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2023.05.21

人生の舵取りがうまくいく。自己肯定感を高める3つのコト【働く人のこころ処方箋】

kencom公式:精神科医・井上智介

令和2年労働安全衛生調査(実態調査)によると、過去1年間にメンタルヘルス不調を理由に連続して1ヵ月以上休業した労働者又は退職した労働者がいた事業所割合は、平均で9.2%でした。うつ病などのメンタル不調は、現代では誰にでも起こりうる身近な病です。

本連載『働く人のこころ処方箋』では、産業医・精神科医・健診医として活躍している井上智介先生に、心の健康を保つ秘訣を教えていただきます。

©️ikue takizawa

©️ikue takizawa

自己肯定感が高ければ人生の舵取りがうまくいく

近年、“自己肯定感”という言葉をよく耳にするようになりました。おそらく、あなたも一度は耳にしたことがあると思いますし、「自己肯定感は高い方がよい!」と思っているのではないでしょうか。

勘違いしている方も多いのですが、常に自己肯定感が高いという人は存在しません。

自己肯定感というのは、時間や日によって上がったり下がったりするもの。だからこそ、自己肯定感が大幅に下がることがないような工夫ができれば十分なのです。

自己肯定感が高ければ、自分の存在や行動をポジティブに捉えることができます。どんな価値観や目標であっても、「人は人、自分は自分」という考え方をベースにして、人生を穏やかに自分で舵取りすることができるのです。

そもそも自己肯定感とは、「どんな自分でも、それが自分であり、それで良い」と思える力であり、あなたが抱える仕事などの能力が、高い低いとは全く関係がありません。自己肯定感をひどく落とさないための方法として、これから紹介する3つのことをぜひ実践してみてください。

自己肯定感を高める3つのコト

まず1つ目は「自分はやればできる!」と心から思える、“自己効力感”を高めることです。

そのためには、自分に対して小さな約束をすることから始めてください。たとえば、朝起きた時に
「今日はスーパーの店員さんの目を見て、ありがとうと言う」
「今日の運転では、必ず車を1台譲る」
「外の空気の新鮮さを感じとる」
など、小さなことでも構いません。

そして、その日の寝る前に、朝にした約束を守ることができたか確認してください。約束したことが出来ていることを認識できたら「自分はやればできる」という自信につながっていくのです。

2つ目は「自分で決めた!」という、“自己決定感”を高めていきましょう。

これは、親や友人など誰かに左右されるのではなく、自分で人生をコントロールしている感覚を高めることになります。自己決定をすることは、主体性が高まり、より幸せを感じやすくなります。

決断するためには、自分が幸せになるための目標や信念をはっきりさせるのが近道です。世間の風潮や常識に流されず、自分の価値観で、人生において何が大切かを考えることが、より自己決定をしやすくしてくれます。

3つ目は「自分には価値あるんだ」と思える“自尊感情”を高めていきましょう。

たしかに、周りの人から“いいね!”をもらえると嬉しいですし、価値があると思えます。しかし、それがなかったからといって、価値がない人間というわけでは決してありません。もはや、どんな自分でも自分自身に“いいね!”を押してあげることが大切なのです。

しかし、夜になると嫌なことや辛かったことが頭をグルグルしてしまうこともあるでしょう。そこで、寝る前には意図的に、1日の中で自分が良かったなと感じられたことを3つ見つけて、ノートに記録してください。

どれだけ些細なことでも構いません。たとえば
「立ち寄った喫茶店のコーヒーが美味しかった」
「帰宅後にペットと過ごす時間があった」
「夕日が美しかった」
などです。

自分から自分に“いいね!”を押しに行く習慣を身につけて、自分が価値ある存在である認識を高めていきましょう。

あなたの一番の味方は、あなた自身です

これらの方法を実践することで、自己肯定感を高めることができます。どんなことがあっても、いつでも最後まで自分の味方でいて、自分に優しく接してあげてください。完璧な人なんていないことを受け入れて「まぁ、そんな自分もいいかな」と思えたらより良い人生を歩んでいけるでしょう。

記事情報

引用・参考文献

著者プロフィール

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井上智介(いのうえ・ともすけ)
産業医・精神科医・健診医。
兵庫県出身。島根大学を卒業後、大阪を中心に精神科医・産業医として活動中。産業医としては毎月30社以上を訪問し、一般的な労働の安全衛生の指導に加えて、社内の人間関係のトラブルやハラスメントなどで苦しむ従業員にカウンセリング要素を取り入れた対話重視の精神的なケアを行う。精神科医としてはうつ病、発達障害、適応障害などの疾患の治療だけではなく、自殺に至る心理、災害や家庭、犯罪などのトラウマケアにも注力。SNSや講演会などでも「ラフな人生をめざすこと」を積極的に発信中。主な著書に『職場の「しんどい」がスーッと消え去る大全』(大和出版)等がある。

制作

文:井上智介
写真:滝沢育絵

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