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2022.03.31

睡眠時間を延ばすだけの「睡眠ダイエット」は実現可能!?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生  

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睡眠不足が肥満のリスクになることはよく知られていますが、逆に睡眠時間を延ばせば、体重は減らすことはできるのでしょうか?

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにkencom監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、kencom読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、JAMA Internal Medicine誌に、2022年2月7日ウェブ掲載された、睡眠を延長することによる肥満改善効果についての論文です。(※1)

▼石原先生のブログはこちら

有効なダイエット方法とは

肥満は多くの生活習慣病の原因となり、肥満の改善は糖尿病や肝臓病など、多くの病気の予防になることは、多くの精度の高い臨床データによって、実証されている事実です。

ただ、たとえば国際的には過体重と呼ばれる、BMIが25.0から29.9の軽度肥満の状態において、どのようなダイエット(体重減少法)が有効であるのか、というような点については、まだ明確な指針がないのが実際です。

ダイエットのための生活習慣と言うと、食事と運動が重要であるという点については、科学的にも一般的にも見解は一致しています。

睡眠不足が肥満のリスクになる?

しかし、それ以外に、肥満の改善や予防に関連を持ちながら、あまり触れられることのない生活習慣があります。

それが睡眠時間です。

不眠や睡眠時間が短いことが、過体重や肥満のリスクとなることは、多くの疫学データにより確認されています。2019年のメタ解析の検証では、睡眠時間が1時間短くなると、肥満のリスクが9%増加する、という結果が報告されています。(※2)

それでは、睡眠時間が短い過体重や肥満の人に、睡眠時間を長くするような介入を行うと、それは肥満の改善や予防につながるのでしょうか?その点についての精度の高いデータは、これまでにあまり存在していませんでした。

睡眠によるダイエット効果を検証

そこで今回の研究では、アメリカの単独の専門施設において、BMIが25.0から29.9という過体重もしくは軽度肥満の状態で、年齢が21から40歳、2週間の睡眠時間調査で平均の睡眠時間が6.5時間未満の80名に、エネルギー消費量や基礎代謝量などの測定を施行。

8.5時間を目標として、睡眠時間を長くするための指導を行い、それを2週間継続した後に、エネルギー消費量などの再測定を行って、睡眠による代謝への効果を検証しています。

その結果、睡眠時間を延ばすための指導により、睡眠時間は平均で1日1.2時間延長。それによりエネルギー摂取量は1日当たり270キロカロリー減少しました。

短期間であるのでそれほど体重自体には変化はありませんでしたが、この代謝の変化がそのまま持続すると仮定すると、3年間で体重が12キロ減少するダイエット効果が得られる、という推計が認められました。

睡眠時間が長くなるだけでも減量効果が

このように、単純に睡眠時間が長くなるだけで、代謝のバランスが改善して減量効果が得られる、という今回の結果は非常に興味深く、今後「睡眠ダイエット」が、科学的にも推奨されるような流れになるかも知れません。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36