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2024.03.24

がん保険は必要 or 不要?2人に1人が罹る“がん”になったら必要なお金【健康とお金の最前線】

kencom公式:ファイナンシャルプランナー・山本美紀

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本連載『健康とお金の最前線』は、健康×お金にまつわるコラム。ファイナンシャルプランナー(CFP®)として活躍する、ライフプラン作成のプロである山本美紀さんに教えていただきます。

3月のテーマは、がん保険です。資産形成のなかで、保険の要否はよく話題になります。一概に必要・不要と切り分けることができないのは、その人のライフスタイルや資産状況によって、保険があったほうがいいのか、なくてもいいのかが分かれるから。あなたにとっての必要性はあなた自身が判断する必要があります。

今回はがんになったら、どのくらいのお金が必要になるのか、2人に1人が罹患するがんに備えた、がん保険に対する考え方をFPの視点からご紹介します。

日本人の2人に1人ががんに罹る時代

Adobe Stock

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国立がんセンターがん対策情報センターのデータ推計(2019年のデータに基づく)によると、日本人が一生のうちにがんと診断される確率は、男性が65.5%、女性が51.2%だそうです。つまり、がんは日本人の半分以上がかかる身近な病気です。

一方で、日本人ががんで死亡する確率(2021年のデータに基づく)は、男性が26.2%、女性17.7%と言われ、がんは不治の病ではなく、治療していく病気になりつつあることがわかります。

その際に気になるのが、がんの治療費や治療している間の生活費のこと。治療期間が長くなるほど医療費も増えることが想像できます。

日本人に多いがんの種類は?

出典:『全国がん登録 罹患数・率 報告 2019』厚生労働省

出典:『全国がん登録 罹患数・率 報告 2019』厚生労働省

厚生労働省『全国がん登録 罹患数・率 報告 2019』によると、日本人の男性で最も罹患数が多かったのは、前立腺がんです。次いで大腸がん、胃がん、肺がんの順になっています。

出典:『全国がん登録 罹患数・率 報告 2019』厚生労働省

出典:『全国がん登録 罹患数・率 報告 2019』厚生労働省

一方女性においては、乳がんの罹患数が最も多く、次いで大腸がん、肺がん、胃がんの順となっています。

がん保険とがん治療にかかる費用

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がん保険は、がんと診断された場合、入院や治療が必要な場合のお金の負担をカバーするための保険です。

どんなときにもらえる?がん保険の保障内容

個々の保険商品により保障内容は異なりますが

・がんと診断されたときの一時金
・がんの治療費
・がん治療のための入院費
・がん治療のための通院費
・がんの手術費
・がんにより収入が減った際の補填

などが保険金として受け取れます。

がんにかかるといくら必要?どんな支出があるかみてみよう

実際にがんと診断された場合、どのような出費が発生するのでしょうか。

治療にかかる費用

【公的医療保険適用】
・検査費
・治療費
・入院費
・手術費
・薬代

【公的医療保険適用外】
・先進医療
・保険適用外の薬代
・セカンドオピニオン受診費用
・民間療法など

治療以外にかかる費用

・交通費
・差額ベッド代
・食事代
・入院に必要な備品代
・(家庭の状況により)子どもを預ける費用、家事代行費用
・働けない期間の生活費

治療に関わる費用は、ある程度公的保険でカバーされますが、治療以外に必要な費用もあります。これはその人のライフスタイル、環境によってさまざまです。

罹患部位別、5年間がん治療をした場合の総医療費

実際に治療にはいくらくらいかかるのでしょうか。がんによる生涯医療費の推計と社会経済的負担に関する研究(※1)によると、9つの罹患部位別がんの5年間の平均総医療費は以下の通りです。

食道がん   567.7万円 
大腸がん   483.8万円
肝胆巣膵がん 447.3万円
肺がん    374.0万円
乳がん    250.5万円
胃がん    243.7万円
前立腺がん  196.1万円
膀胱がん   192.9万円
子宮がん   183.3万円

70歳までの自己負担は3割ですので、実際は公的医療保険制度により、上記の金額の3割が私たちが負担する金額となります。例えば、一番高額な食道がんの場合、総医療費は567.7万円ですので、自己負担額は約170.3万円です。

手厚い公的保険&手当を活用しよう

さらに日本の公的医療保険制度は医療費の負担が一定以上大きくならないように、そして治療で働けない期間の生活費を補填してくれる制度が整っています。具体的には高額療養費制度と傷病手当金です。

1. 高額療養費制度

医療機関や薬局の窓口で支払った金額が、ひと月の上限額を超えた場合に、その超えた金額を支給する制度です。ただし、入院時の食費や差額ベッド代等は含まれません。

出典:『高額療養費制度を利用される皆さまへ』厚生労働省

出典:『高額療養費制度を利用される皆さまへ』厚生労働省

例えば、年収が400万円の方(上の表のウ)が、1ヵ月で100万円の医療費がかかり、3割負担で30万円の支払いをした場合、ひと月の上限額は

80,100円+(100万円-26.7万円)×1%=87,430円

となります。したがって、一時的に30万円の支払いがあったとしても高額療養費制度を利用することで、最終的な自己負担額は87,430円になります。

これは、1ヵ月の上限額ですので、入院期間が長くなると、また支払いが増える可能性があります。しかし最近は、入院期間も短期間であることが多くなっているので、それほど心配する必要はないでしょう。非常に高額に見えたがん治療費も、この制度を利用すれば、金銭的な負担は、大きな不安要素ではなくなるかもしれません。

2. 傷病手当金

傷病手当金とは、病気やけがのために働くことができず、会社を休んだ日が3日間連続した場合、4日目から通算1年6ヵ月間、給与の約3分の2が支給される手当です(給与が発生している場合は除く)。期限はありますが、この制度があることにより、治療で働けない間の生活費をある程度補填することができます。

3. その他各健保独自の制度 

加入している健康保険組合によっては、先ほどの高額療養費制度とは別に、毎月の医療費負担の上限を決めて、これを上回った額を補填する制度がある場合もあります。

制度の詳細・条件は健康保険組合によって異なりますので、各自確認が必要ですが、このような手厚い制度があれば、医療費、さらにはがんの治療費についても、さらに不安が小さくなるかもしれません。

とりあえず入る?必要ない?がん保険が必要な人・不要な人

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ここまでの情報を踏まえた上で、がん保険の加入を検討した方が良い人はどんな人でしょうか。

・貯金額が少ない人(半年間の生活費用が準備できているかが1つの目安)
・自分が働けなくなったら、家族の生活にすぐに支障がでる人
・入院した場合には、個室を利用するなどの意向がある人
・先進治療など保険適応外の治療を積極的に受けたい人
・国民健康保険の人(※傷病手当金がないため)

以上に当てはまる方は、がん保険の加入を検討してみると良いでしょう。

逆に、上記にあてはまらず、なんとなくがん保険に加入している人は、加入しているがん保険の内容を確認した上で、本当に自分自身に必要がどうかを改めて検討する余地はあるかもしれません。

もちろん、検討した結果、がん保険に加入していることで、万が一を考えた際に安心だという心の支えの部分が大きいと判断すれば、加入する選択肢は尊重するべきだと思います。

いずれにしても「なんとなく不安だから」という理由だけではなく、今回お伝えした実際にかかる費用を知った上で、自分自身にがん保険の保障内容が必要かどうかを決めるという手順を踏みましょう。

あなたのライフスタイルにがん保険が必要か判断しよう

がんの治療には、個人差があるとはいえ、一般的には治療が長期に渡り、長期になるほど医療費がかかったり、収入が減るなど、家計に大きな影響が生じます。ただ、公的保険制度などを利用することで、医療費の負担はかなり抑えることができるのが現状。必要以上に不安になることはありません。

がん保険に入ることで、いざという時に経済的な支えになることは確かですし、安心感も得られるかもしれません。ただし、本当に必要かどうか、またどの程度の保険が必要かは、個人の家計や資産状況や、治療方針、入院環境の選択により異なります。

今回ご紹介した費用の目安を参考に、がん保険の必要性の有無、そして加入する保険内容をチェックしてみてください。

記事情報

引用・参考文献

著者プロフィール

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山本美紀(やまもと・みき)
ライフデザインオフィス【想-創】代表
ファイナンシャルプランナー(CFP®)、家計整理アドバイザー。家計相談やライフプラン作成の他、ママ向けのセミナーや講座を通じて、暮らしを豊かにするための情報発信をおこなっている。正社員、派遣社員、専業主婦、そして個人事業主とライフステージに合わせて働き方を変えてきた経験からのお金とキャリアプランのアドバイスが好評。

制作

文:山本美紀

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