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2024.02.16

原因不明の体重減少は病気のサイン?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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ダイエットをしていないのに急に痩せ始めたら、悪い病気ではないかと疑いたくなりますよね。

今回ご紹介するのは、JAMA誌に2024年1月23/30日付で掲載された、体重減少と癌リスクについての論文です。

▼石原先生のブログはこちら

急に痩せたら病気を疑う?

急に心当たりがないのに体重が減ると、何か悪い病気が隠れているのではないか、と心配をされる方は多いと思います。その場合の「悪い病気」というのは、通常は癌のことですテレビやネットなどで、有名人が急に痩せたのを見ると、「あの人は癌なんじゃないか」というような噂が広がることが多いのも、そうした考え方が一般に広がっていることを、示しているように思います。ただ、実際には体重減少の原因は癌だけではなく、たとえばストレスや糖尿病、甲状腺機能亢進症などでも、比較的急激な体重減少が起こることがあります。

実際に予期せぬ体重減少が見られた場合、それが癌である可能性はどの程度のものなのでしょうか?これまでに体重減少が癌の症状として見られた、というような報告は勿論多数ありますが、実際に体重減少そのものが、どの程度その後の癌リスクに結びついていたのかを、多数の事例で検証した報告は、実際にはこれまであまりありませんでした。

原因不明の体重減少が癌に与える影響を検証

今回の研究はアメリカにおいて、有名な医療従事者を対象とした疫学研究のデータを活用して、2年間における体重減少が、その後12か月の癌の診断に与える影響を、体重減少がない場合と比較して検証しているものです。

対象は年齢の中間値が62歳の医療従事者、トータル15474名です。平均で28年という長期の経過観察が施行されています。

その結果、それ以前の2年間に10%を超える体重減少があると、その後12か月に癌と診断されたのは、年間10万人当たり1362件であったのに対して、体重減少のない場合は869件で、体重減少があると癌の事例は、年間10万人当たり493件増加していました。(95%CI:391から594)

特にダイエットや運動習慣がないのに体重減少のあったケースに限ると、2年に10%を超える体重減少後に癌と診断されたのは、年間10万人当たり2687名であったのに対して、体重減少のないコントロール群では、年間10万人当たり1220件で、体重減少があるとこうした運動習慣などのないケースでは、癌の事例は年間10万人当たり1467件増加していました。(95%CI:799から2135)

こうした体重減少後に診断される癌で、最も多かったのは上部消化管由来の癌(食道、胃、胆道、肝臓、膵臓癌)で、2年に10%を超える体重減少のあった場合、こうした癌は年間10万人当たり173件報告されているのに対して、体重減少のない場合の報告は36件で、その差は年間10万人当たり137件でした。(95%CI:101から172)

ダイエットしていないのに痩せたら要注意

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このように、特に2年で10%を超えるような体重減少は、その後の癌診断のリスクを高めていて、癌の種類としては上部消化管由来の癌が多く、特にダイエットを目標とした生活をしていないのに、体重減少が見られた場合には、より注意を要すると考えておいた方が良いようです。

記事情報

参考文献

著者/監修医プロフィール

石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。

略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医

発表論文
・Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
・Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
・Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36
© DeSC Healthcare,Inc.

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