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2023.02.26

550万円以上の差!予防歯科で変わる40歳からの医療費【健康とお金の最前線】

kencom公式:ファイナンシャルプランナー・山本美紀

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本連載『健康とお金の最前線』は、健康×お金にまつわるコラム。ファイナンシャルプランナー(CFP®)として活躍する、ライフプラン作成のプロである山本美紀さんに教えていただきます。

2月のテーマは、歯の健康と医療費です。2022年6月、日本政府は2025年までに、歯科健診の義務化を検討すると発表しました。これは現在、子どもと一部の職種に限られた年1回の歯科健診を国民全員に受けてもらおうという試み。

その背景には、欧米に比べ日本人は口内、歯の健康状態が悪いことが挙げられます。近年の研究では、歯の健康が健康寿命に影響を与えることがわかっており、健康寿命が伸びれば、充実した老後を楽しめるだけでなく、生涯にかかる医療費を下げることができるかもしれないのです。

歯科医療費が安く、予防意識が育たない日本

厚生労働省が発表した令和3年度 医療費動向によると、日本の総医療費は44.2兆円、そのうち歯科診療医療費は3.1兆円で全体の約7.1%を占めており、前年比4.8%増でした。

こうしてみると大きな金額ですが、実は日本で患者が負担する歯科医療費は、海外に比べ安価と言われています。それは国民皆保険のおかげ。あるデータによると、日本と海外では患者が負担する歯科医療費は10倍以上も費用が違うそうです。

費用負担が少ないことは、治療を受ける上ではありがたいことですが、一方で安価で治療を受けられるがゆえに、日本人の歯の健康を守る意識は他国に比べて低いとも言われています。海外では治療費が高いため、治療を受けなくて済むように歯を守るという“予防歯科”の意識を小さな頃から植え付けられます。

予防歯科とは「ムシ歯になってからの治療ではなく、その前の予防を大切にする」という考え方で、具体的には、歯科医院などでの定期的な健診等を通じてプロフェッショナルケアを受けることや、自分自身で行うセルフケアの両方で、意識的に健康な歯を守っていく行動のことを指します。

歯の健康と医療費の関係

予防歯科を普及させ、歯の健康を守ることと、生涯医療費は、関係ないのでは?と思うかもしれませんが、実は歯科検診を受けて歯の健康を保っている方が医科診療費が少ないという調査結果がでています。

医科診療費とは、歯科・調剤以外の医療費を指します。

出典:平成26年度香川県歯の健康と医療費に関する実態調査報告書

出典:平成26年度香川県歯の健康と医療費に関する実態調査報告書

平成26年度に香川県歯科医師会行った調査によると、歯科検診をしていない人は年間の医科診療費の平均は43.6万円で、年3回以上受診の方は36.8万円と、6.8万円の差がありました。ちなみに1度でも検診を受けている人の医科診療費平均は37万円でした。つまり、歯科検診の受診有無によって、年間の医科診療費に6.8万円もの差があったのです。

出典:平成26年度香川県歯の健康と医療費に関する実態調査報告書

出典:平成26年度香川県歯の健康と医療費に関する実態調査報告書

また、40歳以上の方を対象とした調査では、残っている歯の数と医科診療費にも関係性があることがわかっています。残っている歯が0~4本の人と、残っている歯が20本以上の人では、年間の医科診療費には、なんと18.4万円以上の差がありました。

年間で18.4万円ということは、10年間で184万円、20年間で368万円、30年間では552万円もの医科診療費に差が出る計算です。(※保険の自己負担割合により、実際の負担額はそれぞれ異なります)

上記の結果からも、歯の健康を保つための歯科受診やセルフケアは、体の全体の健康維持につながります。つまり健康維持に努めることは、生涯医療費を削減できる可能性が高まると考えられるのです。

歯を健康に保って、お金の不安も解消しよう

予防歯科は歯科医療費だけでなく、全体の医療費の削減につながります。削減できたお金は、自分の暮らしをより豊かにするため、自分の夢のためなどに使うことができます。そして何より歯の健康や身体の健康を守ることで、健康寿命を伸ばし、健康で自由に動ける人生を長期にわたって楽しむことができるのです。

人生100年時代と言われている今、自分の身体と向き合うことは非常に大切。歯や身体の健康を失う前に、少しでも早く予防歯科を習慣化しましょう。

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引用・参考文献

著者プロフィール

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山本美紀(やまもと・みき)
ライフデザインオフィス【想-創】代表
ファイナンシャルプランナー(CFP®)、家計整理アドバイザー。家計相談やライフプラン作成の他、ママ向けのセミナーや講座を通じて、暮らしを豊かにするための情報発信をおこなっている。正社員、派遣社員、専業主婦、そして個人事業主とライフステージに合わせて働き方を変えてきた経験からのお金とキャリアプランのアドバイスが好評。

制作

文:山本美紀

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