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2021.02.28

新型コロナに一度罹ると、再感染はしないのか?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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毎日のように新規感染者のニュースが流れ、今なお猛威を振るう新型コロナウイルス。一度罹れば二度と罹らないかと言うと、そうでもないようです。

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにkencom監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、kencom読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、査読前の論文を公開しているmedRxivに、2021年1月26日ウェブ掲載され29日アップデイトされた、新型コロナウイルス感染症の再感染率を検証した論文です。

非常に興味深い内容で、多くの方が今持っている疑問に答える内容ですが、査読前であることには注意が必要です。

▼石原先生のブログはこちら

既感染者の再感染率はどのくらい?

新型コロナウイルス感染症の免疫が、どのくらいの期間持続され、実際に既感染者はどのくらいの期間は再感染しないのか、という疑問は誰でも持っていながらまだ明確な結論が出ていない問題です。

中和抗体を分析した研究では、6か月くらいは持ちそうというのが一般的な見解かと思いますが、無症状や軽症でも同程度の免疫が誘導されるのか、それとも軽症や無症状では再感染率が高いのか、というような点についてはデータは不足しています。

アメリカで、3000人超の新型コロナ抗体価と感染の有無を調査

今回の研究では、アメリカ海兵隊の新兵訓練基地において、3249名の新兵の新型コロナウイルス抗体価とRT-PCR検査を施行。2週間の隔離期間をもうけた後に、訓練を行いつつ6週間の経過観察を行なっています。

抗体はウイルスのスパイク蛋白に対するIgG抗体価が、一定レベルを超えたものを陽性と判定しています。RT-PCR検査は1週間に1回継続されています。

この3249名中、登録時に28名はRT-PCR検査が陽性で、2週間の隔離期間中に2度のRT-PCR検査を再施行し、45名が陽性と確認されています。結果として登録されたのは3076名で、2週間における3回のRT‐PCR検査で、連続して陰性の隊員のみが参加しています。

抗体が陽性だと感染が抑制され、再感染は起こりにくい

その結果、初回の検査で抗体陽性であった189名のうち、6週間の間に10.1%に当たる19名が、RT-PCR検査で陽性を確認。その一方で初回の検査で抗体陰性であった2247名では、6週間の間に48.0%に当たる1079名が、RT-PCR検査で陽性と確認されました。

事前の研究の想定でどうであったかは分かりませんが、結果的には訓練地でクラスターが発生したことになります。

上記の結果より、抗体が陽性であると陰性に比較して、感染率は82%抑制された、ということになります。(95%CI:0.11から0.28)この抗体陽性の被験者では、抗体価が低いほど再感染は起こりやすく、抗体陰性の被験者と比較して、ウイルス量は10分の1と少なく、ウイルス検出期間も短い傾向が認められました。

抗体陽性者の再感染では、より無症状感染が多いという傾向も認められました。中和抗体による検証では、再感染した19名のうち中和抗体が陽性であったのは6名だったのに対して、再感染しなかった54名のうち、45名は中和抗体が陽性でした。

とはいえ、集団免疫のためには既感染者もワクチン接種を

このように、血液中の抗体価が陽性であると、確かに再感染は起こり難いのですが、10人に1人は今回のデータでは感染が確認されています。更には、特に無症状や軽症の感染では、抗体上昇は少なく、中和抗体の上昇も伴わないことが多いと推測されました。

従って、無症状や軽症の感染では、その後短期間に再感染する可能性も決して低くはなく、何度も感染しなから周囲に感染を広げている、という可能性も否定は出来ません。

これが新型コロナウイルス感染症の厄介な点の1つで、既感染者であっても軽症や無症状であれば、ワクチン接種を行なわないと、集団免疫の確立には至らないという可能性があるのです。

こうしたデータの蓄積を元にして、ワクチン接種者の選定を含め、有効性の高い感染収束への道筋が作成されることを期待したいと思います。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36