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2020.04.21

新型コロナウイルスに感染しやすい血液型とは【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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ノロウイルスのように、血液型によって感染しやすさが変わる病気があります。新型コロナウイルスはどうなのでしょうか。

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにkencom監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、kencom読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、これは2020年4月11日にmedRxivに掲載された査読前の論文です。
medRxivというのはまだ査読前の論文を保存しているサーバーで、今回のものはその重要性から、その時点で公開されているものです。

査読を受けてチェックされた論文ではないので、その内容の信頼性は、現時点ではそれほど高いものではない、という点には注意が必要です。皆さんもその点はよくご理解の上お読み下さい。

▼石原先生のブログはこちら

新型コロナウイルスに感染しやすい血液型がある?

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の疫学には、男性にやや多く発症しているなど、
まだ明確な理由の分かっていない臨床上の特徴があります。そのうちの1つが、血液型と発症リスクとの関連についての知見です。

ウイルス感染と血液型と言うと、ノロウイルス感染症が有名です。
ノロウイルスは腸管の血液型抗原に結合するので、非分泌型では感染しにくいという性質があり、またそのタイプによっては、特定の血液型で感染しやすさに差があります。

今回の新型コロナウイルスに関しては、3月27付のmedRxivに中国での疫学データの解析結果が報告されていて、それによると血液型がA型であると、感染が起こり易く、O型では起こり難い、という結果になっていました。

感染者はA型とB型に多く、O型は少ない

今回の研究はニューヨークにおいて、1559件の新型コロナウイルスPCR検査データ(陽性682件)を、血液型毎に解析して、その傾向をみているものです。

その結果、血液型がA型であると、そうでないより感染のリスクは、1.338倍(95%CI: 1.072から1.672)有意に高く、血液型がO型であると、そうでないより感染のリスクは、20%(0.804;95%CI: 0.654から0.987)有意に低くなっていました。
これはいずれもRh陽性のみで成り立つ所見でした。

一般住民の分布と比較して、新型コロナウイルス感染症の患者は、A型とB型は多く、O型は少なくなっていました。

ただ、血液型と病気の重症度や死亡リスクとの間には、有意な関連はありませんでした。

ニューヨークの調査でも同じ結果に

このように、中国のみならずニューヨークの解析でも、新型コロナウイルス感染症がA型に多く、O型に少ないという傾向は認められていて、その理由は現時点では不明ですが、そうした現象のあること自体は、ほぼ事実と言って良いようです。

今後感染メカニズムなどの知見がより蓄積されれば、その原因もまた明らかになるかも知れません。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36