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2023.11.03

肥満の指標!BMIよりウエスト/ヒップ比は有効か?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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肥満の指標として有名なBMIという数値は、人種により差が出てしまうのが難点なのだそう。では、BMI以外に肥満を測定できる指標はあるのでしょうか。

今回ご紹介するのは、JAMA Network Open誌に、2023年9月5日付で掲載された、肥満の指標を生命予後で比較した論文です。

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一般的な肥満の指標といえばBMI

肥満の指標として、世界的に最も広く使用されているのは、BMIという数値です。

これはキログラム単位の体重を、メートル単位の身長で2回割り算した数値で、WHOはこの数値が18.5から24.5であることを、基準値として設定していて、この数値が25.0以上を過体重、30.0以上が肥満と定義しています。日本においては、基準値の設定はほぼ同じですが、25.0以上を肥満として設定しています。

ただ、このBMIを肥満の指標とする考え方については、色々な議論があります。肥満の基準値を設定しているのは、それを超えれば健康面でのリスクが高まり、生命予後にも悪影響を与えることが分かっているからです。端的に言えば、肥満は健康寿命を縮めるからです。

しかし、BMIによる肥満の判定は、常に正しいとは言えない側面があります。特に指摘されるのは人種などの影響で、以前ご紹介した論文では、人種によりかなりの差があると報告されています。

更には同じBMIであっても、健康リスクを高める内臓脂肪の量にはかなりの差があって、その健康リスクにも差があるという指摘もあります。

ウエスト/ヒップ比という指標は有効か?

それでは、BMIより肥満の指標として、有用な測定値はないのでしょうか?

これまでに同様に使用されていた内臓脂肪の指標として、体脂肪指数(Body Fat Index)があり、これはインピーダンス法(市販の体重計などで用いられている技術)で測定されたキログラム単位の体脂肪量を、メートル単位の身長で割り算したものです。

また、お尻よりお腹の周りが大きい場合に、より腹部の内臓脂肪が増加していて健康リスクが高い、という考え方があり、それを分類する指標がウエスト/ヒップ比(WHR)で、単純にウエスト径をヒップ径で割り算した数値です。
この数値を元にして、リンゴ型肥満と洋ナシ形肥満という、分類が行われることがあります。

BMI・体脂肪・ウエスト/ヒップ比という3指標を検証

今回の研究では、UKバイオバンクという、遺伝情報を含む大規模な医療データを活用して、BMI、体脂肪指数、ウエスト/ヒップ比の3つの指標と、生命予後との関連を検証しています。

その結果意外なことに、BMIや体脂肪指数よりも、ウエスト/ヒップ比の増加と総死亡リスクとが、より強く直線的に関連していました。更にその関連はBMIとは独立に認められました。

つまり、今回の信頼のおける医療データの解析では、生命予後に限ったものですが、BMIや体脂肪指数の増加よりも、ウエスト/ヒップ比の増加の方が、より強く健康リスクの悪化と関連していたのです。

ウエスト/ヒップ比が増えると健康リスクが悪化

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今後死亡リスクのみではなく、糖尿病などの個々の疾患のリスクとの関連も、検証される必要がありますが、肥満のリスクをBMIのみで評価するという考え方は、再検討をする必要がありそうです。

記事情報

参考文献

著者プロフィール

石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36

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