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2019.07.10

アルコールとタバコはどれくらい癌リスクを高めるか?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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タバコが癌のリスクを高めることは有名です。しかしアルコールは、適量なら健康にいいというイメージがあるため、どれくらい癌リスクが高まるかを知らない方も多いのではないでしょうか。

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにkencom監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、KenCoM読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、2019年のBMC Public Health誌に掲載された、アルコールとタバコの癌リスクを、男女で比較した、一般向けとしては受けそうな内容の論文です。

▼石原先生のブログはこちら

タバコとアルコールはどれくらい癌のリスクを高めるか

タバコが食道癌や肺癌など、多くの癌の発症リスクであることは、一般の方にも広く知られている事実です。上記文献の記載によれば、癌による死亡の22%は、タバコが原因と推定されるそうです。

一方でアルコールについては、適正な範囲の飲酒習慣は、健康を大きく害することはない、という考え方が一般的です。
その適正量にも色々な意見がありますが、概ね1日に20グラム以下のアルコールであれば、大きな問題は生じないと言って良いと思います。

ただし、癌についてはそのニュアンスは少し異なります。
アルコールに明確な関連のある癌のうち、喉頭癌、食道癌、乳癌などについては、より少ないアルコール量でも、そのリスクの増加に繋がるというデータが存在しています。

週1本ワインを飲むと、生涯の癌リスクが高まる

男性では1.0%、女性では1.4%癌リスクが増加

今回の研究はイギリスの疫学データを元にして、アルコールとタバコの癌リスクに与える影響を、一般への啓蒙目的に算出しているものです。

その結果、1週間にボトル1本のワインを飲むと、その生涯における癌発症リスクは、絶対リスクで男性では1.0%、女性では1.4%増加すると算出されました。

この男女差は、主に乳癌のリスクが絶対リスクで0.8%増加することから、生じていました。

そして、1週間にボトル1本のワインを飲むことの癌発症リスクは、男性では1週間に5本の喫煙に相当し、女性では1週間に10本の喫煙に相当すると算出されました。

女性の飲酒習慣には注意が必要

これはかなり単純化されたものなので、リスクを分かり易く示すための目安に過ぎませんが、女性の飲酒のリスクに一般の警鐘を鳴らすという意味で、一定の意義があるものではないかと思います。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36