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2018.09.29

知っておくべき尿酸値とプリン体の関係【痛風を防ぐ#2】

KenCoM公式:ライター・緒方りえ

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尿酸値が高いだけでは何の症状も無く、気づかないうちにジワジワと進行してしまう痛風。検査結果が引っかかっていても「そのうち少し痩せたり、そのうちお酒を控えればいいかな」と思ってそのまま放置してしまう人が多いのではないでしょうか。そんな人こそ、油断は禁物です。
今回、検査数値とプリン体について解説してくださったのは、東京慈恵会医科大学の名誉教授で慢性腎臓病病態治療学を指導する細谷龍男(ほそや・たつお)先生です。

痛風は検査結果と医師の診断が必須

まず知っておかなければならないのが尿酸値。健康診断の項目にも必ず入っている重要な数値です。
読者の皆さんは、検査結果ページで自分の数値を確認してみましょう。

ガイドラインでは7.0mg/dl以上が高尿酸血症

尿酸値は食事の影響はもちろん水分量の影響も受けるため、常時変動しています。尿酸値7.0mg/dl以上が常に続いている場合は「高尿酸血症」と診断されます。

実は、尿酸値6.4mg/dlを超えると血液中に尿酸が溢れかえっている状態(過飽和)です。人間はその状態を緩和するために、血液中の余分な尿酸をタンパクと結合させたりして尿酸塩結晶が溜まらないように働く機能が備わっています。しかし、尿酸値7.0mg/dlを越えてくるとその機能が追いつかず、尿酸塩結晶ができる可能性が高くなってくるのです。

高尿酸血症と痛風、診断の差は?

不思議だと感じている人もいるかもしれませんが、尿酸値が高い状態が続いて「高尿酸血症」と診断されても、「痛風」とハッキリ診断されない場合があります。
この診断の差は、明らかに尿酸が溜まって何らかの症状を起こしているかどうかで決まります。
具体的に説明すると、関節炎が起こっていたり尿酸結節ができている事が確認できた時に「痛風」と診断されるのです。逆に、何の症状もない場合には「無症候性高尿酸血症」と診断されます。
しかし最近では、全く症状のない初期の段階でも、超音波エコー検査などで詳しく調べると尿酸塩結晶を発見できることがあります。医学の進歩によって、この2つの診断の境目は曖昧になってきているのです。

痛風と間違えやすい病気は?

細菌感染などによる化膿性関節炎です。もしも患部の近くに傷口があったり爪周囲にササクレがある場合は、鑑別が必要になります。
場合によっては患部に針を刺して関節内から関節液を取り出し、顕微鏡で尿酸塩結晶の有無を確認。尿酸塩結晶は針のような形をした針状結晶として見えます。針を刺すのはもちろん痛いですが、もし痛風と判断された場合、その場で関節内に直接ステロイド薬を注入して治療を開始できるというメリットもあります。

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プリン体って何?を解決

最近ではプリン体をカットしたビールが流行っていたり、色々な場所で耳にするプリン体。ですが、そもそもこれはどんなものなのでしょうか? 身体の中にあってはならない邪魔者なのでしょうか?
尿酸とプリン体の関係についてご説明しましょう。

プリン体と尿酸の関係

プリン体の7割は体内で作られていて、細胞を作ったり身体を動かすために必要なエネルギー源として存在しています。そして3割ほどが食べ物などから取り込まれています。

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1つの細胞には遺伝子の情報がつまったDNAやRNAがあり、その中核をなすのが核酸。そして、その核酸を構成する成分の1つがプリン体です。
古くなった細胞が壊されて、核酸の中のプリン体も分解されて尿素として排泄されます。つまり、尿酸はプリン体を分解していった最終代謝物と言えます。

尿酸はなぜ増える?

プリン体は尿酸となり、尿酸は腎臓から75%、腸管から25%くらいの割合で排泄されます。
もしも脱水や腎臓機能の低下が起こると、尿の量が減ってしまい身体に尿酸が溜まります。そのため、水分を十分にとって尿量を確保していくことが大切。それができないまま尿酸値が高い状態が続くと、尿路結石ができたり腎臓そのものに尿酸が溜まって腎障害が起こったりします。
生活習慣は整っているのに尿酸値が7.0mg/dl以上ある人は、遺伝的に尿酸を腎臓から排泄する機能が低かったり、身体の中でプリン体を分解して尿酸をたくさん作ってしまう体質なことがあります。
また、食べ過ぎによるプリン体の過剰摂取などが原因でも尿酸は増えます。

検査数値で自分のバランスを知る

大切なのは「体内で作られるプリン体量+食べ物から摂取するプリン体量」と「腎臓や腸管からの尿酸排泄量」のバランスです。尿酸値をチェックすることで、自分の身体の状態を知りましょう。
では、そのバランスを保つためにはどうしたら良いのでしょうか。次回はそのコツをご説明します。

■痛風をもっと知るならこちらから!

細谷龍男(ほそや・たつお)先生

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東京慈恵会医科大学 名誉教授

【プロフィール】
1974年に東京慈恵会医科大学を卒業。78年同大学院を卒業。79年より同大学第二内科講師に就任。96年には同大学第二内科助教授、97年には第二内科主任教授に就任。2000年から講座改編により、同大学内科学講座(腎臓・高血圧内科)教授に就任。2013年4月より現職。高尿酸血症に対する治療ガイドラインをはじめとしたさまざまなガイドラインの策定に携わり、同分野のリーダー的存在。

著者プロフィール

■緒方りえ(おがた・りえ)
1984年群馬県生まれ。20代から看護師として活動をする傍ら、学会への論文寄稿や記事の作成なども行う。2015年独立しフリーの編集者として活動。2017年より合同会社ワリトを設立し代表社員に就任。医療系を中心に、旅行、雑貨など幅広いジャンルでフリーライター、フリー編集者として活動中。

(撮影/KenCoM編集部 取材・文/緒方りえ)

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