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2023.05.28

60年間で1200万円以上。禁煙が及ぼす経済的影響とは?【健康とお金の最前線】

kencom公式:ファイナンシャルプランナー・山本美紀

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本連載『健康とお金の最前線』は、健康×お金にまつわるコラム。ファイナンシャルプランナー(CFP®)として活躍する、ライフプラン作成のプロである山本美紀さんに教えていただきます。

5月のテーマは、禁煙です。たばこの喫煙は健康に多大な影響を及ぼすと言われますが、家計にも大きな影響があります。特にたばこの価格は年々上昇傾向で、今喫煙されている方にとっては悩ましいところではないでしょうか。今回は改めて、禁煙によりどのくらい金銭的なメリットがあるのかをみていきましょう。

50年で6倍に?上がり続けるたばこ価格

1969年に発売開始した『セブンスター』は発売当時1箱100円でしたが、2023年3月時点で1箱600円で、なんとこの約50年で6倍となっています。

たばこの値上げの背景には、材料価格の高騰だけではなく、たばこ税が深く関わっています。

たばこ税のしくみと現状

参考資料:たばこ税等に関する資料 | 財務省https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/d09.htm

参考資料:たばこ税等に関する資料 | 財務省https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/d09.htm

たばこ税とは、嗜好品としてのたばこに科せられている税金のこと。たばこ税法により定められています。

たばこ税には
・国たばこ税
・地方たばこ税(都道府県たばこ税・市区町村たばこ税)
・たばこ特別税
の3つがあり、令和2年度に納められたたばこ税は、総額で1兆9,357億円(国たばこ税8,398億円、地方たばこ税9,837億円、たばこ特別税1,122億円)でした。

国たばこ税と地方たばこ税の違いは、集められた税金の使い道です。国たばこ税は国のために使われ、地方たばこ税は、都道府県や市区町村単位で使われます。

たばこ税は毎年少しずつ値上げされており、最近では2018年10月から5年間、段階的に増税されています。表にあるとおり、たばこ一箱価格あたりのたばこ税の負担割合は、50%を超え、消費税と合わせた税負担率は61.7%にもなります。

たばこ税の増税は避けられない

一見、高すぎるように見えますが、主要国のたばこ税負担率は5〜6割ほど。諸外国と比べてみても、日本だけが高すぎるわけではないことがわかります。

また、2022年末に行われた政府の閣議決定では、たばこ税のさらなる見直しが盛り込まれています。「3円/1本相当の引上げを、国産葉たばこ農家への影響に十分配慮しつつ、 予見可能性を確保した上で、段階的に実施する」とされており、たばこ税の引き上げによるたばこ価格の値上げは今後も続きそうです。

喫煙による経済的負担とは?

では実際、喫煙によって、どの程度の経済的負担が発生しているのか、具体的に計算してみます。

1人あたりのたばこ購入費は60年間で1,270万円

2018年にJTが行った調査によると毎日吸う人の平均喫煙本数は、男性17.7本・女性14.4本でした。たばこ1箱(19本)の値段を580円とすると(令和4年10月時点の小売価格)、

1日にたばこを1箱購入していた場合の年間の購入費は
1ヵ月:1万7,400円
1年:21万1,700円
10年:211万7,000円
となります。仮に20歳から80歳までの60年間、喫煙した場合のたばこの購入費は、合計1,270万円になります。

もちろん吸う本数や頻度によって、たばこの購入費は変わりますが、たばこ税増税が叫ばれている中、今後も家計にとって大きな負担になることは間違いありません。

たばこによる日本全体の経済損失は年間2兆500億円

2015年に行われた厚生労働省の「喫煙の健康影響に関する検討会」による調査をもとに日本医師会が分析を行ったところ、たばこが原因と考えられる病気(がん、脳卒中、心筋梗塞、認知症)にかかる医療費は、1兆6,900億円でした。

それ以外にも、歯科、受動喫煙、介護費、火災など、たばこによる経済損失の総計は、2兆500億円にのぼると推計されています。

喫煙者と禁煙者では、生涯医療費に差が出ることもわかっています。生涯医療費は、すぐに目に見えて現れるものではありません。数年〜数十年かけて、進行して気がついたときには病気になってしまっているリスクを抱えていることを忘れてはいけません。

禁煙治療費用は医療費控除の対象

健康面では「禁煙した方が良い」とわかっていても、なかなか禁煙に踏み切れなかったという方も、経済的デメリットを考えて、禁煙を決意した方には、禁煙治療の検討をおすすめします。なぜなら禁煙は、医師でも失敗するほど難しいと言われているからです。

禁煙治療は、2006年4月より健康保険適用となりました。禁煙治療は貼り薬や飲み薬を使って禁煙する方法で、施設基準を満たした施設かつ、患者基準を満たす患者さんに限定されますが、12週間に5回の禁煙治療に対して健康保険が適用されます。自己負担額は、1万3,000円から2万円程度です。

また、禁煙治療を受けた場合の医療費は、医療費控除の対象になるというのはご存知でしょうか?保険適用の治療における自己負担分はもちろんですが、自由診療(全額自己負担)で受けた禁煙治療費も、医師による治療とみなされ医療費控除の対象になります。禁煙治療を受けたら、確定申告をして医療費控除を受けることをお忘れなく。

禁煙治療に費用はかかりますが、本記事で説明したように、たばこ購入費用や健康を害した際の医療費に比べれば、長期的な費用対効果は非常に高いといえます。

記事情報

引用・参考文献

著者プロフィール

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山本美紀(やまもと・みき)
ライフデザインオフィス【想-創】代表
ファイナンシャルプランナー(CFP®)、家計整理アドバイザー。家計相談やライフプラン作成の他、ママ向けのセミナーや講座を通じて、暮らしを豊かにするための情報発信をおこなっている。正社員、派遣社員、専業主婦、そして個人事業主とライフステージに合わせて働き方を変えてきた経験からのお金とキャリアプランのアドバイスが好評。

制作

文:山本美紀

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