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2022.11.03

健康効果を最大限生かす歩数と歩き方とは?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

健康のためになるべく歩くように心がけているという方もいると思います。どうせ歩くなら効率よく歩きたいですよね。健康効果を上乗せできる歩き方はあるのでしょうか。

今回ご紹介するのは、JAMA Internal Medicine誌に、2022年9月12日ウェブ掲載された、毎日の歩数と生命予後との関連を検証した論文です。(※1)

▼石原先生のブログはこちら

健康への有効性が高い歩数は?

健康のためにはよく歩くのが良い、というのは健康の専門家かそうでないかに関わらず、多くの人が言っていることです。最近ではスマホやアップルウォッチなどの、所謂ウェアラブル端末が普及して、簡単に毎日の歩数が計れるようになり、よりその健康効果が一般に広まりを見せています。

そこで問題となるのは、目標とするべき歩数です。

馴染みのあるのが「1日1万歩、歩きましょう」という基準で、皆さんも何度もお聞きになったことがあると思います。海外、たとえばアメリカにおいても同様の基準がポピュラーで、意外にもその元になっているのは、日本の万歩計の会社の宣伝にあったようです。

ただ、実際にはその根拠は、あまり精度の高い研究に裏付けられたものではありません。

最近の研究結果は2019年に海外で発表されたものでも(※2)、日本の中之条研究の報告においても(※3)、もう少し少ない1日7000から8000歩程度が、最も健康への有効性が高い、という結果になっています。

更に最近指摘されることが多いのが歩行の速度で、日本の研究では20分程度の「早歩き」を入れると、より効果が高いというデータが得られていました。

より新しい2021年9月に発表されたアメリカの疫学データでは、中年期に1日7000歩から10000歩の歩行を習慣化することで、その後の超過死亡のリスクが低下する、という内容になっていました。(※4)

イギリスにて生命予後と歩数との関連を検証

今回のデータはイギリスの、最近言及されることの多いUKバイオバンクのデータを元に解析されたもので、登録時点で40から79歳の一般住民78500名を、中間値で7年経過観察し、生命予後と歩数との関連を検証しています。

その結果、毎日の歩数がおおよそ10000歩までの範囲において、歩数が多いほど総死亡のリスクも心血管疾患による死亡のリスクも、癌による死亡のリスクも、それぞれ歩数が多いほど低下していました。

歩数がその範囲で100歩増える毎に、総死亡のリスクは8%、心血管疾患による死亡のリスクは10%、癌による死亡のリスクは11%の低下が認められました。歩行速度が速いことは、そのリスクをより低下させる可能性が示唆されました。

早歩きをすればなお良し

今回の結果も、以前の同様の研究とほぼ一致しているもので、1日1万歩を目標として歩くことは、最もその健康効果を最大化する可能性が高く、それを超える歩数は明確な上乗せ効果は期待出来ません。

一方で、歩行速度を早くすることは、一定の上乗せ効果を期待出来るようです。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36