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2019.02.20

一歩間違うと死に至る?予兆なしで進む怖い病気 【知っておきたい脳動脈瘤#1】

KenCoM公式ライター:黒田創

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ニュースなどでご存知の方も多いと思いますが、1月に人気お笑いトリオ、安田大サーカスのクロちゃんが脳動脈瘤の治療のためにカテーテル手術を受けていた事が報じられました。それによると脳動脈瘤が直径7ミリと非常に大きくなっており、放置すると破裂してくも膜下出血の危険性が高まっていたとのこと。
この脳動脈瘤いったいどのようにして発生するのか、どんな症状が現れるかなどについて幾多の脳外科手術を手掛けたスペシャリスト、昭和大学医学部脳神経外科主任教授の水谷徹先生に伺いました。

水谷 徹(みずたに・とおる)先生

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昭和大学医学部脳神経外科主任教授。東京大学医学部卒業後、1986年に同大学脳神経外科入局 。東京都立多摩総合医療センター部長を経て2012年から現職。脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などの脳外科手術における症例数は世界でもトップレベル。脳外科手術の世界的スペシャリストと呼ばれている。

脳の血管が膨れ上がる『脳動脈瘤』の恐怖

放置すると死亡リスクを高める脳動脈瘤

『脳卒中』という言葉を聞いたことがあると思います。これは脳の血管が破れたり、詰まるなどして脳の神経細胞が侵される病気です。脳卒中は原因によって大きく3つに分類され、脳の血管が詰まる『脳梗塞』、穿通枝という細い動脈が切れる『脳出血』、脳動脈瘤が破裂して起こる『くも膜下出血』が代表的です。

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脳卒中の患者のうち、大多数の7~8割を脳梗塞が占めています。次いで脳出血、くも膜下出血と続きますが、発症時の死亡率が高いのはくも膜下出血です。
発症時、つまり脳動脈瘤が破裂すると、瞬間的に今まで経験したことがないような激しい頭痛に襲われます。その衝撃具合は「頭が割れるよう」とか「バットで殴られたよう」と言い表されるほどで、嘔吐や血圧の上昇に加え、重症の場合は急に昏睡状態に陥ることも。その時点で早期に適切な治療を行わないと、死亡率は約70%にもなってしまいます。

つまり脳動脈瘤は、一歩間違えれば死につながりかねない危険な存在なのです。また、仮に命が助かっても後遺症が残るケースが非常に多い病気でもあります。

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脳動脈瘤っていったい何?

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脳動脈瘤について、もう少し詳しくご説明しましょう。私たちの頭蓋骨の下には脳を保護するべく硬膜、くも膜、軟膜という3層の膜があります。このうち2層目にあるくも膜と、脳にくっついている軟膜の隙間に主要な血管、つまり主幹動脈が通っているのですが、ここにできる瘤状の膨らみが脳動脈瘤です。

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脳動脈瘤の多くは、動脈の分岐部付近の元々弱い構造部分の壁に血圧がかかり続けることで、風船状に作られます。これは『嚢状動脈瘤』と呼ばれ、破裂するとくも膜下出血を生じます。先天的な動脈の構造上、瘤ができやすい人もいれば、高血圧や動脈硬化など後天的な要因が関係することもあります。

このほか、分岐部ではなく脳の血管本幹が膨らんで動脈瘤ができる『本幹動脈瘤群』というのもあります。こちらは破裂するとくも膜下出血になるケース、脳梗塞になるケース、破裂しなくても徐々に大きくなって脳を圧迫するケースに分かれますが、代表的な病名は解離性脳動脈瘤です。解離性脳動脈瘤は頭痛が起こるだけで神経症状が現れなかったり、自然修復することもあります。

脳動脈瘤は日本人の約1~6%が有しているとみられます。以前東京ミッドタウンクリニックが4070名の患者さんに脳ドック診察を行ったところ、うち4.3%、176人に脳動脈瘤が見つかったという調査結果が出ました。もちろん動脈瘤のサイズはまちまちで全てが破裂するわけではありません。
しかし、年齢分布的には40~60代が多い結果を見ると40歳以降は注意する必要があると言えるでしょう。男女比では女性の方が男性よりも発生率が高いのですが、その理由はわかっていません。

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脳動脈瘤にはどんな症状が現れる?

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脳動脈瘤の難しい点は、破裂しない限りほとんどの場合症状が現れない点です。
レアケースとして、脳動脈瘤が眼球を動かす動眼神経を圧迫することで物が二重に見えたり、まぶたが開きにくくなるといった動眼神経麻痺の症状を引き起こすことがあり、それをきっかけに動脈瘤の発見に至ることはあります。ですが、ほとんどの場合は脳ドックの受診時や頭痛、めまいなど、別の症状で検査を受けて見つかるケースが多くなっています。

破裂していない状態の脳動脈瘤は未破裂脳動脈瘤と呼ばれますが、当然ながら大きくなるにつれて破裂率は高くなります。数年前に日本脳神経外科学会が日本人の未破裂脳動脈瘤の年間破裂率を調査、発表したのですが、直径25ミリ以上で破裂率は33.4%、直径10~24ミリで4.37%、直径7~9ミリで1.69%でした。ちなみに直径5~6ミリで0.50%、3~4ミリになると0.36%まで下がります。すべてひっくるめた破裂率は0.95%です。

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脳動脈瘤を知って対策しよう

確率的には100人に1人程度とはいえ、破裂のリスクを考えると早めに対処したい脳動脈瘤。
次回は検査等で脳動脈瘤が見つかった場合の治療法などについて解説します。

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著者プロフィール

■黒田創(くろだ・そう)
フリーライター。2005年から雑誌『ターザン』に執筆。ほか野球系メディアや健康系ムックの執筆などにも携わる。フルマラソン完走5回。ベストタイムは4時間20分。