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2021.11.18

がんのリスクを察知 !? 血小板の増多とがん発症の関係とは【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生  

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癌は早期発見早期治療を行えば、治る確率が高まります。癌を発症する前に、その予兆を察知することはできるのでしょうか。

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにkencom監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、kencom読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、JAMA Network Open誌に2021年8月12日ウェブ掲載された、血小板増多とがんとの関連についての論文です。

▼石原先生のブログはこちら

癌が隠れていると血小板が増える?

複数の癌において血小板の増多が見られるというのは、19世紀半ばに既に報告があるほど古い知見です。

癌は多くの場合炎症と関連があり、炎症は血小板の増多と関連しますから、これはそれほど意外ということではありません。癌の増殖はまた凝固を亢進させますから、これも血小板増多の原因となります。

血小板増多とその後の癌リスクとの関連を検証

今回の研究はカナダ、オンタリオ州の住民3386716名のデータを解析することにより、血小板増多とその後の癌リスクとの関連を比較検証しているものです。

そのうち51624名が血小板数45万以上の血小板増多を示していました。

これを血小板数が基準値内の対象者とマッチングさせて、その後の癌の発症と比較したところ、血小板増多が確認されてから2年以内の固形癌の発症リスクは、血小板増多がない場合と比較して、2.67倍(95%CI:2.56から2.79)有意に増加していました。

癌の種類毎の解析では、卵巣癌リスクが7.11倍(95%CI:5.59から9.03)、胃癌が5.53倍(95%CI:4.12から7.41)、大腸癌が5.41倍(95%CI:4.80から6.10)、肺癌が4.41倍(95%CI:4.02から4.85)、腎臓癌が3.64倍(95%CI:2.94から4.51)、食道癌が3.64倍(95%CI:2.46から5.40)、それぞれ有意に増加していました。

原因不明の血小板増多には要注意

このように、原因不明の血小板増多は、その後2年以内の癌リスクと強い関連があり、特に卵巣癌や消化管の癌などの癌の可能性について、検査を検討する必要がありそうです。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36