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2022.07.14

夜勤を含む交代勤務はどれくらい健康に影響するか【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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病院や介護施設をはじめ、コンビニやガソリンスタンドなど、昼夜問わず仕事が発生する勤務先では、どなたかが夜勤に入らなくてはなりません。そんな不規則な勤務体系は健康に影響しないのでしょうか。

今回ご紹介するのは、JAMA Network Open誌に、2022年5月4日ウェブ掲載された、夜勤を含む交代制勤務が健康に与える影響についての論文です。

▼石原先生のブログはこちら

交代制勤務はどれくらい健康に影響するか

夜勤と昼勤、早出、遅出などを不規則に繰り返す、交代制勤務は、医学的には健康面での悪影響が指摘されています。

夜勤を含む交代制勤務は、正常なホルモンなどによる日内リズムを乱し、睡眠障害や他の精神疾患、認知機能低下、慢性内臓疾患などのリスクを高め、生命予後にも悪影響を与えることがこれまでの疫学研究などにより報告されています。

WHOの専門部会は、発癌のリスクにもなり得るという報告もしています。

ただ、そうしたデータの多くは比較的短期間のもので、長期の夜勤を含む交代勤務がその後の健康にどのような影響を与えるのかについては、データは限られているのが実際です。

夜勤のある看護師の大規模データで検証

今回の研究はこうした交代勤務の職種として代表格でもある、看護師の大規模疫学データを活用して、夜勤を含む交代勤務の長期の影響を検証しています。

対象は46318名の女性看護師で、24年という長期の健康観察を施行し、70歳の時点で明確な記憶障害や身体障害がなく多くの慢性病にも罹患していない状態を健康な加齢として、その頻度を比較検証しています。

その結果、夜勤を含む交代勤務をしていない看護師に比較して、10年以上そうした勤務をしていると、健康な加齢の比率が21%(95%CI:0.69から0.91)有意に低下していました。

それより短い勤務でもそうした傾向は認められましたが、統計的には有意ではありませんでした。

ここで認知機能低下も健康な加齢の除外要素として検討すると、10年以上の夜勤を含む交代勤務は、健康な加齢の比率を27%(95%CI:0.60から0.89)、有意に低下させていました。

交代勤務は健康長寿には悪影響

このように、短期的な影響ばかりでなく、夜勤を含む交代勤務は、健康長寿の阻害要因ともなっている可能性があり、今後こうした勤務をどのように考え、その健康への悪影響を、どのようにして修正するべきなのか、より深い議論が必要であるように思います。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36