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2024.04.19

中年期によくある歩行時の息切れの原因は?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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中年期以降の1割~2割程度の方には、歩いているときに息切れの症状が起こるのだそう。それは一体何が原因なのでしょうか?

今回ご紹介するのは、Respiratory Research誌に、2024年3月16日付で掲載された、中年期の年齢層の息切れの原因を調べた論文です。

▼石原先生のブログはこちら

歩行時の息切れはなぜ起こる?

歩くと息が切れる、他の人と同じように歩こうとすると苦しくなる、というような症状は、中年以降の年齢では10から25%に見られる、というほど頻度の高い症状です。ただ、その原因は様々で、肺気腫や喘息のような呼吸器疾患の場合もありますし、心臓が原因のこともあります。また調べても原因が分からないこともあります。

それでは実際に「歩行時の息切れ」が見られた時、その個々の原因は、どのくらいの頻度で見られるものなのでしょうか?

歩行時の息切れの原因を調査

今回の研究はスウェーデンにおいて、心肺疾患についての疫学研究のデータを活用して、歩行時の息切れの原因検索を施行しているものです。対象は年齢が50から64歳の25948名で、同年代の人と同じような速度で歩こうとすると、息切れが生じる、というような症状もしくは、より重い息切れの症状があったのは、そのうちの3.7%でした。

検査により判明した病名との関連を検討すると、息切れに最も関連していたのは、過体重及び肥満が全体の63%(59.6から66.0)、ストレスが60%(31.6から76.8)、呼吸器疾患が29%(20.1から37.1)、抑うつ状態が22%(17.1から26.6)、心臓病が9.5%(6.3から12.7)でした。(PAF95%CI)

肥満やストレスが関係している

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このように、歩行時の息切れ症状は、肥満や過体重を伴う場合には、それによって生じている可能性が高く、通常病気として想定される、呼吸器疾患や心臓疾患の関与は、それほど大きなものではありませんでした。

勿論鑑別診断としては、呼吸機能や心機能などの検索は行われるべきですが、息切れの多くは、むしろ肥満やストレスが関連しているという、今回の調査結果は非常に興味深く、今後日本でも同様の検証が行われることを期待したいと思います。

記事情報

引用・参考文献

著者/監修医プロフィール

石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。

略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医

発表論文
・Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
・Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
・Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36
© DeSC Healthcare,Inc.

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