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2024.04.11

脂質異常症と診断されたら…知ってるようで知らないコレステロールと中性脂肪

kencom公式:管理栄養士・磯村優貴恵

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健康診断でチェックが付くと気になる項目のひとつが脂質。2019年に政府が行なった『国民健康・栄養調査』によると、脂質異常症が疑われる状態の人の割合は、23.9%。成人のおおよそ4人に1人が脂質異常症予備軍であることがわかっており、多くの人が頭を悩ませている健康問題といえます。

しかし脂質といっても、いくつかの数値があります。まずはご自身の健康診断の結果をみて、どの数値が高いのか、低いのかを確認してみましょう。そして、2〜3年前と比較しながら、どのように推移しているのか確認して、今後の対策を立てましょう。

特定保健指導の経験もある管理栄養理士の磯村優貴恵さんに、脂質異常症の方が知っておくべきことを教えてもらいます。

脂質異常症とは?正しく知りたい血中脂質

脂質異常症ってなに?

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血液中の脂質の濃度が基準の範囲にない状態を脂質異常症といいます。血中の脂質といっても

・LDLコレステロール
・HDLコレステロール
・中性脂肪(トリグリセライド)
・non-HDLコレステロール

と、いくつかの項目があり、どれかひとつでも基準の範囲から外れると、脂質異常症となります。

脂質の値は基本的には高値になることで、健康診断の評価が悪くなりますが、HDLコレステロールに関しては低いことで悪い評価になります。脂質異常症と診断される基準値は以下の通りです。

出典:脂質異常症(基本)  | 厚生労働省 e-ヘルスネット(https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-02-012.html)
作図:kencom編集部

出典:脂質異常症(基本) | 厚生労働省 e-ヘルスネット(https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-02-012.html) 作図:kencom編集部

健康診断の結果でチェックが付いたら、基準からどのくらい離れているか、また数年前と比較してどのように数値が推移しているかもあわせて確認をしましょう。

コレステロールは身体に欠かせない存在。でも…

コレステロールと聞くと悪いイメージを持つ方も多いと思います。しかし、元々コレステロールは全身に存在しており、私たちの健康維持にとても大切な役割を果たしています。

私たちの体はおよそ60兆個もの細胞が集まってできています。その細胞のひとつひとつには細胞膜があり、コレステロールはこの細胞膜の材料となっているのです。

その他にも
・様々なホルモンの材料
・脂質の消化に欠かせない胆汁酸の材料
などの役割もあります。

コレステロールは、身体を健康に保つ上で上記のような役割を果たしているので、一定量は維持しておく必要があります。しかし多くなりすぎると、動脈硬化が進行しやすいなど、病気を引き起こす存在になってしまうのです。

悪玉コレステロールと善玉コレステロールの役割

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コレステロールは、肝臓で合成され、血液にのって全身へと運ばれていきます。血液中を移動する際はコレステロール単独ではなく、LDLやHDLといったたんぱく質と一緒に移動することとなります。肝臓から全身へと運ばれていくコレステロールがLDLコレステロール、逆に全身から回収されて肝臓へ戻るコレステロールがHDLコレステロールです。LDLコレステロールは悪玉コレステロール、HDLコレステロールは善玉コレステロールと呼ばれることもあります。

肝臓から全身へ運ぶLDLコレステロールが多すぎると動脈硬化の原因となりますし、LDLコレステロールが基準値内でもそれを回収するためのHDLコレステロールが少なすぎると結局血液中のLDLコレステロールが余分となってしまうために同じことが起きます。

つまりLDLコレステロールが多すぎるのが良くないのはもちろん、HDLコレステロールは少なすぎることでも問題となる、というのはこのバランスが崩れているサインであるということなのです。

お腹周りのぷよぷよになる、中性脂肪

中性脂肪は、トリグリセライドとも呼ばれます。中性脂肪も悪いイメージを持たれがちな脂質のひとつですが、体を動かすための重要なエネルギー源です。

私たちの体は生命を存続させるように機能するため、余分となったエネルギーは捨てずに、もしもの時のために貯蔵します。皮下に貯蔵されると、皮下脂肪と呼ばれ、例えばお腹や腰回り、二の腕などの脂肪になります。これらは、体温の維持や内臓を外部から守るプロテクターの役割を果たします。

内臓に貯蔵されると内臓脂肪と呼ばれます。これは過剰にたまると内臓脂肪型の肥満やメタボリックシンドロームの原因となりますので注意が必要です。

動脈硬化リスクを総合的に知ることができる、non-HDLコレステロール

全コレステロールからHDLコレステロールを引いた値がnon-HDLコレステロールです。中性脂肪やLDLコレステロールが含まれる血中脂質の値で総悪玉コレステロールと呼ばれることもあります。中性脂肪もLDLコレステロールも動脈硬化の原因となるため、この値が基準値を超えた場合は、注意が必要です。

健康診断の結果を今後の健康に役立てよう

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健康な状態では、血管内ではHDLコレステロール、LDLコレステロール、中性脂肪等がバランスよく存在し、流れています。しかし、脂質異常症を放置すると、脂質が血管壁にたまり、動脈硬化リスクが高まることがわかっています。健康診断の結果を受けて、何か行動しようという気持ちは素晴らしいですし、未来のあなたが病気にならないために必要なことです!しかし、やみくもに流行りのダイエット法を取り入れたり、友人が成功した健康法をそのまま鵜呑みにする前に、少し立ち止まってみてください。

まず最初にして欲しいのは、自分の身体の状態を知ること。自分の身体を正しく知って、問題に向き合うことで、自分に合った食事法や生活習慣の改善法が明確になり、健康診断の数値改善への近道にもなります。

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引用・参考文献

著者プロフィール

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磯村優貴恵(いそむら・ゆきえ)
管理栄養士・料理家 
大学卒業後、大手痩身専門のサロンにて管理栄養士としてお客様の身体をサポート。その際に具体的な料理提案の必要性を感じ、飲食店の厨房にて約3年間の料理修行を行う。その後、特定保健指導を経て独立。現在は、茶道教室にて茶事講座や茶事での茶懐石の献立提案~調理を行うほか、子供から大人まで家族みんながおいしく食べられて健康になれるよう、レシピ・商品開発や執筆、食育講座など幅広く活動中。

制作

文:磯村優貴恵

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