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2023.08.07

50代はダイエットの最後のチャンス!?脂肪を落とすためにするべきことは…

kencom公式ライター:村岡祐菜

50代で適切なダイエットを行い余分な体脂肪をおとしておくことは、60歳以降の人生に大きく影響を与えます。若い頃のダイエットは「夏までに何キロ痩せる!」というように、主に見た目のために行うイベントだったかもしれません。50代からのダイエットは生活の質を上げるための毎日続ける正しい食生活が基本となります。

今回お話を伺ったのは、管理栄養士で『50歳からは「食べやせ」をはじめなさい』の著者である森由香子先生です。年齢を重ねて肥満を放置しておくことのリスクや、50代までに健康的な体を手に入れておいたほうがよい理由について解説していただきました。

森 由香子(もり・ゆかこ)先生

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管理栄養士/日本抗加齢医学会指導士
東京農業大学農学部栄養学科卒業、大妻女子大学大学院(人間文化研究科 人間生活科学専攻)修士課程修了。管理栄養士として医療機関をはじめ幅広い分野で活動中。管理栄養士・日本抗加齢医学会指導士の立場から食事からのアンチエイジングを提唱し、「かきくけこ、やまにさち」®食事法の普及につとめている。東京都内クリニックで栄養指導、食事記録の栄養分析、フランス料理の三國清三シェフとともに病院食や院内レストランのメニュー開発、料理本制作の経験をもつ。著書に『50歳からは「食べやせ」をはじめなさい』(青春出版社)がある。

肥満の放置は、健康寿命に影響する

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肥満を放置すると、生活習慣病をはじめとする病気になるリスクが上がると考えられています。これは体にたまった内臓脂肪が体内で悪玉物質を分泌しているため。悪玉物質は血糖値や血圧を上げたり、動脈硬化を進めたりする働きがあり、健康に悪影響なのです。生活習慣病になると、心臓病や脳疾患、腎臓病などのリスクも上昇するため注意が必要です。

肥満は生活習慣病だけでなく、関節痛も引き起こしやすくなります。体重を支えるために腰や膝に負担がかかり、関節を痛める要因になってしまうのです。年齢を重ねても健康な状態で生活するためには、ダイエットをして生活習慣病や関節トラブルのリスクを減らすことが大切なのです。

歳を重ねると太りやすくなる

どのような体型の方でも、50代に入ると途端に太りやすく、やせにくい体質になっていきます。その理由は、基礎代謝の低下です。

私たちのエネルギー消費は
・基礎代謝
・身体活動
・食事誘発性体熱産生
の3つがあります。そのうち、基礎代謝は生命を維持するために必要なエネルギーで、何もしていなくても消費します。この基礎代謝はエネルギー消費の約60%を占めており、年齢とともに自然と落ちていきます。つまりエネルギーを消費しにくい身体になっていくのです。

ですから、若い時と同じように食べてエネルギーを摂取していると、基礎代謝が低下している分、太りやすくなるというわけ。歳を重ねるごとに、基礎代謝は低下していきますので、どんどん太りやすい体になってしまうのです。

太っている人は、さらに太りやすい体の仕組みになっている

肥満体型の方は、体の中が“太りやすい仕組み”になってしまっている可能性が高いこともわかっています。

内臓脂肪が分泌する悪玉物質は、生活習慣病のリスクを上昇させるだけでなく、太りやすい体の仕組みづくりにもつながります。たとえば、満腹中枢を刺激するホルモンであるレプチンの働きを鈍らせて、満腹を感じにくくなってつい食べすぎてしまう、ということが起こります。

レプチンは満腹中枢を刺激するだけでなく、エネルギー消費を促進する作用ももっています。レプチンの働きが低下することで、エネルギーを消費しにくい体質になってしまいます。また、レプチンの働きが低下している方は、インスリンも筋肉でうまく働かなくなっている傾向があると言われており、食べ物から摂取した糖分を筋肉でエネルギーに変換する働きが弱くなっている可能性があるのです。つまり、肥満傾向の方は、レプチンやインスリンなどのホルモンがうまく働かなくなり、エネルギーを消費しにくく脂肪をため込みやすいのです。

年齢とともに、基礎代謝が落ち、太りやすくなってしまった人は、このように、ますます太りやすい体質になってしまいます。

60代からのダイエットは注意が必要

「肥満になると太りやすい体の仕組みができてしまうから、もうやせることは無理なのではないか」と悲観的になってしまいそうですが、諦める必要はありません。食事を見直したり、運動を習慣化することで、太りやすい体質から脱却することも可能です。もしも自分自身でコントロールをするのが難しいと感じたら、特定保健指導などを活用して、専門家に相談しましょう。

60歳以降のダイエットは骨が弱くなり骨粗鬆症になるなど、病気のリスクが高まると考えており、50代までよりもダイエットに注意しなければなりません。もちろん、60代以降でも減量を要するケースもありますので、その場合は専門家に相談しながら、慎重に進める必要があることを覚えておいてください。

ダイエットのラストチャンス!50代のダイエットを成功させるために必要なこと

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60代以降の健康を考えた時に、肥満を解消することは大切なことだとお伝えしてきましたが、そのためのダイエット法で、森由香子先生が提唱しているのが“食べやせ”です。

食べやせとは?

食べやせは、バランスの取れた食事を上手に摂る健康的な食習慣のことです。若い頃のダイエットのように食べる量を減らすのではなく、必要な栄養素を摂りながら、筋肉をつけて脂肪を落としていきましょう。

逆に避けるべきなのが、短期間で体重だけを落とすことを目的とした、過度な食事制限のみのダイエットです。栄養状態が悪くなり、筋肉や骨の量が減ってしまい、健康を害する恐れがあります。

結局は、体脂肪を減らすためには、栄養のバランスが取れた食事を摂り続けて、適度な運動をすること。健康的なダイエットに近道はないのです。

ダイエットはバランスの取れた食事から

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歳を重ねて行うダイエットはイベントではなく、健康的に長生きすることが目的です。体重を落とすことではなく、健康的な生活習慣を身につけることを意識しましょう。

食べやせについてのもっと詳しい内容については、森先生が執筆されている書籍に詳細が載っています。気になった方はぜひ、先生の書籍『50歳からは「食べやせ」をはじめなさい』も読んでみてくださいね。

■今回のお話を伺った森由香子先生の著書

『50歳からは「食べやせ」をはじめなさい』森由香子・著 青春出版社

『50歳からは「食べやせ」をはじめなさい』森由香子・著 青春出版社

記事情報

著者プロフィール

村岡祐菜(むらおか・ゆうな)
薬剤師・フリーライター
千葉大学薬学部薬学科卒業後、薬局薬剤師として約4年間勤務後、ライターとして独立。現在は不定期で薬局薬剤師として現場に入りつつ、医療関連のコラム制作や取材記事の制作に関わる。専門知識を一般の方にもわかりやすく伝える文章を書くのが得意。

制作

監修:森由香子
取材・文:村岡祐菜

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