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2023.10.21

歩く前に怪我防止ストレッチ。足関節・股関節の柔軟性を高めよう【簡単!身体メンテ】

kencom公式:理学療法士・石田佑也

筋肉や関節の柔軟性を高めることを目的にした運動をストレッチングといいます。有酸素運動や筋力トレーニングとは違って、生活習慣病やメタボリックシンドロームの予防に効果的かどうかはまだエビデンスが十分ではないですが、習慣的なストレッチやヨガが血圧低下につながったり、柔軟性の高い人は動脈硬化になる確率が低いことがわかっています。またストレッチ以外にも、セルフメンテナンスで身体のコリや疲れを緩和することも重要です。

本連載『簡単!身体メンテ』では、理学療法士の石田佑也さんに体の悩みを解消するセルフメンテナンスの方法を教えてもらいます。

怪我をしないでウォーキングを続けるために

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ウォーキングは初心者にも取り組みやすい運動ですが、足裏や膝が痛くなって数回で断念した方もいるかもしれません。普段運動をしない人が急に体を動かすとよく起こることです。秋になり、涼しくなった今こそ運動を始めたいという方は、まず運動をする基礎作りが大切です。そして、せっかくウォーキングを始めるのであれば、怪我をせず、しっかりと継続していきたいものです。

今回はウォーキングを怪我なく継続するために欠かせないストレッチを紹介します。

ほとんどが同じ理由だった。ウォーキングで怪我をするワケとは?

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ウォーキングは激しい運動ではないのに、足を痛めてしまう人がたくさんいます。その理由はほとんど同じで、ウォーキング前にしっかりストレッチを行うなど動く準備ができていないからです。

近年、すべてのスポーツにおいて、ウォーミングアップや準備体操は行うべきものと認識されるようになってきています。ウォーキングも同じで、激しい運動ではありませんが、身体に刺激を入れるものなので、準備運動は欠かせません。

ウォーキング前には股関節と足関節の柔軟性を高めよう

準備運動の中でもとくに大事なのは、股関節と足関節の柔軟性を高めるストレッチです。股関節は太ももの付け根あたり、足関節は足首付近を指します。

ウォーキングの動きでは、股関節と足関節の柔軟性が低い場合、膝や足に負荷がかかりやすくなります。歩く動作は、基本的には繰り返しの動作。そのため、意識せずとも継続的に負担をかけてしまい、気づいたら痛みが出てしまっていることもめずらしくありません。

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では、股関節と足関節にはどのような柔軟性が必要なのかみてみましょう。

【股関節に必要な柔軟性】
・開いたり閉じたりする動き(回旋動作)
・脚を後ろに引く動き(伸展動作)

【足関節に必要な柔軟性】
・足を反らせる動き(背屈動作)
・踵を上げる動き(底屈動作)

股関節、関節部は球状になっていて、さまざまな方向に動きます。ウォーキングをするときも、股関節が自由に動くことではじめてスムーズに“歩く”ことができるのです。

実は回っている股関節

歩行動作の時に股関節は前後に動くだけでなく、内外にひねる動きもあります。股関節を外側にひねると、膝も外側に周り、つま先も外側に向きます。

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しかし、股関節が前後にしか動かない場合、ペンギンのようなよちよち歩きになります。

©️yuya ishida

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回旋に制限があると、別の関節が代わりに動く代償動作をせねばなりません。つまり、股関節や足関節の動きが悪くなると、骨盤や膝が使われ、歩いている時に膝に負荷がかかり内側や外側にブレてしまうのです。

膝関節周囲の筋肉や靭帯がその横ブレを制御しますが、何度も続けばそこに負担がかかり続け、痛みが起きます。膝の内側の痛み、膝の外側の痛みなどは、こうしたメカニズムで起こると考えられます。

伸ばす動作も同様で、蹴り出すための可動域が少ないと別の動きで代償することとなり負荷がかかります。

これらの大きな原因は内転筋や腸腰(ちょうよう)筋などの筋肉の硬さです。デスクワークや座位での作業が続いていると、腿はずっと荷重がかかって血流不良で硬くなっています。この時、股関節の前面は常に曲がっているので、血流が詰まっている状態にあります。

この状態のままウォーキングをしようとすると、股関節はなかなか自由に動いてくれません。つまり、ウォーキング前にしっかりとストレッチをしてあげることが大事なのです。

硬い足首は危険。しっかり動くかチェックしよう

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足関節に関しては、歩く時に足関節に大きく2度背屈する必要があり10度ほど可動域がある必要があると言われています。

足首が硬いことを自覚している方も多いですが、足首が動く範囲が10度以下の場合、身体を真っ直ぐ前に運ぶことができないため、別の関節で代償動作が起こります。

足首が動かない原因の多くは、アキレス腱や下腿三頭筋などのふくらはぎにつく筋肉の硬さにあります。ふくらはぎにつく筋肉は、底屈という足首を下に向けたときの動きを使った蹴り出しにも影響します。ですから、足首の柔軟性が失われていると足部の動き全体が悪くなります。ですから、背屈を中心に足部全体をしっかり動かしておく必要があるのです。

ウォーキングを始める前に。怪我をしないためのストレッチ

実際にウォーキングを行う前に、足を怪我しないために、これだけはやってほしいストレッチやエクササイズを2つご紹介します。もちろん他のストレッチもやったほうがいいので、余裕がある方は下記の記事も参考にしてください。

#01 股関節の可動性を高める

©Yuya Ishida

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【やり方】
1. 床に左膝をつき、右足は膝を立てる。左手は腰、右手は膝に当てます。
2. 右手で膝を押して誘導しながら足を内側へと倒します。倒した時に内腿が少し伸びる感じがあればOK。
3. 外側へ手で広げるように押しながら膝を開きます。開く・閉じる動作をテンポよく10回繰り返し、反対側も同様に行いましょう。

左右各10回1セットとして、1日3セット行いましょう。

できるだけ大きく動かすことで股関節周りの筋肉が伸びて柔軟性が高まります。上半身が丸くならないように姿勢は真っ直ぐを意識しましょう。

#02 足関節底屈・背屈

©Yuya Ishida

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【やり方】
1. 足先をまっすぐ前に向けて、段差のある場所に立ち、足裏の後ろ側半分を浮かせます。
2. 足指で地面を掴むように力を入れて、踵を最大限上げ、1秒キープします。
3. ゆっくりと踵を下ろし、段差より下の位置まで下げます。急に下ろすとアキレス腱に負担がかかるため、ゆっくり下ろしてください。

1セット10回として2セット行いましょう。

足を上下に動かすことでふくらはぎの筋肉の滑りが良くなり、柔軟性が高まります。ふくらはぎがつりそうになったら、無理に行わず、かかとを下ろすだけにしましょう。ステップがない場合は、階段や小さな段差のある場所で行います。ただし、不安定になりやすいので、壁に手をあてた状態で行いましょう。

簡単ストレッチを取り入れて、怪我のないウォーキングライフを

今回紹介した2つのストレッチは、それぞれ5分以内にできる手軽なエクササイズです。ウォーキングする前の準備運動として習慣化しましょう。

ウォーキングは無理なく始められ、健康づくりに適した運動です。せっかく始めたウォーキングを「膝が痛くなった」「足首が痛い」などの理由でやめてしまってはもったいない!体を動かす前に準備をするだけで、ウォーキングの怪我リスクを軽減できます。

風景を眺め、季節のうつろいを感じられるウォーキングを楽しむために、運動前のストレッチ習慣を身につけましょう。

記事情報

引用・参考文献

著者プロフィール

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石田佑也(いしだ・ゆうや)
理学療法士・ランニングシューズマイスター・医療美容系ビデオグラファー
「1分1秒ベストなコンディション」をテーマに東京・神奈川を中心にアスリートからビジネスパーソン、キッズまで1万人以上のコンディショニングを行う。東京オリンピックメディカルトレーナーに選出され、世界のトップアスリートのコンディショニングにも携わる。ウェブメディアで理学療法士×シューフィッター×陸上競技選手の3つの視点からランニングシューズについての記事執筆、ウェブメディアの運営も行う。2021年から医療・美容系ビデオグラファーとしての活動も開始。健康経営のためのピラティス動画などの制作も行う。

制作

文・写真:石田佑也

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