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2023.08.01

この20年で早期の乳癌の死亡率はどう変わった?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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医学の進歩のおかげで、以前は死亡率が高かった病気も治るようになってきました。乳癌もそんな病気の一つです。

今回ご紹介するのは、British Medical Journal誌に、2023年6月13日ウェブ掲載された、限局性の乳癌の予後が、この20年でどのように変化したかを検証した論文です。

▼石原先生のブログはこちら

医療の進歩により早期の乳癌の死亡率は低下

治療の進歩や検診などの普及により、遠隔転移を伴わないような比較的早期の乳癌の予後は、改善していると言われています。

ただ、乳癌の死亡率がその間にどの程度低下したのかについての、精度の高いデータはそれほど存在していません。

毎年の早期浸潤乳癌の死亡率を比較検証

今回の研究ではイギリスにおいて、国の登録システムを活用し、1993年から2015年の個々の時期における、早期の浸潤乳癌の死亡率を比較検証しています。

トータルな登録患者数は512447名です。

この場合の早期浸潤乳癌というのは、癌が乳腺内に留まっているか、癌が小さく腋下のリンパ節転移までに留まっているもので、病期のⅠ期とⅡ期に相当しています。

診断された時期を、1993から99年、2000から04年、2005から09年、2010から15年の、4期に分けて検証したところ、診断後5年の死亡率は、1993から99年の時期では14.4%(95%CI:14.2から14.6)であったのに対して、時期が進むにつれ徐々に低下し、2010年から15年には4.9%(95%CI:4.8 から5.0)となっていました。

癌の性質によってはまだ死亡率が高いものも

このように治療の進歩や早期発見の増加により、乳癌の生命予後は大幅に改善していますが、癌の性質や病期によってはまだ死亡率が高いケースもあり、今後もこうした情報がアップデートされることを期待したいと思います。

記事情報

参考文献

著者/監修医プロフィール

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36