2023.03.19
サザエさん症候群を克服。日曜日の胸騒ぎと上手に付き合う方法【働く人のこころ処方箋】
令和2年労働安全衛生調査(実態調査)によると、過去1年間にメンタルヘルス不調を理由に連続して1ヵ月以上休業した労働者又は退職した労働者がいた事業所割合は、平均で9.2%でした。また生涯でうつ病を経験する人は約6%という調査結果もあり、現代ではメンタルヘルス不調は誰にでも起こりうる病です。
本連載『働く人のこころ処方箋』では、産業医・精神科医・健診医として活躍している井上智介先生に、心の健康を保つ秘訣を教えていただきます。
©️ikue takizawa
週末の開放感。そして日曜日の胸騒ぎ
「今日は仕事が休み」って、とても素敵な響きですね。いつもの緊張感やプレッシャーから解放されてホッとしませんか。昨晩は目覚ましをかけずに眠りについて、朝は好きな時間に起きて、午前中はぼーっとテレビを見ながらご飯を食べて、午後からは運動がてら話題になっているお店に行ってみようかなと思ったものの、やっぱり面倒くさいから結局ずっと家で昼寝をしてしまったり。だれが何と言おうが、至福の時間ですよね。
ただ、日曜日をどのように過ごしたとしても、夕暮れになってくると、そろそろ今日という最高の日の終了を実感して、無性に胸騒ぎがしてきませんか。
「はぁ。明日からまた仕事かぁ…」
と、さっきまでのノビノビしていた気持ちは一体どこに行ってしまったのやら。このように、日曜の夕方くらいから明日の仕事や生活を考え憂鬱になってくることを、“サザエさん症候群“なんて言いますね。もっとも多かれ少なかれ、誰しもこのような気持ちにはなるので、あまりそのネガティブな感情自体を否定する必要はありません。
月曜日の小さな”決断”を減らして心を軽く
そもそも、このような気持ちになってしまうのは、あなたのなかで休日と出勤日がまるで天国と地獄のように大きな落差があるからです。少しでもその落差をなくしていくことこそが、月曜日の仕事に向かう足取りが軽くなるコツなのです。
まず、億劫な月曜日に頭を使う機会をできる限り少なくしましょう。とくに月曜日の朝は要注意です。パジャマから着替えて職場に向かうと思いますが「何を着ようかな…」と考えるだけでも面倒で憂鬱になってくるものです。だからこそ、日曜日の夜には、明日の朝に着ていく服や持っていくものを、きっちりと決めて準備しておきましょう。
同じように、朝ごはんに何を食べるかも決めておいて下さい。いつもは行かない高級なパン屋さんで買ったものやフルーツを準備するのもいいですね。月曜日の朝、起きることに楽しみが増えるからです。
また仕事面でも、月曜日に何から取り掛かるか考えずに済むように、始業からのTODOリストを日曜日の夜のうちに作っておきましょう。
夜空を見上げて気分をあげよう
突然ですが、そんな日曜日の夜、あなたは気分転換のために夜景と夜空のどちらを見ますか。ぜひ夜空を見てください。人間は憂鬱なときでも上を向くことで、気分が晴れることが分かっています。
夜空を見ながら、明日の朝からの行動をイメージするだけでも、明日からの一歩を踏み出すハードルが低くなります。逆に高いところに上ってキレイな夜景をみても、その煌びやかさとは対極の明日からの生活がより浮き彫りになってしまい、悲しくなることもあるので注意してくださいね。
少しの工夫で気持ちの良い月曜日を
月曜日がやってきたら、午前中くらいは何も考えることなく、ほぼ自動的に体が動くくらいに準備をしておくことが、日曜から月曜への穏やかな橋渡しになります。
さらに、ちょっとでも月曜日が楽しくなる工夫も取り入れたいですね。たとえば、月曜日だけはいつもと違ったカバンを使ったり、普段とは違うメイクをしてみたり、自ら刺激を作り出すのもおすすめです。ぜひ取り組んでみてください。
記事情報
引用・参考文献
著者プロフィール
井上智介(いのうえ・ともすけ)
産業医・精神科医・健診医。
兵庫県出身。島根大学を卒業後、大阪を中心に精神科医・産業医として活動中。産業医としては毎月30社以上を訪問し、一般的な労働の安全衛生の指導に加えて、社内の人間関係のトラブルやハラスメントなどで苦しむ従業員にカウンセリング要素を取り入れた対話重視の精神的なケアを行う。精神科医としてはうつ病、発達障害、適応障害などの疾患の治療だけではなく、自殺に至る心理、災害や家庭、犯罪などのトラウマケアにも注力。SNSや講演会などでも「ラフな人生をめざすこと」を積極的に発信中。主な著書に『職場の「しんどい」がスーッと消え去る大全』(大和出版)等がある。
制作
文:井上智介
写真:滝沢育絵