メニュー

2018.09.29

尿酸値をコントロールするGood!な習慣【痛風を防ぐ#3】

kencom公式ライター:緒方りえ

記事画像

ぷはぁ〜!運動で汗をかいた後の生ビールは最高!と言うあなた、気をつけてください。喉がカラカラで山ほどビールを飲んでから倒れるように就寝。すると、早朝には足がパンパンに腫れて激痛が襲ってくる…これが痛風発作を引き起こす典型的な失敗パターンなのです。この行動、どこがいけないのでしょう?また、痛風とうまく付き合うための生活習慣のコツはあるのでしょうか。
前回に引き続き解説してくださったのは、東京慈恵会医科大学の名誉教授で慢性腎臓病病態治療学を指導されている細谷龍男(ほそや・たつお)先生です。

痛風とサヨナラするために心がけること

誰しもが、痛風発作の恐怖とはサヨナラしたいと考えていることでしょう。ここでは、痛風を予防・改善するためのコツと根拠をご説明します。

食べると良いものとpHの話

尿酸が溶けにくい条件として(特集1回目で説明した温度が低いことの他に)pHが酸性に傾くこともあげられます。
野菜や海藻は尿のpHをアルカリ性にするようなものが多いので、酸性の食べ物と一緒に摂取すると良いでしょう。
例えばお刺身を注文した時についてくるツマは、含まれる成分によって刺身の酸性を中和します。また、ステーキを食べる時はサラダも食べるようにしましょう。

治療中の患者さんには、ステーキは100gくらいの少なめにしてその代わりにサラダをたくさん食べましょうと説明しています。この食べ方は、身体に必要な食物繊維もしっかり摂れるのでダイエットにも良いですね。
また、野菜や海藻には水分が多く含まれているので、尿量を増やすことにもつながります。

控えるべき食べ物は?

一般的にモツ類やキモ類などはプリン体が多い食品と言われていますが、よっぽど好きでなければそればかりを大量に食べ続ける人はいないでしょう。野菜も含めてバランスの良い食事をとって肥満にならないようにする(あるいは肥満を解消する)と、自然と尿酸値が改善されてきます。

水分との関係は?

水分は最適な量をとるのがベストです。なぜかというと、尿量が増えれば尿酸の排泄量も増えるだけでなく、尿中にある尿酸の濃度も低くなるため結石や腎障害になりにくいからです。
脱水ではない人の尿量は1日に1.2Lほどです。しかし痛風の人は、1日に2Lくらいの尿の量が望ましいといえます。食事の時の水分摂取を普段の倍にするだけでも違います。もちろん、スポーツで汗をかく前後や尿の色が濃いと感じた場合などは適宜水分摂取を増やしましょう。
そして、脱水の時にスポーツドリンクを飲んだ方が良い理由としてpHが関係しています。スポーツドリンクは尿をアルカリ性にしますし、身体にとって必要なだけの塩分が計算されて含まれているのです。

寝起きに尿の色が濃い理由は、夜中に不感蒸泄(汗や吐息などからの水分の蒸発)が活発に行われるからです。寝ている間は水分摂取ができませんから、水分が出ていくばかりです。できれば、コップ1〜2杯の水分を飲んでから寝ると良いでしょう。

アルコールは痛風によくない?

アルコールによって尿酸値が上がるのは事実です。特に、ビールの酵母の中にはたくさんのプリン体が含まれているため飲み過ぎには注意が必要です。
そして、アルコールの作用によって身体の中で乳酸という物質が増えてきます。すると、腎臓からの尿酸の排泄が悪くなってくるのです。
さらに、たくさんお酒を飲むと細胞の中の核酸(プリン体が入っている)の崩壊が進むため尿酸がたくさん作られます。

まだ研究が進んでいる段階ですが、アルコールの中で比較的良いと言われているのは赤ワインです。ヨーロッパなど、赤ワインを飲む習慣がある地域では痛風になる人が少ないというデータもあります。
もちろん、どのアルコールも毎日飲んだりたくさん飲むことはおすすめできません。週に2〜3日の休肝日を設けてください。

記事画像

無酸素運動と有酸素運動どっちが良いの?

有酸素運動をおすすめします。
息を止めて行う無酸素運動は、体内の酸素不足が起こることで身体のpHを酸性にします。メカニズムの詳細は医学的で複雑な説明のため省略させて頂きますが、身体のエネルギーを作る過程で酸素が足りない時にプリン体を作り出す作業も進んでしまうのです。
もちろん痛風発作の痛みがおさまってきていても、関節炎が落ち着くまでは安静が第一なので運動はしないでください。

ストレスフルな生活は痛風に関係している?

実は痛風と関係しています。
大事なプレゼンの直前になって急に痛風発作が起こるなんてことはよくあります。それには色々な理由があるでしょうが、緊張することによって汗をたくさんかいたり、身体のpHが酸性に傾き易くなったり、一生懸命にプレゼンの準備をしているうちに水分摂取を忘れて脱水になったり、その他ホルモンの影響もあるでしょう。
もちろん、ストレスからくる暴飲暴食にも注意が必要です。ですから、心がリラックスする程度に少しのアルコール摂取なら良いのではないでしょうか。

痛風を予防する生活習慣

以下のことを意識して、尿酸値を下げられるような生活を目指しましょう。

記事画像

次回は「痛風治療と豆知識」についてご説明します。

■痛風をもっと知るならこちらから!

細谷龍男(ほそや・たつお)先生

記事画像

東京慈恵会医科大学 名誉教授

【プロフィール】
1974年に東京慈恵会医科大学を卒業。78年同大学院を卒業。79年より同大学第二内科講師に就任。96年には同大学第二内科助教授、97年には第二内科主任教授に就任。2000年から講座改編により、同大学内科学講座(腎臓・高血圧内科)教授に就任。2013年4月より現職。高尿酸血症に対する治療ガイドラインをはじめとしたさまざまなガイドラインの策定に携わり、同分野のリーダー的存在。

著者プロフィール

■緒方りえ(おがた・りえ)
1984年群馬県生まれ。20代から看護師として活動をする傍ら、学会への論文寄稿や記事の作成なども行う。2015年独立しフリーの編集者として活動。2017年より合同会社ワリトを設立し代表社員に就任。医療系を中心に、旅行、雑貨など幅広いジャンルでフリーライター、フリー編集者として活動中。

(撮影/kencom編集部 取材・文/緒方りえ)

この記事に関連するキーワード