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2023.10.30

糖質の種類は体重変化に影響する?増加率が高かったあの食べ物とは?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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糖質を多く含むご飯やパン、芋類などを摂り過ぎると体重の増加につながりますが、その種類でも体重の変化に影響があるのでしょうか?

今回ご紹介するのは、British Medical Journal誌に、2023年9月27日付で掲載された、摂取する糖質の種類と量が、体重の増減に与える影響についての論文です。

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糖質の種類は様々

ご飯やパンなどの主食を沢山食べると太り易い、というのは一般にも良く知られている知見ですし、科学的にもほぼ実証されている事実です。

ただ、研究データの多くは、1つの食事療法を、数か月からせいぜい1年くらい観察したものですから、長期の経過は分かりませんし、個別の糖質の違いが経過に与える影響も不明です。

糖質は身体の基本的なエネルギー源ですから、必要な栄養素であることは間違いがありません。ただ、昔と比べて糖質をエネルギーとして活用するような活動を、人間はあまりしなくなってきているので、糖質の必要量も少なくなってきていることもまた事実です。

そこでどのように糖質を減らすのかが問題となるのですが、糖質と一口に言ってもその種類は様々です。

たとえばでんぷんは植物由来の糖質で、芋類などに多く含まれていますが、芋類は食物繊維も豊富なので、体重増加は起こしにくいという意見もあります。

実際にはどうなのでしょうか?

4年毎に体重測定をし、24年間経過観察をして検証

今回の研究はアメリカにおいて、医療従事者を対象として大規模に施行された、有名な疫学研究のデータを活用して、4年毎に測定している体重が、摂取している糖質の種類や量で、どのような影響を受けるのかを、24年という長期の経過観察において検証しているものです。

対象は登録の時点で65歳以下で糖尿病などの持病のない、136432名の医療従事者です。

その結果、対象者の体重増加は4年毎に平均で1.5キロ認められ、24年では平均8.8キロ増加していました。

ここで血糖を上昇させるような糖質の摂取増加は、体重の増加と相関していました。たとえば、でんぷんの摂取が1日当たり100グラム増加すると、4年で1.5キロの体重増加に結び付き、砂糖などの甘味料が1日当たり100グラム増加すると、4年で0.9キロの体重増加と結びついていました。一方で食物繊維の摂取量が1日当たり10グラム増加すると、4年で0.8キロの体重減少と結びついていました。

個別の食品との関連でみると、白いパンなどの精製穀物が1日当たり100グラム増加すると、4年で0.8キロの体重増加に結び付き、芋類などのでんぷん質の野菜が1日当たり100グラム増加すると、4年で2.6キロの体重増加に結び付いていました。

一方で全粒穀物や果物、非でんぷん質の野菜は、その摂取増加が体重の減少に結び付いていて、精製穀物やでんぷん質の野菜、砂糖を含む飲み物などを、全粒穀物や果物、非でんぷん質の野菜に置き換えることによって、体重減少に有効であることも確認されました。

糖質は体重増加の原因のひとつ

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このように今回の長期の大規模な疫学データの解析において、糖質の中でも白いパンやご飯などの精製穀物と、ジュースなどの甘味料を含む飲み物やお菓子、でんぷんを多く含むサツマイモなどの芋類の摂り過ぎが、体重増加に結び付き、それを緑黄色野菜や果物、玄米や胚芽パンなどに置き換えることにより、体重減少効果のあることが確認されました。

芋類の体重増加効果が高いのが少し意外ですが、それ以外はこれまでの常識に合致した知見です。

糖質は極端に制限するのではなく、その組成を健康に良いものに変えてゆくことが、ダイエットを含む食事の改善において重要なことであるようです。

記事情報

引用・参考文献

著者プロフィール

石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。

略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医

発表論文
・Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
・Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
・Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36

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