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2022.10.07

ミネラルってなんだ?身体に必要な微量ミネラル【後編】

kencom公式:管理栄養士・前田 量子

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食事バランスを語る上で、ビタミンとよく並列で表現されることが多い「ミネラル」。

前編ではミネラルの定義と多量ミネラルについてご紹介しました。今回は微量ミネラルについてご紹介します。

ミネラルとは

前編の復習になりますが、ミネラルとは人体を構成する主要元素のことです。

体重の約4%を占め、約40種類存在しています。身体の調子を整えてくれる五大栄養素「炭水化物」「タンパク質」「脂質」「ビタミン」「ミネラル」のひとつで、無機質(むきしつ)と呼ばれることもあります。

ミネラルは身体の構成、生体機能の調整、酵素の構成成分や働きを助けるなど様々な働きをしています。
たとえばカルシウムは骨を作るのに大切なミネラルですが、神経伝達にも重要な働きを持っています。他にも亜鉛は味覚を正常に保つために重要ですし、カリウムは塩分の排泄を促すことで高血圧の予防に効果が期待されています。
量は決して多くありませんが、生きていく上で不可欠な栄養素です。

ミネラルは多量と微量の2種類

ミネラルの中でも比較的多く必要なものを多量(主要)ミネラル、その他を微量ミネラルとしています。

多量ミネラルはナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リンの5種類。微量ミネラルには鉄、亜鉛、銅、マンガン、ヨウ素、セレン、クロム、モリブデンの8種類があります。

今回は微量ミネラルのそれぞれの特徴をご紹介します。

微量ミネラル

機能

赤血球の中に含まれるヘモグロビンや各種酵素の構成成分で、酸素の運搬に大切なミネラルです。身体の成長、細胞機能、筋肉代謝、一部のホルモン合成などにも必要です。

摂取量の目安

1日の推奨量は18~64歳の男性で7.5mg。女性の場合は、月経のない18~64歳で6.5mg、月経のある18~49歳で10.5mg、月経のある50~64歳で11.0mgとなっています。

日本人の摂取量は不足気味とされています。
不足すると鉄欠乏性貧血をおこすことがあり、倦怠感、息切れ、集中力低下、食欲不振などの原因にもなります。特に妊婦、経血量が多い女性などは鉄が不足する傾向にあり、男性よりも女性の方が推奨量が多い珍しいミネラルです。

健康な人の場合、過剰摂取はほとんどおこりません。しかしサプリメントや医薬品などで一度に多量摂取すると、便秘や胃のムカつきなどにつながりかねないので要注意です。
また成人における長期間の過剰摂取で組織の鉄蓄積がおこると、多くの慢性疾患の発症促進に関係していることが報告されています。

そのため、耐容上限量が設定されており、18歳以上の男性で50mg、女性で40mgです。積極的にとって欲しいミネラルですが、何事も過ぎたるは及ばざるがごとしでバランスが大切です。

多く含む食材

鉄分には肉や魚に含まれるヘム鉄と、野菜などに含まれる非ヘム鉄があります。
ヘム鉄の方が吸収率が非ヘム鉄よりも約3倍高く、効率的に摂取できます。非ヘム鉄はビタミンCを一緒に摂取することで吸収効率が高まります。

鉄分は牛の赤身肉、レバー、あおのり、ひじきなどの藻類、あさり等の貝類、切り干し大根やほうれん草、水菜などに多く含まれます。
レバーが特に有名で豚、鶏、牛の中で豚レバーに一番多く含まれており、牛レバーの3倍以上にもなります。
積極的に摂って欲しい食品ですが、レバーにはビタミンAも非常に豊富に含まれています。レバーの多食によるビタミンA過剰症の報告もあるため、成人はもちろん、特に妊婦やお子さんは気をつけましょう。

もし摂るとしたら週に1度位を目安にするのが良いでしょう。

亜鉛

機能

主に骨格筋、骨、皮膚、肝臓、脳、腎臓等に存在しています。ほとんどがタンパク質と結合した形をしています。
胎児・乳児の発育に重要な役割があるため、妊婦や子どもにも大切なミネラルです。また味覚を感じる細胞や、免疫機能、細胞代謝、生殖機能にも関わり、タンパク合成や細胞分裂にも必要です。

摂取用の目安

1日の推奨量は18〜74歳の男性で11mg、女性で8mgとなっています。

不足すると皮膚炎や味覚異常、慢性下痢、免疫機能障害、成長の遅延、性腺発育障害などを誘発します。
一方で大量の亜鉛を継続的に摂取すると鉄分の吸収が阻害され、貧血、胃の不快感等がおこります。そのため耐用上限量が設定されており、18〜29歳の男性で40mg、30〜64歳の男性で45mg、18〜74歳の女性で35mgです。

通常の食生活で摂りすぎになる可能性は低いとされていますが、こちらもサプリメントなどでの大量摂取に注意が必要です。

多く含む食材

牡蠣やかたくちいわし、しらす干し、かつお節、うなぎ、カニなどの魚介類、豚レバー、牛赤身肉などの肉類などがあります。

機能

全体の65%は筋肉や骨、10%は肝臓にあります。約10種類の酵素の活性中心に存在し、エネルギーの生成、鉄代謝、神経伝達物質の産生、活性酸素の除去などをしています。

摂取量の目安

1日の推奨量は15〜74歳の男性で0.9mg、女性で0.7mgとなっています。

不足すると知能低下、発育遅延、中枢神経障害などを引き起こす恐れがあります。
過剰摂取ですぐに障害が生じることはありませんが、様々なサプリメントの使用と全死亡率との関連を検討した疫学研究において、銅サプリメントの使用が全死亡率を上昇させることが報告されています。
そのため通常の食事で摂りすぎることはありませんが、耐用上限量が設定されており30歳以上で男性女性とも7mgです。

多く含む食品

広く食品に含まれますが、牡蠣や干し海老などの魚介類、レバー、ナッツ、納豆などに多く含まれます。

マンガン

機能

25%は骨に、残りは身体全体に存在しています。金属酵素の構成成分です。酵素活性化を促進し、骨の発達や血液凝固、生殖能力、糖脂質の代謝や皮膚の代謝などに関係があります。

摂取量の目安

1日の目安量は18歳以上の男性で4.0mg、女性で3.5mgとなっています。

不足すると成長が阻害されたりすることがあります。マンガンは穀類や豆類などの植物性食品に豊富に含まれるため、サプリメントの他に、厳密な菜食主義者で稀に過剰摂取が生じる可能性があります。
また妊娠初期から中期にかけての気中マンガン上昇は、妊娠高血圧症を誘発するリスクが上昇するという報告もあります。それらの理由から耐用上限量が設定されており、18歳以上で男性女性ともに11mgです。

多く含む食品

シナモンやクローブ、カレー粉などの香辛料、紅茶や玉露などのお茶類、あおさや青のりなどの藻類、穀類、豆類等に含まれます。

ヨウ素

機能

全体の70〜80%は甲状腺にあり、甲状腺ホルモンを構成しています。生殖、成長、発達などの生理的プロセスの制御、エネルギー代謝を亢進しています。
胎児においては脳、末梢神経、骨格などの発達と成長を促しています。

摂取量の目安

1日の推奨量は18歳以上の男性女性ともに130μgです。

慢性的に不足すると甲状腺機能低下を招くおそれがあり、特に妊娠中のヨウ素欠乏はあまり望ましくありません。

なおヨウ素は昆布や海藻類に豊富に含まれているため、日本は世界でも摂取量が高いとされています。
日常的な過剰摂取は甲状腺機能の低下を招くため注意が必要です。そのため耐用上限量が設定されており、15歳以上の男性女性ともに3000μgです。

多く含む食品

昆布、ひじき、海苔などの海藻類に豊富に含まれます。

セレン

機能

抗酸化システムや甲状腺ホルモンの代謝に関係しています。

摂取量の目安

1日の推奨量は18歳以上の男性で30μg、女性で25μgとなっています。

不足すると下肢筋肉痛、皮膚の乾燥等を引き起こすことがあり、また心筋障害の原因となる克山病を引き起こすことが分かっています。
摂取しすぎると髪の毛や爪が弱くなったり、胃腸障害、神経系異常を引き起こすことがあります。そのため耐容上限量があり、18〜74歳の男性で450μg、女性で350μgです。

多く含む食品

かつおぶしやサケ節、アンコウの肝、マグロやカツオなどの魚介類に含まれています。

クロム

機能

糖質や脂質の代謝を助け、インスリンの働きを活性化すると言われています。
しかし近年は、薬以外では人体にそこまで影響を及ぼさないのでは、という意見が有力となっており、必須ミネラルかどうか検討が必要とされています。
しかしまだ必要ではないということが未確定なため必須ミネラルとなっています、

摂取量の目安

1日の目安量は18歳以上の男性女性ともに10µgとされています。過剰に摂取すると耐糖能の低下を招くことがあるため耐用上限量が設定されており、18歳以上の男女ともに500μgです。

多く含む食品

あおさや海苔、ひじき、粉寒天などの海藻類に含まれます。

モリブデン

機能

酵素の補因子として働いています。

摂取量の目安

1日の推奨量は15~74歳の男性で30μg、女性で25μgとなっています。
モリブデンの摂取に対しての健康被害報告はあまりありませんが耐容上限量の設定はあり、18歳以上の男性で600μg、女性で500μgです。

多く含む食品

大豆やきな粉など、大豆製品に含まれます。

ミネラルはバランスの良い食事から

微量ミネラルの必要量を算出するための日本人のデータは少なく、マンガン以外は欧米諸国のデータをもとにしています。

ミネラルは欠かせない栄養素ですが、摂りすぎると健康を損なうこともあります。通常の食事で過剰摂取が生じる可能性はありませんが、サプリメント等の不適切な利用により生じることが「日本人の食事摂取基準(厚生労働省)」にも記されています。

よく「バランスよく色々な食品を食べましょう」といわれますが、色々な食品から栄養素を摂取することで微量ミネラルを摂ることができ、また過剰になる心配も低くなります。
行政が出している食事バランスガイドを参考に健康的な食事を心がけてみてはいかがでしょうか。

参考:『「統合医療」に係る情報発信等推進事業』eJIM (https://www.ejim.ncgg.go.jp/)
参考:e-ヘルスネット 厚生労働省(https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/)
参考文献:『基礎栄養学 第二版』(学文社)

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前田量子

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管理栄養士 野菜ソムリエ ロジカル調理研究家。
著書『ロジカル調理』『ロジカル和食』『考えないお弁当』をはじめ、電子レンジの加熱時間や法則を書いた『ロジカル電子レンジ調理』が2022年2月に発売。調理科学で普段のもやもや悩みをすっきり解決 。スーパーの食材で本当に美味しく&家族が楽しみにしてくれる定番家庭料理を作れるようになる料理教室主宰。

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