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2020.04.06

医師が解説!「うつ病」と「気分の落ち込み」の違い

kencom公式ライター:森下千佳

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「うつ病は心の風邪」こんな言葉を聞くほど、今や私たちのごく身近な存在になっている病気です。風邪と聞くとなんだか軽い響きだけれど、誤った対処をしたら重症化する可能性がある様に、うつ病も対処を間違えれば命を落としかねない病気です。

今や10人に1人がかかると言われるほど身近な病気となった「うつ病」の正しい理解を順天堂大学大学院 医学研究科 精神・行動科学 大沼徹先任准教授に伺いました。

大沼徹(おおぬま・とおる)先生

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順天堂大学大学院 医学研究科 精神・行動科学 先任准教授
平成2年順天堂大学医学部卒業。同年、順天堂大学医学部附属・精神神経科に入局。臨床業務に勤しみながら、統合失調症を中心に神経生物学的研究を継続して行っている。平成8年に英国ケンブリッジ・ベイブラハム研究所・神経生物学部門に留学し、帰国後も一般臨床、医学生の教育、研究を行っている。専門領域は精神医学全般、産業精神医学、臨床精神薬理学、遺伝学、神経生物学と幅広い。平成23年より現職。

うつ病とはどんな病気?

約10人に1人がかかる身近な病気

参考:平成29年(2017)患者調査の概況,厚生労働省

参考:平成29年(2017)患者調査の概況,厚生労働省

日本人のうつ病患者数は年々増加傾向で、今や100万人を超えています。一生涯の有病率は10%弱と言われ、およそ10人に1人がかかる大変身近な病気です。厚生労働省の患者調査によると、患者数は1996年の約43万3000人から2017年には約127万6000人と、21年間で約3倍にも増えています。

年齢は55歳〜74歳ぐらいまでが多く、なかでも産後うつやマタニティーブルーなど、ライフイベントの変化が大きい女性に多い傾向があります。

「うつ病」と「気分の落ち込み」は何が違うのか?

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気分が落ち込んだり、全然やる気が起きないなどの心の不調は誰もが経験するものですよね?この気分の落ち込みと、うつ病には見分け方のポイントがあります。

違いを見分けるポイントは、「どのくらいの期間、気分の落ち込みが続いているか?」2〜3日もすれば回復したり、好きなことをして気晴らしができる様ならば、一時的な気分の落ち込みです。一方、沈んだ気分が続き、興味・喜びが喪失した状態がほぼ1日中、2週間以上に渡って続き、仕事や日常生活に支障が出てしまうならば「うつ病」と診断されます。

うつ病はなぜ起こる?

うつ病は脳の働きに何らかの問題が起きた状態

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うつ病がどうして起こるのか、まだ十分に解明されてはいませんが、現在わかっている原因として「心理的なストレス」と「脳内の変化」が挙げられます。うつ病は心の病と思われがちですが、実は脳の病気でもあります。人間関係の悩み、過労、身近な人との死別、生活環境の変化や日常生活の問題など、積み重なったストレスが引き金となって脳内の働きのバランスが崩れることで病気が発症すると考えられています。

脳の中で何が起きている??うつ病のメカニズム

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脳には無数の神経細胞があり、さまざまな情報を伝達していますが、その働きで「感情」が生まれます。ところが、強いストレスを抱えていたり、心身ともに疲れている状態が続くと、神経伝達物質の量や働きが十分でなくなってきます。

とくに意欲や気分を調整する「セロトニン」や「ノルアドレナリン」「ドーパミン」といった神経伝達物質の量が減ったり、十分に機能しなくなると、感情をうまくコントロールできなくなり、うつ状態を引き起こすと考えられています。

うつ病の症状は?

頭痛、月経異常・・・うつ病は身体の不調にも現れる

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うつ病では、心の不調だけでなく、身体にも不調が現れることがあります。睡眠障害、食欲の減退、疲労感、体の痛みやしびれ、頭痛、吐き気、女性では月経異常など、人によってさまざまです。

体調不良から内科を受診したものの原因がわからず、精神科や心療内科を紹介され、うつ病と診断される場合が多いようです。もちろん、これらの症状の原因がすべてうつ病というわけではありませんが、思いもよらない体の不調がうつ病のサインになることを知っておきましょう。

睡眠障害

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睡眠障害はさまざまな病気によって起こることがありますが、うつ病の患者さんの多くが睡眠障害を訴えます。不眠症状のある人はない人に比べて、うつ病になるリスクが約4倍高いという研究結果もあり、睡眠は心身に重要な役割をもっています。「なかなか寝付けない(入眠障害)」、「夜中に何度も目が覚めてしまう(中途覚醒)」などさまざまなタイプがありますが、うつ病には「早朝に起きてしまう(早朝覚醒)」が多く見られます。

うつ病と間違われやすい病気もある

最も間違われやすいのが、「認知症」の初期症状です。うつ病なのか認知症なのかを見分けるには、詳しい問診を行い、場合によっては画像検査も行います。うつ病は認知症に移行しやすいこともわかっているため、高齢者のうつ病の治療は大切です。また、副腎皮質ステロイドや、インターフェロン製剤(ウイルス性肝炎の治療薬)などの薬剤が、うつ病に似た症状を起こすことがあります。高齢者は薬の服用が増えがちですから、注意が必要です。

うつ病はどんな人がなりやすい?

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うつ病は誰でも起こりうる病気ですが、なりやすい人の性格には3つのパターンがあります。

①循環型

社交的で人付き合いが良く、気立ても良くて親切。気さくで、ユーモアにも飛んでいて、情が深いのが特徴。その反面、情動的で熱しやすく気分に浮き沈みがあるのが特徴です。

②執着型

物事にこだわりを持ち続け、何事にも徹底的にやらなければ気が済まないところがあります。責任感が強く、凝り性、仕事も熱心で、手抜きが出来ません。

③メランコリー親和型

真面目で、大変几帳面な性格です。秩序やルールに忠実であり、献身的で頼まれると嫌と言えない責任感の強いタイプ、といった特徴があります。このような人は、常に一定の秩序が保たれていないと安定できないため、転居、異動、結婚など、生活環境の変化がトリガーとなることがあります。

どの性格も、日本人に多い性格だと思いませんか?真面目なだけに、自分を追い込み、ストレスが溜まってうつ病になってしまう方が多いのです。

周りがサインに気がついて、早めの対処を!

うつ病は本人が自覚していない事が多い病気のため、周りが変化のサインに気づいてあげることが重要です。気力で解決できるものではなく、治療が必要であることを覚えておきましょう。
次回の記事では、自分が、家族が「もしかしたらうつ病かも」と悩んだときのチェック方法と治療法をお伝えします。

▼大石先生の続きの記事はこちら

参考文献

筆者プロフィール

■森下千佳(もりした・ちか)
フリーエディター。お茶の水女子大学理学部卒。テレビ局に入社し、報道部記者として事件・事故を取材。女性ならではの目線で、取材先の言葉や見過ごされがちな出来事を引き出す事を得意とする。退社後、ニューヨークに移住。当時、日本ではなかなか手に入らなかった、オーガニック商品を日本に届けるベンチャー企業の立ち上げに関わる。帰国し、子宮頸がん検診の啓発活動を手がける一般社団法人の理事を経て、現職。一児の母。

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