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2021.10.03

コロナワクチン接種後に感染してしまう人の特長と対策は?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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ワクチンを接種したのにコロナに罹患してしまった……と言う話もよく聞きます。ワクチン接種後に感染してしまうのは、どのようなタイプの方なのでしょうか。

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにkencom監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、kencom読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、Lancet Infectious Diseases誌に、2021年9月1日ウェブ掲載された、新型コロナウイルスワクチン接種後の、感染事例の特徴を解析した論文です。

▼石原先生のブログはこちら

ワクチン接種後に感染するケースの特長は?

新型コロナウイルスワクチンのうち、ファイザー・ビオンテック社とモデルナ社による、2種類のmRNAワクチンの短期の有効性が、有症状感染予防効果で95%以上と非常に高いことは間違いがありません。

ただ、それでも少ないながら、ワクチン接種者の感染事例も存在しています。

問題はワクチン接種後の感染事例に、一定の特徴があるのではないか、ということです。そうした感染事例に特徴があるのであれば、そこに重点的な対策を講じるという方法が有効と考えられるからです。

フレイルや肥満、貧困地帯の住人は要注意

今回の検証はイギリスにおいて、ワクチン接種後の感染事例の特徴を解析しているものです。

使用されているワクチンは、アストラゼネカ社とファイザー・ビオンテック社製ワクチンは主体で、少数ですがモデルナ社ワクチンの接種者が含まれています。

その結果、60歳以上の年齢層においてはフレイル(体力低下)が、ワクチン1回接種後の感染リスクを、1.93倍(95%CI:1.50から2.48)有意に増加させていました。また、貧困地域の居住者も、ワクチン1回接種後の感染リスクを、1.11倍(95%CI:1.01から1.23)有意に増加させていました。

BMI30未満は、BMI30以上の肥満と比較して、ワクチン1回接種後の感染リスクが、16%(95%CI:0.75から0.94)有意に低下していました。

ワクチン接種後の感染事例では、感染症状は軽く、無症状も多い傾向が認められました。

このように今回の検証では、体力の低下した高齢者、肥満、貧困地域の居住者で、ワクチン接種後の感染リスクが高いという結果が得られ、そうした状況の住民には、優先して追加接種を検討すると共に、ワクチン接種後であっても感染対策により心を配る必要があると考えられました。

もう少し科学的な検証が必要

これはただ文化や環境の違いもありそうですから、こうした傾向はあるにしても、日本でも同様のことが言えるかどうかは分かりません。

日本においても同様の解析は必要であると思いますし、「ワクチン接種後の感染で死亡!」というような、扇情的な取り上げ方ではなく、もっと科学的な検証が必要であるように思います。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36