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2022.12.26

短期間で陥ることもある、アルコール依存症のおそろしさ【病のトリセツ#12】

kencom編集部

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普段何気なく飲んでいるお酒ですが、依存性の高い薬物の一種と表現されることも。毎日飲み続ければ、あっという間に依存症に陥る危険があります。自分には関係ないと思っている方も、飲酒が続けば、アルコール依存症やその予備軍になるかもしれないのです。

アルコール依存症とは何か、どうすれば予防できるのか、自分の身を守るためにも正しい知識を身につけておきましょう。

アルコール依存症とは?

アルコール依存症とは、長期にわたり大量飲酒した結果、飲酒のコントロールができなくなり、精神依存や身体依存をきたす精神疾患のこと。よく混同されますが、酔って問題を起こすこと(酒乱)とは異なります。

アルコール依存症には、お酒を飲むと問題が起きるとわかっていながら自分では飲酒をコントロールできない精神疾患と、飲酒によって肝臓などの臓器に悪影響を及ぼす生活習慣という2つの側面があります。

2018年に厚生労働省科学研究班が行った調査によると、アルコール依存症数は推計109万人で、予備軍もいれると400万人強にもなるのだそう。しかも、患者数は年々増加傾向にありながら、治療を受けている人は5万人に満たないのが現状です。

アルコール依存症の症状

アルコール依存症の症状は、主に①耐性、②精神依存、③身体依存の、3つの段階を経て進行していきます。

①耐性

耐性とは、同じ量の飲酒をしていても、だんだん酔わなくなってくることです。少量の飲酒ではあまり効果が感じられなくなるので、同じ効果を求めて徐々に酒量が増加していきます。

②精神依存

耐性がつくと、次が精神依存です。お酒がないと物足りないと感じ、飲みたいという強い欲求がでてきます。さらに精神依存が強くなってくると、お酒が切れると家の中を探し回ったり、わざわざ出かけて買いに行くという行動が見られるようになります。

仕事や家族よりも飲酒を優先するようになるため、家族との関係がギクシャクすることも。そのストレスから、さらにお酒に逃げることも増えます。

③身体依存

長期にわたり多くの量の飲酒を繰り返していると、最後は身体依存が現れます。身体依存とは、文字通りお酒が切れると不眠、発汗、手のふるえ、血圧の上昇、不安、いらいら感などの身体の症状(離脱症状)が出てくること。

重症の場合は幻覚が見えたり、けいれん発作を起こしたりすることもあります。お酒を止めるとこのような症状が出てしまうので、症状を止めるためにまた飲酒するという悪循環となり、ますますお酒が止めにくくなります。

また、何も食べずに飲み続ける状態が何日も続く、連続飲酒の状態になることもあります。

その他、臓器にも健康被害が

長期にわたり大量飲酒を続けると、肝臓や膵臓、脳、神経などの様々な臓器にも健康被害が及ぼされます。それに伴い、肝臓病や膵臓病、循環器疾患、メタボ、うつ病、認知症、がん、糖尿病、脂質異常症など、多くのリスクが高まります。

こんな症状なら予備軍かも?

アルコール依存症まではいかなくても、以下のような症状があるなら予備軍の可能性があります。

・飲酒が原因で、遅刻や欠勤、仕事上のミスをするようになる

・常にイライラして怒りっぽい

・お酒を飲まないと眠れない

・睡眠中頻繁に目が覚める

・上記のような症状があるのに、「自分だけは大丈夫」と過信している

▼アルコール依存症とその予備軍の実態についてはこちら!

依存度のチェック法

アルコール依存症かどうかは、飲酒量だけで決まるわけではありません。健康に害を及ぼすような飲み方をしている、他者に迷惑をかけているなどといった状況の有無などを総合的に見て判断します。

依存度をチェックする方法はいろいろありますが、代表的なものはアメリカやオーストラリアなど6ヵ国の調査研究に基づいて作られた、AUDITと呼ばれるアルコール症スクリーニングテストです。

▼AUDITで依存度チェックを試したい方はこちらから!

アルコール依存症の治療法

基本は断酒

アルコール依存症の基本の治療法は、断酒です。

治療中にお酒を少しでも飲むと、依存症が再発して酒量のコントロールがきかなくなることは多々あります。そのため、完全に断酒することで飲酒欲求自体が起こらないようにしていきます。場合によってはレグテクトという断酒補助剤も使います。

多くの場合、治療は教育入院という形をとり、まずは身の回りからアルコールを完全に排除します。最初の2~3週間は離脱症状が表れるので、その対処も行います。症状が軽くて周囲のサポートも受けられる場合は、外来治療で寛解を目指すケースもあります。

自助グループで支え合う

断酒生活は、本人の意思だけで続けるのはとても難しいもの。同じような悩みを抱えている方々と互いに支え合って乗り越えることを目的として、自助グループへ参加するという治療もあります。

自助グループでは、医師と数名の患者が集まって断酒や回復について話し合ったり、自分の依存症体験談を語り合ったりします。退院後も続けるよう促されることもあります。

アルコール依存症を予防するには

お酒と上手に付き合うためには、日頃から飲み過ぎない工夫をしておくのが得策。酒量を減らしてアルコール依存症を予防するアイデアをいくつかご紹介します。

お酒は適量を超えて飲まない

厚生労働省が示す1日平均の飲酒の適量は、純アルコール20g程度とされており、女性の場合は男性に比べてアルコール分解速度が遅いから10g程度が推奨されています。酒類別のアルコール量は以下を参照してください。

ビールで例えると、男性でロング缶ビール2本、女性でロング缶ビール1本でNG。また、アルコール度数9%のストロング系チューハイのロング缶の場合、500mlに含まれる純アルコール量は36gなので、1本飲むだけで適正量を大幅にオーバーしてしまいます。

毎日飲み続ければアルコールへの耐性もつきやすく、短期間のうちに依存度が強まる可能性は非常に高いと考えられるため、意識して減酒を行いましょう。飲むときは、あえて小さなグラスを用いたり、アルコール度数が低いお酒を選ぶようにすれば、アルコール摂取量を減らせます。

目標を決めて周囲に宣言する

お酒を減らすことを周囲に宣言しましょう。その際、クリアできそうな目標設定にすること、あなたが依存症予備軍だと知っている人と飲むことも一案です。

休肝日を作る

1週間のうち、2日続けて飲酒しない日を設けてみましょう。カレンダーなどに飲酒した日、禁酒した日などの記録を書き込む工夫も有効です。

▼他の飲み過ぎ予防法を知りたい方はこちらから!

お酒はほどほどに楽しんで

コンビニやスーパーで気軽に買うことのできるお酒。仕事終わりの1杯に幸せを感じる方も多いでしょう。しかし飲酒は、量や頻度に注意が必要です。アルコール依存症になってしまうと、本人の健康だけでなく、家族や友人との関係も壊してしまいます。

軽い気持ちの飲酒が依存症に繋がらないように、お酒に対する意識や飲み過ぎには十分気をつけたいものですね。

本記事は過去のkencom記事をもとに再編成したものです

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引用・参考文献

制作

文:kencom編集部

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