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2018.09.29

痛風の治療と、なるほど豆知識【痛風を防ぐ#4】

KenCoM公式:ライター・緒方りえ

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痛風の痛みは相当なもの。1週間くらいすればおさまるものとわかっていても、そんなに長く会社を休むこともできないのが現状です。痛風を疑ったら、我慢せずに医療機関を頼ってみましょう。
そして痛風になってしまったら、どんな治療が待っているのでしょうか。今回もインタビューに答えてくださったのは、東京慈恵会医科大学の名誉教授で慢性腎臓病病態治療学を指導している細谷龍男(ほそや・たつお)先生です。

生活習慣の改善+薬で対処

痛風での基本的な治療方法は生活習慣の改善と薬物療法です。生活習慣の改善については特集3回目を参考にしてください。ここでは薬についてお話しします。

高尿酸結晶と診断されたらすぐに薬を飲むのか

まだ結節や関節炎を起こしていなくて何の症状も出ていない(無症候性高尿酸血症)場合は、尿酸値7.0mg/dlを越えたらすぐに治療をしなくてはならいというわけではありません。尿酸値8.0mg/dlくらいまでは生活習慣を変えたりお酒の量を減らすことで、数値が10〜15%ほど改善される可能性があります。
薬を飲まなくても正常値に戻ることができる段階で対処することが大切です。

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痛風関節炎をすでに起こしている人は、関節炎がおさまってから尿酸値を下げる薬を飲んでもらいます。
逆に関節の炎症が強い時に尿酸値を下げる薬を飲んでしまうと、かえって炎症が長引いてしまうという現象が起こります。関節炎がケロっとおさまるまでの約1週間の期間は、痛み止めを飲んでしのいでもらいます。

治療に使う薬の種類

とにかく痛い痛風発作。そのため、消炎鎮痛剤は通常の倍量を飲むことが多いです。そして、化膿性関節炎でないことがはっきりしている時はステロイドを使うこともあります。

特殊な治療薬としては「コルヒチン」があります。イヌサフランと言う植物からとった薬で、痛風発作が起こる前に飲むと発作を起こさないこともあるため、非常に予防的効果が強いものです。しかし、多量に続けて服用するとほとんどの人が下痢や嘔き気といった副作用を起こすので注意が必要です。しかしながら、発作を繰り返す人にはとても良い薬と言えます。

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薬の飲み方と痛風発作への影響

実は、尿酸値が変動している時にこそ発作が起こりやすいと言えます。尿酸値が不安定な時は滑膜の表面に溜まった尿酸塩結晶がはがれやすくなり、例えるならば、ちょっと雪が溶けかけた時に起こる雪崩と同じようなことになるのです。

そのため、尿酸値を下げる薬は関節炎がおさまってから少量で始めます。少しづつ尿酸値を下げるようにすることが、痛風発作を避ける治療のコツでもあるのです。そして、薬を飲み忘れないことも非常に大切です。飲んだり飲まなかったりしていると尿酸値が不安定になり、痛風発作を起こし易くなるのでお気をつけください。

痛風に関する豆知識

さて、ここまでの説明で痛風について少し知識が深まったのではないでしょうか。ここからは、痛風に関係するみなさんの素朴な疑問にお答えします。

男性の方が圧倒的に多いのはなぜ?

男性の方が筋肉量も多くて激しい運動をすることが多いので尿酸値が高いのではないか、と昔は言われていました。しかし、最近の研究では「エストラジオール」という女性ホルモンが、腎臓での尿酸の排泄を良くするためではないかとされています。

そのため女性ホルモンの分泌が活発な閉経前の女性は、ちょっと尿酸が増えすぎても尿と共に排泄されると考えられます。実際に、閉経後になると少しづつ尿酸値が上昇してきて、70歳くらいになると男女差はなくなってきます。

関節炎は炎症だから、冷やすといいの?

確かに、炎症を起こしていて熱感がある場合は冷やした方が良さそうに思えるかもしれません。しかし、痛風の場合は少し複雑です。特集1回目でも説明しましたが、尿酸結晶は冷たくて血行の悪い部分に溜まりやすいという性質があります。そのため、冷やしてしまうとかえって状態が悪化してしまうかもしれません。足などが腫れて痛い場合は、なるべく足を高く上げて血液の流れを良くしたり痛み止めを飲むと良いでしょう。

メタボや糖尿病との関係は?

メタボの人に痛風が多いというイメージがありますが。それは比較的正しい認識です。
メタボの人は血糖値が高く、血糖値を下げるためのインスリンがたくさん分泌されると腎臓からの尿酸の排泄が悪くなります。そのため糖尿病になりかけの人は尿酸値が高くなります。

しかし、糖尿病が悪化してきて糖をどうにか身体の外に排泄しようと多飲多尿になってくると、尿酸も尿と一緒に排泄されるため一時的に尿酸値が低くなります。そして、さらに糖尿病が悪化して腎臓の機能が悪くなってくると、また尿酸が溜まってくるのです。糖尿病の糖代謝と尿酸の代謝は非常に複雑なのです。

尿酸結晶は動脈硬化になりやすい?

痛風の人の死因を調べると、脳梗塞などによることが多いと分かっています。しかし、動脈硬化などを起こす理由は尿酸塩結晶による直接的な作用だけではありません。また、尿酸塩結晶が血管のなかで溜まり積もるようなことはほとんどありません。
動脈硬化の原因は色々なことが複合的に合わさっていますが、痛風になってしまう人の生活習慣などによるものも大きいのではないでしょうか。

痛風は放置せずに病院へ!

きちんと治療をすれば、元気だったあの頃の生活を取り戻すことができる!それが痛風という病気です。生活習慣の見直しはもちろん、我慢せずに医師に相談することは痛風とサヨナラするための近道になるでしょう。薬を正しく飲めば、尿酸結晶は徐々に溶けて少なくなるのです。

■痛風をもっと知るならこちらから!

細谷龍男(ほそや・たつお)先生

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東京慈恵会医科大学 名誉教授

【プロフィール】
1974年に東京慈恵会医科大学を卒業。78年同大学院を卒業。79年より同大学第二内科講師に就任。96年には同大学第二内科助教授、97年には第二内科主任教授に就任。2000年から講座改編により、同大学内科学講座(腎臓・高血圧内科)教授に就任。2013年4月より現職。高尿酸血症に対する治療ガイドラインをはじめとしたさまざまなガイドラインの策定に携わり、同分野のリーダー的存在。

著者プロフィール

■緒方りえ(おがた・りえ)
1984年群馬県生まれ。20代から看護師として活動をする傍ら、学会への論文寄稿や記事の作成なども行う。2015年独立しフリーの編集者として活動。2017年より合同会社ワリトを設立し代表社員に就任。医療系を中心に、旅行、雑貨など幅広いジャンルでフリーライター、フリー編集者として活動中。

(撮影/KenCoM編集部 取材・文/緒方りえ)

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