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2024.03.04

SGLT2阻害剤服用中は要注意!飲酒検査で偽陽性になる場合も【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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糖尿病の治療薬であるSGLT2阻害剤を服用中に、お酒を飲んでいないのにアルコール反応が出る場合があるのだとか。

今回ご紹介するのは、the New England Journal of Medicine誌に、2024年2月8日付で掲載されたレターですが、糖尿病の経口治療薬で、尿の飲酒検査の偽陽性が検出された、という興味深い報告です。

▼石原先生のブログはこちら

お酒を飲んでいないのに飲酒検査が陽性になる?

アメリカで60代の男性が、10か月以上お酒を1滴も飲んでいないのに、行政の検査で尿にアルコールのエタノールの反応が陽性となり、主治医に連絡があった、という事例がありました。

その男性は糖尿病の治療で、SGLT2阻害薬を使用していました。

この薬は尿へのブドウ糖の排泄を促進することにより、糖尿病の病状をトータルに改善する作用を持つ、経口糖尿病治療薬です。

医療機関で迅速検査を施行したところ、尿糖は検出されたものの、尿中のエタノールやその代謝産物を含め陰性の結果でした。

何故このようなことが起こったのでしょうか?

薬の影響で体内にエタノールやアセトンが発生する

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上記レターの著者の分析では、尿検体に含まれていたブドウ糖が、細菌の酵素によって発酵し、エタノールが発生したことが要因ではないかと考えられました。

行政の検査では検体を採取してから、実際に検査をするまでにかなり時間が経っていて、その間の検体の管理も悪かったことから、そうした事態が発生したと推測しています。

それとは別個の事例ですが、2019年に日本で報告された症例報告では、57歳のタクシー運転手が、呼気のアルコール検査で陽性となり、飲酒運転を疑われたものの、実際には飲酒はしておらず、糖尿病で服用していたSGLT2阻害剤の影響ではないか、と分析されています。

これはSGLT2阻害剤の服用により、呼気のアセトンが増加するのですが、アセトンがエタノールと同じ温度帯で燃焼するため、半導体センサーのアルコール検知器では、偽陽性となってしまったのではないか、という説明になっています。

薬使用時には飲酒検査が擬陽性となることも

要するに呼気でも尿でも、アルコールの簡易検出法は、SGLT2阻害剤の使用時には、偽陽性となる可能性があり、その点は充分に理解した上で、こうした機器による飲酒検査は施行される必要があると思います。

記事情報

引用・参考文献

著者/監修医プロフィール

石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。

略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医

発表論文
・Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
・Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
・Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36
© DeSC Healthcare,Inc.

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