消化を助ける消化酵素が含まれています。口の中からすでに消化が始まっていることも知っておきましょう!

6. 青魚を取り入れる

青魚には、動物性の脂肪の中でもDHAやEPAといったオメガ3脂肪酸と呼ばれる不飽和脂肪酸が多く含まれます。これらは体内で作れないため、食事から補う必要がある必須脂肪酸で、HDLコレステロールを下げずにLDLコレステロールを減らす働きがあるといわれています。

青魚は傷みが早く、調理がむずかしいという方は市販の刺身を活用しましょう。いわし、さんま、あじ、かつおなどは旬の時期になるとカットされて刺身として店頭に並んでいますので、調理不要でそのまま食卓に出すことができます。また、魚は焼くと油が流れ出てしまったり酸化したりするという観点からも、鮮度の良いものを刺身の状態でいただくのは良い方法です。

刺身が苦手な方にはさば缶やいわし缶といった缶詰もおすすめ。缶詰をいただく際は、栄養たっぷりの油が溶け出ている缶汁も残さずに使うことがポイントです。

7. 食物繊維の摂取量を増やす

食物繊維は日本人が不足しがちな栄養素のひとつです。野菜類、海藻類、きのこ類、芋類はもちろんですが、主食である白米を玄米や麦ごはん、胚芽米に変えることも食物繊維の摂取量を増やすことにつながります。

食物繊維は腸内環境を整えたり、血糖値の上昇を緩やかにしたりと健康管理には欠かせない栄養素です。特にLDLコレステロールの上昇を抑えるためには水溶性食物繊維を含む海藻類やこんにゃく、野菜やきのこ類を積極的に取り入れましょう。

8. 塩分を控えめにする

食塩の摂り過ぎは高血圧の原因のひとつです。脂質異常症の方が高血圧になると、動脈硬化がさらに加速する恐れが。血管の健康を維持するためにも減塩を意識した食生活を心がけましょう。

9. アルコールの量を見直す

特に中性脂肪が高い方はアルコールを減らすことが必須です。お酒を飲むとついおつまみの量も増えてしまうという方は、お酒を飲む回数や、量を減らすことでそれらの摂取量も減り、エネルギー量や塩分摂取量を抑えることにもつながります。

生活習慣を変えるのは大変。でも今やらないと後悔するかも…

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今回紹介したほかにも適度な運動や質の良い睡眠も健康的な体作りには欠かせません。大切なのは正しい食習慣や生活習慣を“続ける“こと。

そのためにはまず、現在の生活(食事)を振り返ること。そして変えられることがあれば少しずつ変化を加えて、徐々に慣らしていくことが無理なく続けられるコツでもあります。

1日3回の食事は体を整えるチャンスだととらえ、真剣に向き合っていきましょう!

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引用・参考文献

著者プロフィール

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磯村優貴恵(いそむら・ゆきえ)
管理栄養士・料理家 
大学卒業後、大手痩身専門のサロンにて管理栄養士としてお客様の身体をサポート。その際に具体的な料理提案の必要性を感じ、飲食店の厨房にて約3年間の料理修行を行う。その後、特定保健指導を経て独立。現在は、茶道教室にて茶事講座や茶事での茶懐石の献立提案~調理を行うほか、子供から大人まで家族みんながおいしく食べられて健康になれるよう、レシピ・商品開発や執筆、食育講座など幅広く活動中。

制作

文:磯村優貴恵

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