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2022.09.08

ビタミンDサプリメントに骨折予防効果はある?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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ビタミンDは骨の健康を維持するために大切な栄養成分です。もし、健康な人がサプリメントでビタミンDを摂ると、さらに骨が強くなるなどの効果はあるのでしょうか?

今回ご紹介するのは、the New England Journal of Medicine誌に、2022年7月28日掲載された、サプリメントとしてのビタミンDの、骨折予防効果についての論文です。

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ビタミンDサプリの骨折予防効果は?

ビタミンDはカルシウムの腸管からの吸収を促進し、骨の代謝にも多くの影響を与えて、骨の健康には必要不可欠な栄養素です。その欠乏が骨代謝に悪影響を与えることも分かっています。

そのために、骨折予防などの謳い文句で、ビタミンDのサプリメントは、単独もしくはカルシウムなどとの抱き合わせで、市販もされ多くの人が利用しています。

ただ、サプリメントを使用される方の殆どは、ビタミンDの高度な欠乏などはない人です。そうした一般の人がビタミンDを食事以外に摂ることで、骨折予防などの効果が得られるのでしょうか?

ビタミンDサプリの健康効果を調査

今回の研究はアメリカにおいて、ビタミンDとオメガ3系脂肪酸の健康効果を調査した、臨床研究のデータを活用して、偽薬と比較した、ビタミンD(1日2000IU)の骨折予防効果を検証しています。

対象はビタミンDの欠乏や骨量の減少、骨粗鬆症などのない、50歳以上の男性と55歳以上の女性、トータル25871名です。中間値で5.3年の観察期間中に、1991件の骨折が確認されています。

そして、ビタミンDのサプリメントは偽薬と比較して、トータルな骨折のリスクについても、個別の部位の骨折のリスクについても、明確な予防効果を示していませんでした。

骨折の予防効果はない

これは最近の同種の複数の研究とも一致する結果で、明確なビタミンDの欠乏のない人では、ビタミンDのサプリメントを使用しても、骨折を予防する効果はないと、もうそう言い切っても誤りではないように思います。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36